すぐにできるプレゼンテーションを上手くする方法 その1

ボクはちょっとだけ、人よりプレゼンテーションがうまいと思っている。「ちょっとだけ」も「思っている」も実は謙遜で、実は結構自信がある。どちらかと言わなくても全力で、世界の中心で「プレゼンテーションが大好きだ」と叫んでしまえるくらい、自信がある。

4月からの転職に備えて、足りない能力を伸ばすことより、無自覚な得意な能力を言語化したいと思い、こんなエントリーを書いてみることにした。

「で?何が言いたいわけ?」と言われたことがある人へ

プレゼンテーションは大体の場合、説得行為ではないだろうか?ある商品を購入して欲しい、ある技術を導入して欲しい、新しい人事制度を検討して欲しい、自分の学習の成果を認めて欲しいなどなど。それは発表者にとって特別な緊張と特別な準備を特別な相手にぶつけて、そのリアクションを期待する行為なのではないかと思う。そう考えるとプレゼンテーションとは「相手を期待するリアクションに導く」ことと定義できるのではないだろうか。

この定義をまずは理解して欲しい。するとプレゼンテーションをそつなくこなすことは決して目的にはならない。自分自身で「今日のプレゼンはうまくいったなぁ」と思っても、相手のリアクションが期待したものに達していなければそれは失敗なのだ。

プレゼンテーションが「下手くそな人」はまず間違いなく、この部分を理解していない人が多い。

プレゼンテーションを聞いても、いったい何を期待しているのか、どういう反応をしてほしいのかがわからないのだ。

テレビショッピングを想像して欲しい。
丁寧な商品解説、魅力的な効能、購入方法もいたって簡単、金利手数料も負担してくれる。あんまり集中して観てしまうとうっかり購入してしまうので、ボクはあまり見ないようにしているくらい説得がうまい。では仮にこのテレビショッピングで商品の説明があったあと、購入方法の説明がなかったらどうだろうか?ボクらはその商品が欲しいと思っても何をすることもできない。テレビショッピングをプレゼンテーションとして見るとき、その目的はもちろん「この商品買って!」なのである。その目的を達成するために「商品説明」や「利用者の体験談」が語られ、「購入方法」へと展開していくのだ。この目的を忘れて「商品説明」だけで終わってしまったら「ふーん、そうなんだ」という中途半端な状態で視聴者は置いていかれてしまうだろう。

プレゼンテーションの目的とは、相手に何をしてほしいのかを伝え、実際にその行為に導くことだ。
そんなの当然だと思うかもしれないけれども、ぜひ自分のプレゼンテーションを見直して欲しい。単純に自分の製品の紹介だけで終わっていないか、自分の技術をひけらかすことで終わっていないか、自分にしかわからない言葉で語っていないか?


「ちゃんと私を見て」なんて言われたことのある人へ

プレゼンテーションが下手な人に限って用意周到に準備をする。マイクロソフトのパワーポイントにコメントを入力する機能があるが、そのコメント欄に、自分が話すことを、まるで脚本のようにびっしりと書き込む人がそれだ。当然、プレゼンテーションでは、自分の手元を凝視して、その原稿を正確に読み上げていく。参加者を置いてけぼりにして・・・。

プレゼンテーションとは説得行為だと説明したけれども、それで説得ができるのだろうか?

たとえばあなたの恋人が重度のヘビースモーカーだとしよう。そしてあなたはそれを辞めさせたいと思っている。
「花子さん、たばこは体に良くないよ。なぜなら喫煙者の発ガンリスクは非常に高く、近年の統計によると喉頭ガン、肺ガンだけでなくくも膜下出血動脈瘤の発生因子として指摘されているからだ。また副流煙による受動喫煙という問題も軽視できない。・・・」とうつむいたまま用意してある原稿を読み上げても、きっと花子さんはタバコをやめてくれないだろう。引っ込み思案のあなたが夜なべしてタバコの危険性を調べてくれて、それを伝えるために原稿を書いて用意してくれて、なんて健気なんだ。その行為に感動して、タバコをやめよう・・・なんてまったく思わないはずだ。きっと「うざい」「きもい」と言われるのがおちだろう。

じっと花子さんの目をみて「もう、吸うなよ。俺もいっしょにがんばるからさ。」と伝えるほうが確実に伝わるはずだ(タバコをやめるかどうかはまた別の話なので、それくらいでやめられるかよという突っ込みはおいておいて)。

たとえがあまり良くないかも。ではこんなのはどうだろう。

たとえばあなたが夢見る中学生ではなく、すでに恋愛の酸いも甘いも経験した30代前半だとしよう。毎日通うコンビニエンスストアの店員にあなたは恋をした。「お弁当温めますか?」という何気ない普通の言葉が砂漠にそそぐ雨粒のようにあまくやさしく聞こえてしまう。そんなあなたは恋する三十路。さて、あなたならどうしますか?

断言します。ラブレターはやめとけ・・・。ましてやラブレターを相手の眼前で読み上げるだろうか?

何が言いたいのかというと、相手を説得するという行為の中でも一番過酷かつ誰もが共通の悩みとして抱える恋愛、そのテクニックはプレゼンテーションでも多いに役立つということだ。

相手の目をしっかりと見つめ、自分の思いを自分だけの言葉で伝える。間違えたっていいのだ。

プレゼンテーションでも、ぜひこれを意識して欲しい。

ただ注意したいのが、よく大人数の前でプレゼンをするときには、反応の良い誰か一人をターゲットに設定して、その人を見て話をしようなんて言う人がいるようだけれども、これは間違い。ただっぴろい空間の中で、どこか一点だけを凝視してしゃべっている人がいたら、ちょっと怖い。大人数の時には、なるべく全員をくまなく見渡すようにしゃべるのがいいだろう。聞いている側も、「あ、今、俺のこと見た!!」と勝手にドキドキしてくれて、思わぬ反響がわくこともあるだろうし。いやほんとに。