競争と公平感―市場経済の本当のメリット 中公新書
2010-07-21 図書館 (819円) 2010-09-20/22 ★4
感想
経済学のトピックを扱った本。経済学の理論を説明した本ではない。
前著『経済的思考のセンス』の続編と思っても差し支え無いと思う。厳密には、インセンティブから行動経済学にシフトしたのかもしれないが、ホモエコノミクスではなく生の人間の心理的な領域を扱った意味では続編といえる。ミクロやマクロといった経済学を学んでいたときに前著を読んだりしたこともあり、今回も楽しく読めた。
メモ
- 13-:市場主義と大企業主義の混同。私も混同していた
- 44-:「薬指が長いと証券トレーダーに向いている?」は、ニュース記事を読んでいて、あの内容だなと期待していなかった。しかし、著者独自の調査に及んでいて感動した。
- 52:長時間労働・体力 → 対人能力、文章表現能力、技術力、データ解析能力、創造的能力…を要求する仕事に変わってきた
- 81-:双子は胎児のころ栄養不足に陥りやすいが、生活習慣病にかかるリスクが高まるのだろうか?
- 90-:やはり幼少のうちに手当てしないとダメになる臨界期があるようだ
- 96-:時間割引率。非認知能力の1つ。時間割引率が低いと忍耐強い。また、高学歴、高所得であることが多い。
- 105-:時間割引率と双曲割引
- 114:喫煙者は非喫煙者より、年収が200万円減ったのと同じくらい不幸を感じる。喫煙は中毒財。夏休みの宿題を最後の方にやる=喫煙者になりやすい=ギャンブラーになりやすい=サラ金から借りやすい=太りやすい。対策は課税であり幸福度を上げる
- 123:「規制緩和が進んだ地域や競争が激しい産業で働いている人ほど他人を信頼する傾向が高い」は、データがあるだけで理由はまだわからないようだ。
- 148あたり:「新しい公共」ってこのやり方なんじゃないか? となると、環境・介護・育児・教育・芸術分野にお金が落ちることになるのか
- 166:(若年)失業率に連動して、所得税や年金支給額を変動させるといった政策は面白そうだ
- 179-180:短期雇用において、労働による健康悪化の費用を企業に負担させる。私が懸念してたことも記述していた
- 202:外国人労働者受け入れによる内国人賃金の変動の結論は出てないようだ
- 209-:目立つ税金と目立たない税金。表題まま。
- 224-225:複利計算は小6のころに脱線授業で習った。小学当時に預けた10万円の定期預金を、そのままの金利で維持されたら、いまごろ1000万円になっていたといった複利計算を電卓やパソコンでしたことがある。
- 232:私が働かないでいるのは、ずっと経営者などの偉い立場の人が1人勝ちでつまらないからなんだろう。だとすると、ルール作りしている人たちが悪いってことになる。
目次
- プロローグ 人生と競争
I 競争嫌いの日本人
- 1 市場経済にも国の役割にも期待しない?
- 2 勤勉さよりも運やコネ?
- 3 男と女、競争好きはどちら?
- コラム1 薬指が長いと証券トレーダーに向いている?
- 4 男の非正規
- 5 政策の効果を知る方法
- 6 市場経済のメリットは何か?
II 公平だと感じるのはどんな時ですか?
- 1 「小さく産んで大きく育てる」は間違い?
- 2 脳の仕組みと経済格差
- 3 20分食べるのを我慢できたらもう一個
- 4 夏休みの宿題はもうすませた?
- コラム2 わかっているけど、やめられない
- 5 天国や地獄を信じる人が多いと経済は成長する?
- 6 格差を気にする国民と気にしない国民
- 7 何をもって「貧困」とするか?
- 8 「モノよりお金」が不況の原因
- 9 有権者が高齢化すると困ること
III 働きやすさを考える
- 1 正社員と非正規社員
- 2 増えた祝日の功罪
- 3 長時間労働の何が問題か?
- コラム3 看護師の賃金と患者の死亡率
- 4 最低賃金引き上げは所得格差を縮小するか?
- 5 外国人労働者受け入れは日本人労働者の賃金を引き下げるか?
- 6 目立つ税金と目立たない税金
- エピローグ 経済学って役に立つの?
- 競争とルール あとがきにかえて