松下昇への接近

 旧 湾曲していく日常

自由な討論という喜び/苦しみ

 討論によってわたしたちは〈より真実に近づく〉ことができる。おそらくこれは、民主主義といわれる制度を採用する以上前提としているはずのドグマ(常識)である。討論というものにはさまざまな資源が必要だ。時間もだが資料を確認する努力や、なにより討論に対する信頼が前提とされる。
 民主主義とは何か?、討論とは何か?というのは政治学者にまかせておけばよい問題ではない。わたしたち一人一人の問題だ。しかし難しすぎる問題であるかのように思われる。
 わたしたちは自分とは意見の違う人たちとは付き合わないことができるし、日常生活はほぼそのように過ごしている。*1 しかしブログを書くのは読者を求めることである。そして、読者とは自分とは違ったものの見方感じ方をする存在である。コメント欄を開放していれば、他者がやってくる可能性がある。つまりわたしたちは他者を歓迎などしていないと思っているが、実は他者を求め他者なしには生きていけない存在なのだ。(自分に都合の良い他者を求め、そうではない他者を嫌がっているということもできる。しかし他者は他者である以上こちらの都合という基準にあわせて振る舞ってくれることは期待できない。)

 さて、今回の実名暴露のようなケースや罵詈雑言をともなったレイシズム発言など多様な危険発言がネットには発生し続ける。それにどう対応できるか? 実際にはhatenaの場合、基本的に積極的な対処はしてくれないようだ。
参考 http://d.hatena.ne.jp/kyoumoe/20071221#1198247993
私は、teraccoさんの「荻上チキ氏関連のキーワード作成を行っている人物がいるが、id:jkondo氏、id:naoya氏ほかはてなスタッフには即刻の対処を望む。」という要望に同意するものです。

具体的な話はしばらくおいて、原理的に考える。管理者がパターナリスティックにしばしば介入する場合も問題がある。管理者は削除を用いることによりブログ空間の空気を一定コントロールできるわけだが、管理者と傾向の違う思想を持った者は抑圧されることになる。ここにはジレンマがある。
わたしたちは個々別々の思想を持つので議論になれば軋轢も生まれる。しかしそれでも、言論の自由という目的を尊重するのだという点については一致し、時に激論を含む自由な議論を展開できるブログ空間を形成していこうとするという常識をわたしたちは確立していくべきだろう。
現段階でははてな当局による(恣意を含む)介入という形しか取れないとしても、ブログは、アクティブによる世論を形成しやすいメディアである。今回であれば、
http://d.hatena.ne.jp/demian/20071221/p1
http://d.hatena.ne.jp/umikaji/20071220/1198150410#c
の二つのまとめサイトの結論を、hatenaも無視し得まい。(違う意見がある方はコメントしていこう。)

このような問題に付いて、かなり持続的に熱心な討論が行われた事例が過去にあった。もう10年以上前のパソコン通信の時代だが。ニフティサーブのFSHISOというフォーラムがそれだ。いくつかのトラブルを経て彼らは自分たちの「ローカルルール」を膨大な討論の末作り上げていった。今後のインターネットの言論の自由を考える上でも重要だと思うので、資料として下記にUPしてみた。
http://d.hatena.ne.jp/noharra/11000201#p1
http://d.hatena.ne.jp/noharra/11000201#p2

自分たちがルールを造るという経験によって形成されていく共同性。それがまさに民主主義なのでしょうがわたしたちの大半は実際は民主主義を経験したことがないのではないでしょうか。わたしもFSHISOの経験に参加したわけではありません。(終わりのころ周辺部にいた) まあ実際には民主主義とは手間ばかりかかるやっかいな日常にすぎません。
しかしそれを基準にしてものごとを考えないと、なんだかおかしな方へ話がずれていくのではないでしょうか。

*1:場合が多い

ハンドル名による言論は理性の公共的使用たりうる。

 カントに「啓蒙とは何か」という本がある。薄い本だが最近人気がある。そのなかに理性の公共的使用と私的使用の区別という議論がある。

  1. 公共的使用:あるひとが学者として一般の読者全体の前で彼自身の理性を使用する
  2. 私的使用:公民としてある地位もしくは公職に任ぜられているひとはその立場においてのみ理性を使用することが許される、そのような使用法

先に紹介した『反論』という本は7人ほどによる共著だが、うちの一人倉橋さんが彼の論文でカントの上の議論を紹介している。*1カントの時代と違って現在は民主主義の時代なので、例えば警察や税務署も国家つまり「われわれ国民」という公共善のために行為しているということになっている。しかしそれは建前に過ぎず実際はそれぞれの特殊性において行為しているのだ。カントの問題意識は「制度からの人間の解放」である。
「さまざまな制度や形式は、人間の自然的資質を理性的に使用せしめる−−あるいはむしろ誤用せしめる機械的な道具である、そして、これらの道具こそ、実は、未成年状態をいつまでも存続させる足枷なのである。」とカントは言っている(らしい)。
首相や経団連会長の発言などは大きな社会的影響力を持つ。しかしそうしたものは、自律した主体による自由な理性使用の産物ではなく、立場や利害に基づいているので重視するべきではない、というのがカントの立場だ。

匿名=2ちゃんねる=悪、という連想からしばらく離れて考えなくてはならない。ここでカント的には、会社員A、公務員Bといった戸籍名で発言することは理性の私的使用につながりやすく、社会的属性をいったん控除したハンドルネームでの発言の方が(本人が議論への真摯な意思を持つならば)理性の公共的使用につながりやすい。という結論を容易に導き出すことができる。

倉橋さんはまた次のようにも書いている。

自己の発言をネットに書き込む際に、自己の社会的属性を公開することが責任ある態度であると思っているのは、たんにアイデンティファイという戸籍の思考に陥っているからであり、他者を圧殺する同一化の論理の内部で考えているからであって、そうした思い込みは、対象を現在の姿において判断できない思想の弱さを隠蔽するものであることを、現代哲学、とりわけアドルノを通じて学んだのである。 倉橋克禎『反論』p304

 実社会における責任も果たすところの近代的個人の倫理に対し、それが戦争やアウシュビッツという非常時においては容易に反倫理に転化することに対する反省がアドルノたち現代思想である。2ちゃんねるにおける匿名言説が、日本人なら嫌韓でなければならぬというレイシストの言説(他者を圧殺する同一化の論理そのもの)などに雪崩込んでいる現象を解消できていない現在に対し、アドルノの非同一性の哲学をどう活用していけばよいのかは難しい問題である。
 しかしながら以上のようにカントとアドルノをピンポイントで確認するだけでも

ウェブ上での匿名での批判、批評を許さず、その価値観を他の者にも強制しようとする立場。
このような実名原理主義の立場をとる者の中には、自らを匿名で批判した人の実名を暴露しようとする者もいる。
http://d.hatena.ne.jp/keywordlog?klid=934598 pas-a-pasさん

実名原理主義というもの、あるいは小谷野敦さん(id:jun-jun1965)の思想がカントたちの思想にちょっとでも対抗しうるものなのかはなはだ疑わしいと思わざるを得ない。

はてな(あるいはひろくウェブ)という言説空間は、私たちが作っていくという側面が確かにあり、それを信じることが大事なのだと思っているので、以上書いてみた。

*1:同書 p317

kurahitoさんとのやりとり

昨日、terracaoさんのブログのコメント欄のkurahitoさんの文章に反応して、そこに書き込みました。

noharra 2007/12/21 21:32 kurahitoさんへ質問。

>>だから彼が「迷惑です」、「削除してください」と訴える(本気なのでしょうか?)のは当然かつ勝手ではありますが、
「ひとには隠している戸籍名をさらされない権利がある。」とは思わないわけですね?
なぜそういう発想になるのでしょうか。
自分が社会の許容範囲内の思想で生きていくから他人もそうすべきだという思想なのでしょうか。「社会の許容範囲内」といってもいろいろあり低俗で偏狭だが権力を持っているひとたちもたくさんいる。そうしたひとたちとのかかわりが表現の自由より大事だ、という思想なのでしょうか?
http://d.hatena.ne.jp/terracao/20071221/1198216662#c1198240336

それに対する返信。

kurahito 2007/12/22 00:25

>noharraさん、terracaoさんに迷惑をかけてもしょうがないので(十分迷惑をかけたと思いますが)。
>なぜそういう発想になるのでしょうか。
そのような発想は披露していません。披露したと思われるのでしたら引用に基づいて示してください。
匿名/顕名といった議論で盛況を博しているのはチキ氏のような気がするのですが、正直言って彼(ら)に興味はありません。その程度は汲取ってください。因みに、死にたがりは小児病だと思います。
http://d.hatena.ne.jp/noharra/20071221#c1198250741

kurahitoさん 失礼しました。

匿名の擁護は、権利上できるとは思いますが、チキさんの表現のスタイルは擁護できないかなと。kurahito

http://d.hatena.ne.jp/seijotcp/20040813/p1
kurahitoさんは上記のチキさんの記事が、「実名や写真、生年月日から住所(自宅写真付き)、電話番号まで晒」しているサイトにリンクし、閲覧を誘っている(抑制していない)ことに批判的であると。

チキさんのエントリを(大体予測できるので読まなかったのですが)読みました、要は「迷惑です」ということですよね。ならチキさんも、今までも人に迷惑をかけるようなこと(晒し/仄めかし)をすべきではなかったのではないでしょうか。だから彼が「迷惑です」、「削除してください」と訴える(本気なのでしょうか?)のは当然かつ勝手ではありますが、彼自身表現スタイルを考えるべきでは?という問いです。kurahito

チキさんが今回の問題をどうとらえているかにわたしはほとんど興味を持っていません。「プライバシー侵害はいけない」というルールを、あなたとわたしの間で形成し得るのか?だけがわたしの問です。ただルールというものはあなたとわたしの間で形成すべきものでもないわけですね、じつは。わたしの問題意識があなたに了解されなくとも当然だったのでしょう。そこでわたしは10年以上前に見聞したあるコミュニティにおける「ルール」体験を資料つきで紹介し、わたしの問題意識を展開してみたのでした。

今回の問題は「彼が「迷惑です」、「削除してください」と訴えようが訴えまいが」客観的なプライバシー侵害として存在している事例であり、terracaoさんのように第三者が積極的に介入すべき事例だとわたしは思いました。

「ただアンカーを付けただけです。」
アンカーという言葉が良くわからないが、関係があるので補注として書いておきたいというだけなら充分了解できます。
ただterracao発言はテロ行為という最大限の言葉を使用して、ひとつの明確な糾弾をいわば公共的理性に訴えることで確認しようとする趣旨です。それに対しkurahitoさんがどういう態度を取っているのかが不明確です。そうである以上「表現スタイルが擁護できないような人ならば、実名が晒されていても黙っていろ」と半ば主張しているのかと理解されることはありえます。
そこでわたしは「ひとには隠している戸籍名をさらされない権利がある。」とは思わないわけですね?」と質問したわけです。
いまなお「ひとには隠している戸籍名をさらされない権利がある。」とは明言されていません。それがけしからんといっているのではなく、私とは違う発想法をする人であれば別の文体で思考するのは当然だと思います。
しかしその別の思考法というのがどのようなものであるのか、説明されているようには私には読み取れませんでした。

>なぜそういう発想になるのでしょうか。
    そのような発想は披露していません。kurahito

思わないわけですね?の答えがYESであった場合について、「なぜそういう発想になるのでしょうか。」と問うたわけです。畳み掛けるようで不愉快だったかも知れませんね。

長くなりましたが、とりあえず。

kurahitoさんとの対話(2)

年をまたがったので上に上げました。1/2まで

kurahitokurahito 2007/12/22 23:16 >noharraさん、丁寧なお返事ありがとうございました(トニオさん、ちょっと御免なさい)。
>それに対しkurahitoさんがどういう態度を取っているのかが不明確です。
ただ、「敵か味方か」という点は、伏せさせていただきたいです(そもそもプライバシー侵害を容認するとは書いていません。にもかかわらずterracaoさんが表現形式(スタイル)はどうでもいいという論点を打出してきたので、それには応えておきました)。まず、態度の保留についてですが、発話の正当性を担保するために、発話行為の主体である「私」がどのような考えを抱いているかを示さないことは、プライバシーの権利でもあり、良心の自由と発話行為の主体である「私」の匿名性を確保し、自由な討論を確保するために欠かせないものだと考えます。それを侵すことは(端的にdemianさんが行っていますが)、プライバシー/匿名性の侵害だと考えます。「思想の匿名性」ですね。


>チキさんが今回の問題をどうとらえているかにわたしはほとんど興味を持っていません
私は逆に、はてながどう捉えるかには興味を持っていません。「プライバシーの侵害はいけない」というルールは、私にとって蓋然的かつ自明のものに思えるからです。今回、内はてな的には小谷野氏が仄めかしをし、それにつられて「個人のプライバシーが暴かれる」という事態が起っています。それに対して、チキ氏は毅然とした対処をしたでしょうか?「迷惑です」といいながら小谷野氏に貸しを作ったかにさえ見受けられます(この辺の事情は分りません、例によって「興味がない」もので)。その上で、「迷惑です」と言いつつ彼がなしてきた(と私が考える)「迷惑」に言及しないは、アンフェアです。メタベタネタを得意とする(と私が考える)チキ氏は(今も)ネタとしてプライバシーを消費しているのではないか、と私は危惧します。ですからベタ的に、チキ氏を擁護するのはかまわないのですが、チキ氏の勝手といえば勝手な(と私が考える)「メタ言説」を可能にする(しておく)のは、プライバシー保護の観点から果して得策だろうか、ということです。

noharranoharra 2007/12/23 00:23 kurahitoさん
ふーむ。「思想の匿名性」とはまた、奇想天外なことを!
>>>まず、態度の保留についてですが、発話の正当性を担保するために、発話行為の主体である「私」がどのような考えを抱いているかを示さないことは、プライバシーの権利でもあり、良心の自由と発話行為の主体である「私」の匿名性を確保し、自由な討論を確保するために欠かせないものだと考えます。それを侵すことは(端的にdemianさんが行っていますが)、プライバシー/匿名性の侵害だと考えます。<<<
kurahitoさんは自由な討論に参加する。しかし「どのような考えを抱いているかを示さない」。
ということは何を以って、討論に参加するのですか? 全く理解不能です。

>>>「プライバシーの侵害はいけない」というルールは、私にとって蓋然的かつ自明のものに思えるからです。<<<
うーん。「蓋然的」を辞書でひくと、「ある程度確実であるさま。そうであろうと思われるさま。」ですので自明とは矛盾します。
でこれを「ひとには隠している戸籍名をさらされない権利がある。」の是認と理解して良いのでしょうか? それともその点についてノーコメントでありたいのですか?

>>>私は逆に、はてながどう捉えるかには興味を持っていません。
野原もですよ。「プライバシー侵害はいけない」というルールを、あなたとわたしの間で形成し得るのか?だけがわたしの問です。

kurahitokurahito 2007/12/23 01:08 >noharraさん
>「どのような考えを抱いているかを示さない」
発話行為の主体である「私」」がです。発話の主体である私に「私」という実体を求められては困るということです。
>「蓋然的」を辞書でひくと
制度としては蓋然的、少し考えれば自明ということです。
>あなたとわたしの間で形成し得るのか?
それは残念ながら興味がありません。ホモサケルのことを思うと同時にWebを思い浮べてしまいますから。

noharranoharra 2007/12/23 08:26 再度書きます。kurahitoさんは自由な討論に参加する。しかし「どのような考えを抱いているかを示さない」。
ということは何を以って、討論に参加するのですか? 全く理解不能です。

>>>>「どのような考えを抱いているかを示さない」
発話行為の主体である「私」」がです。発話の主体である私に「私」という実体を求められては困るということです。<<<
「「私」という実体」など求めていませんよ。対話に対し誠実でない権利を私は有するという意味でしょうか?
>>>ホモサケル
アガンベンの本は一冊持っていますが読んでおりません。

kurahitokurahito 2007/12/23 08:35 >全く理解不能です。
黙秘権のようなものです。それに「どのような考えを抱いているかを「全く」示さない」訳ではありません。「発話行為の主体」云々はdemianさんが用いておられるような精神分析的な論法に乗るつもりはないということです。

noharranoharra 2007/12/23 15:52 kurahitoさん 答えない権利をめぐって。
タリバン(およびそれに付随する住民)に対する空爆が正義かどうか? 将来のアフガニスタン人民の幸せにつながるかどうか? をわたしはあなたに聞きたいです。これについても回答許否でしょうか。その場合、いままでの回答拒否と同質ですか?

kurahitokurahito 2007/12/23 16:52 >タリバン(およびそれに付随する住民)に対する空爆が正義かどうか? 将来のアフガニスタン人民の幸せにつながるかどうか?
爆撃しておいて義肢を送ったりする態度は怒りを覚えます。けれども正義について存分に語ることは出来ませんし、その欲求も少ないのです。ですから曖昧に答えることしかできません。回答することのデメリットが少ないので、「多分不正で不幸だと思います」と答えますが、今までも回答を拒否した覚えはありません。ただ曖昧にして(いる事の利益をねらって)いるだけです。回答しないことの正義(先程からずっと手続的正義を語っていると思いますが)については以下のエントリが優れています。http://d.hatena.ne.jp/toled/20071211/1197417341

noharranoharra 2007/12/23 23:21 kurahitoさん
>>>>タリバン(およびそれに付随する住民)に対する空爆が正義かどうか? 将来のアフガニスタン人民の幸せにつながるかどうか?
爆撃しておいて義肢を送ったりする態度は怒りを覚えます。けれども正義について存分に語ることは出来ませんし、その欲求も少ないのです。ですから曖昧に答えることしかできません。<<<
えーと。アフガン、イラクパレスチナについてわたしはいわゆる反ブッシュ的な明確な意見を持っており、できればすべてのひとに同意して貰いたいと思っています。しかしまあ、この対話の第一の主題は「kurahitoさんの ただ曖昧にして(いる事の利益をねらって)いるだけ」という態度がどういうものなのか?をお聞きしたいという点にあります。
爆撃が将来のアフガニスタン人民の幸せにつながる可能性がないのならそれは単に不正義である。についてはいかがですか?
「回答することのデメリットが少ないので、「多分不正で不幸だと思います」と答えますが、」と違って、「多分」を入れずに回答しうると思うのですが。
「多分」を入れずに回答すること、人に問われずとも自ら進んで判断する、ことへの嫌悪があると。それはいったい何なんでしょうか?
toledくんの文章は長いので読んでからまたRESしますね。

kurahitokurahito 2007/12/24 12:34 >「多分」を入れずに回答すること、人に問われずとも自ら進んで判断する、ことへの嫌悪がある
それは違いますね。知らないから「多分」と付けざるを得ないのですし、知る勇気がないから「自ら進んで判断」できないのです。

noharranoharra 2007/12/26 20:42 kurahitoさん
>>>それは違いますね。知らないから「多分」と付けざるを得ないのですし、知る勇気がないから「自ら進んで判断」できないのです。<<<

イラクもアフガンも確かに遠い。そんな遠いところまで軍隊を進めて弱小国の主権侵害をしているとまあ記述できるわけです。そのとき問題は、侵攻する側の自らに正義があるとする雄弁さがわたしたちを説得できるかどうか?であるはずです。国家にはそれぞれ主権があるという(正義では必ずしもないところの)常識さえあればわかることです。イラクやアフガンの現地がどうなっているのかについての知識は必要ありません。そういう風に考えられないのは、米軍に加担することが国際貢献であるとする(ちょっと考えると理屈が必ずしも通っていないところの)マスコミの宣伝を拒否できない弱さを持っているからではないですか? そういうところにこそエポケーを行使すべきなのではないでしょうか。

tolodさんの文章に興味はあるのですが今回どうも読み始めてそれ以上読み進められません。
対話継続への意志はあるのですが・・・ 野原燐

kurahitokurahito 2007/12/26 23:47 toledさんの記事は以下の部分を読んでくだされば結構です。

現職副大統領の死をきっかけに始まるドロドロとした抗争を描いた映画です。事件を受けて、大統領は女性を新しい副大統領候補に指名します。ただし、新しく副大統領を任命するためには、上院の承認が必要です。その審査において、政敵たちが女性候補への誹謗中傷を行い、妨害しようとします。しだいに彼女への攻撃はエスカレートしていき、学生時代の「スキャンダル」の疑惑がもちあがります。乱交パーティーに参加していたというのです。男性ならば勲章になるようなことが攻撃材料となるという、絵に描いたようなダブルスタンダードです。

 さて、上院での聴聞会でこの「疑惑」について詰め寄られた副大統領候補は、回答を拒絶します。それは疑惑の火に油を注ぐことになり、彼女はピンチに陥ります。で、そのあと色々とありまして。ええ、まあ映画ですので。結局はハッピーエンドです。彼女は勝利して副大統領に就任します。そのあとです。ホワイトハウスの庭で二人っきりなると、大統領は彼女に尋ねます。ぶっちゃけ、本当のところはどうだったのよと。ここで彼女は、乱交パーティに参加したことを初めて否定します。「ではなぜ聴聞会で否定しなかったのか」と迫る大統領に、彼女が答えていわく、

そうすることは、彼ら(政敵)があんな質問をしたことを正当化してしまうから。

 彼女は、疑惑を否定することが自分の利益になるとわかっていながら、上院での答弁を拒絶ました。なぜならば、そんなことを「疑惑」にすることがそもそも間違っているからです。乱交パーティーが事実であるかどうかではなく、そんなことを攻撃材料にすること自体を彼女は拒否したのです。

で、イラク/アフガンについてですが、手続的正義という点では確かに不正です。しかし、いかなる主権国家も恐らく人権侵害を行っています。とはいえ米軍による人権侵害の方が、恐らく甚だしいのでしょう。しかしまた既に米軍が行っているところの人権侵害について知ることは、恐らく私を切裂きます。若造だった私は(今も若造ですが)イラク開戦に反対しませんでした。形式的にでも反対しなかったことからくる過剰な有責性に襲われたくないのです。そんなわけで曖昧な応答を続けているのです。

kurahitokurahito 2007/12/31 15:15 この件に関しては、チキさん同様、投了ということで宜しいでしょうか。

noharranoharra 2007/12/31 17:39 kurahitoさん
RESが遅れてすみません。
いろいろ考えていたもので。
>>>現職副大統領の死をきっかけ 云々については、kurahitoさんが援用される理屈が良くわかりません。というのは、この話は
「乱交パーティーを攻撃材料にする」ことに対する作者の倫理的態度を視聴者と共有しうるという思想に基づいています。「戸籍名を暴露する」ことに対する倫理的態度を明らかにしないという立場に立った上で、「戸籍名暴露する」問題を論じるというkurahitoさんの態度に援用できないと思います。
とりあえず。

kurahitokurahito 2007/12/31 19:47 >男性ならば勲章になるようなことが攻撃材料となるという、絵に描いたようなダブルスタンダードです。
ここを援用させてください。明示的な説明をしまくらないのは環境管理型権力への批判ということにさせてください。

noharranoharra 2008/01/01 08:35 kurahitoさん 新年の挨拶をします。
ことしもよろしく。
RESは明日になります。あしからず。野原

kurahitokurahito 2008/01/01 12:26 あけましておめでとうございます。
レスは勿論、いつになっても気軽にしてくださって結構ですよ。

kurahitokurahito 2008/01/03 08:47 少し矛盾するようですが、野原さんの一連のエントリももしかしたらこの件に関係するのかもしれませんが、いつも観ているわけではありませんので、レスを下さったらTBでもしてください。

kurahitoさんへ(1月3日)

id:kurahitoさんへ
RESが遅れて失礼しました。読みかえすとだいぶ前の時点からよくわからない文章が多かったので、ついでに質問させてください。


言っておいた方がよかったかもしれないことは次のことです。
あなたの支持政党はどこですか?という問については回答拒否するのが正しい態度だ、とわたしはわりと思っているということです。政党や選挙を否定しませんが政治というのは本来別の回路で開かれうるとわたしは思っています。一方、イラク派兵の賛否に対しては回答拒否する権利はないんじゃないかな。

そして無数の語る主体の声を響かせ、おびただしい数の体験をして語らせねばならないのです。語る主体がいつでも同じ人間であってはいけない。哲学の規範的な言葉ばかりが響いてはならない。
M.フーコーフーコー・コレクション5 性・真理』筑摩書房、2006年、pp.101-102
http://d.hatena.ne.jp/knot/20071230#p2

これは大阪での無届デモ?の報告と共に置かれているフレーズなので、フーコーの真意はともかくわたしは好意的に受け取っています。
kurahitoさんはこうしたフレーズが好きなのかもしれませんね。同じフーコーの文章でも、フーコーにとってはある露骨で平板なスローガンを掲げたデモと不可分であったものを、kurahitoさんはそうした情況に対する潔癖さにおいて読み取っているのではないか、というのがわたしの疑問です。上記のブログやそれを取り巻く情況について無知ですので一般論として受け取ってください。確認しておくとわたしが気になっているのは、次の文章です。

 まず、態度の保留についてですが、発話の正当性を担保するために、発話行為の主体である「私」がどのような考えを抱いているかを示さないことは、プライバシーの権利でもあり、良心の自由と発話行為の主体である「私」の匿名性を確保し、自由な討論を確保するために欠かせないものだと考えます。kurahito

1.>「どのような考えを抱いているかを示さない」
発話行為の主体である「私」」がです。発話の主体である私に「私」という実体を求められては困るということです。

kuhahitoとあなたの本体といったものの二つを、切り離すといった意図ではないのですね?
発話の主体である私は、統御された近代的主体ではない、ドゥルーズ的多数性でありたいみたいな意味ですか?

2. >あなたとわたしの間で形成し得るのか?
それは残念ながら興味がありません。ホモサケルのことを思うと同時にWebを思い浮べてしまいますから。

何かの同意を獲得するためでなければ、何のためにこのやりとりを続けているのですか?
「ホモサケルのことを思うと同時にWebを思い浮べてしま」うってどういうことですか?

3.>男性ならば勲章になるようなことが攻撃材料となるという、絵に描いたようなダブルスタンダードです。

あなたの友人がそのような攻撃をしてあなたがそれを納得できず何か言ったときに、彼/女がその発言について「黙秘権」行使した場合、その権利を認めるのですか

4.私は(略)イラク開戦に反対しませんでした。

おそらく倫理をめぐる思考は常にここから出発します。儒教でもキリスト教でも。しかるに戦後左翼の多数派はどこかに倫理的にイノセントなモデルがありわたしも(暗黙のうちに)そうだという前提で、パウリ檻な倫理的優位を前提として語りかけることを常としました。しかしここではあなたの主張を問い質すことはわたしの倫理的アプリオリをあなたが承認することにはつながりません。

5.とはいえ米軍による人権侵害の方が、恐らく甚だしいのでしょう。しかしまた既に米軍が行っているところの人権侵害について知ることは、恐らく私を切裂きます。若造だった私は(今も若造ですが)イラク開戦に反対しませんでした。形式的にでも反対しなかったことからくる過剰な有責性に襲われたくないのです。そんなわけで曖昧な応答を続けているのです。

米軍による人権侵害の方が、甚だしいかどうかなどピント外れの問ですね。米軍による人権侵害があったとすれば、米軍がそこにいる根拠が少しずつゆらぐはずですね。
「わたしは有責性に襲われたくない」という心情を肯定するというのは、いわゆるアウシュビッツへの傾斜を全否定しなければならないというヨーロッパの政治原理の否定になると思います。後者にも批判的ですか?
長くなって失礼しました。


(ところでこの日を編集するとTBが大量に飛んでしまうな。というかすでに飛んでしまった、たぶん。すみません。1月3日20時30分)

はてな規約 抜粋

はてな規約とかちゃんと読んだことがなかった。ちょっと読んでみた。

第6条(禁止事項)
1. ユーザーは、本サービスを利用するに際し、以下のような法律違反行為を行ってはなりません。
1. 著作権特許権等の知的財産権を侵害する行為
2. プライバシーを侵害する行為
3. 名誉毀損行為、侮辱行為や他者の業務妨害となる行為
4. 詐欺行為
5. 無限連鎖講(ネズミ講)を開設し、またはこれを勧誘・運営する行為
6. 不正アクセス行為の防止等に関する法律に違反する行為、電子計算機損壊等業務妨害罪(刑法第234条の2)に該当する行為をはじめ、当社及び他人のコンピューターに対して不正な操作を行う行為
7. その他犯罪に関わる行為あるいは法令に違反する行為
2. ユーザーは、本サービスを利用するに際し、以下のような社会的に不適切な行為を行ってはなりません。
1. 犯罪予告、犯罪の指南等、犯罪を引き起こすおそれのある行為
2. 人種、民族、信条、性別、社会的身分、居住場所、身体的特徴、病歴、教育、財産及び収入等を根拠にする差別的表現行為
3. 倫理的に問題がある低俗、有害、下品な行為、他人に嫌悪感を与える内容の情報を開示する行為。ポルノ、売春、風俗営業、これらに関連する内容の情報を開示する行為。
4. 迷惑行為、嫌がらせ行為、誹謗中傷行為、正当な権利なく他者に精神的被害・経済的被害を与える行為
5. 自分以外の個人や会社、団体を名乗ったり、権限なく特定の会社や団体の名称を使用したり、架空の個人や会社、団体を名乗ったり、事実がないにも関わらず他の人物や会社、団体と業務提携や協力関係があると偽ったりする行為
6. 他者になりすましてサービスを利用したり、情報を改ざんする行為
7. その他、公序良俗に反するかあるいは社会的に不適切な行動と解される行為

(3.4.略)

5.# ユーザーは、本サービスの「はてなダイアリー」を利用するに際し、以下のような行為を行ってはなりません。

1. キーワードおよび日記に他者の著作権やその他の権利を侵害する情報を掲載する行為
2. はてなダイアリーキーワードにおいて、ヘルプに定められたルールに反したキーワードを登録する行為
3. はてなダイアリー評議会など、ヘルプに定められた正当な方法による決議の結果に反する行為

(6.7.8.略)
http://www.hatena.ne.jp/rule/rule#kiyaku06

はてな規約 ユーザーの責任など

第3条(ユーザー名とパスワード)
1. ユーザー登録を行ったユーザーは、メインアカウントサブアカウント保有できるものとします。メインアカウントサブアカウントを問わず、アカウントごとにユーザー名とパスワードが設定されます。
2. 登録ユーザーはご自身の有するユーザー名とパスワードの管理を自己の責任で行うこととします。
3. ユーザー名とパスワードを利用して行われた行為は、そのユーザー名を有している登録ユーザーが行ったものとみなします。
 (4.5.6.略)
7. 当社が必要と判断した場合、特定の登録ユーザーに対してユーザー名、パスワードを抹消し、本サービスの利用を禁止することがあります。

第5条(ユーザーの責任)
1. 本サービスをユーザーが利用する場合、インターネットにアクセスする必要がありますが、そのためのあらゆる機器、ソフトウェア、通信手段はユーザーご自身が各自の責任と費用において適切に準備、設置、操作していただく必要があります。当社はユーザーのアクセス環境について一切関与せず、これらの準備、操作に関する責任を負いません。
2. 本サービス上においてユーザーが開示した、質問及び回答、掲示板への発言等全ての情報に関する責任は、ユーザー各自にあります。従って、当社はユーザーが本サービスにおいて開示した質問や回答、掲示板への発言等の内容について、一切の責任を負いません。
3. ユーザーが他人の名誉を毀損した場合、プライバシー権を侵害した場合、著作権法に違反する行為を行った場合その他他人の権利を侵害した場合、当該ユーザーは自身の責任と費用において解決しなければならず、当社は一切の責任を負いません。
4. ユーザーが開示した情報が原因となって迷惑を受けたとする者が現れた場合には、当該ユーザーは自身の責任と費用において解決しなければならず、当社は一切の責任を負いません。
5. はてなアンテナの利用において、インターネット上に現存するホームページの中にはロボットの自動巡回を拒否しているページがあります。当該ページを登録ユーザーが自身のはてなアンテナに登録した場合に発生したトラブルにおいて、ホームページ公開者、アンテナ利用者が被った全ての不利益については、当該ユーザーに一切の責任があるものとし、当社は一切の責任を負いません。
6. はてなグループにおいて、グループ内の情報における各種法令および本規約の遵守に関しては、グループ管理者が責任を負うものとします。

はてな情報削除ガイドライン(抜粋)

■ プライバシー侵害

申立人について以下の種別に分けて判断を行う。

公人
国会議員、都道府県の長、議員その他要職につく公務員等
準公人
会社代表者等の公的立場にあり、社会影響力を持つ私人
著名人
著名人、有名人
犯罪関係者
犯罪の被疑者・被告人、その親族
私人
上記以外の一般私人

* 一般私人の場合
o 氏名・勤務先・自宅の住所・電話番号・メールアドレスが掲載されている場合、原則として削除を行う
o 氏名・勤務先・自宅の住所・電話番号・メールアドレスが名簿等の集合した形態で記載されている場合、原則として削除を行う
o インターネット上に公表されていない氏名・勤務先・自宅の住所・電話番号・メールアドレスが記載されている場合、原則として削除を行う
+ ただしインターネット上に公表されていた氏名・勤務先・自宅の住所・電話番号・メールアドレスについても以下に該当する場合は原則として削除を行う
+ 過去に存在したウェブサイトについてのGoogleキャッシュページおよびInternet Archiveページへのリンク、引用について、ウェブサイトの管理人からプライバシー侵害にあたるとして削除要請があった場合で、既にそのウェブサイトが存在せず、GoogleキャッシュページあるいはInternet Archiveページにのみその情報があり、GoogleあるいはInternet Archiveに対して既に削除申請が行われている場合
o 氏名及び連絡先以外の個人情報(学歴・病歴・成績・資産・思想信条・前科前歴・社会的身分等)が記載されている場合、本人から削除要請があれば、発信者に対して削除要請を伝え、発信者が自主的に削除しない場合、原則として削除する
o 個人を特定可能な名称(氏名やハンドルネーム等)がはてなダイアリーキーワードとして登録され、そのキーワードが公益性を伴わず、対象となる個人からキーワードの削除依頼があった場合には原則として削除を行う
o 原則として削除対象となる個人情報が、直接記載されているわけではなくとも、個人情報開示のほのめかし行為等、当該情報が不特定の第三者に開示される危険性のある記載については原則として削除を行う
* 公人・準公人・著名人の場合 以下 略
http://hatena.g.hatena.ne.jp/keyword/%e3%81%af%e3%81%a6%e3%81%aa%e6%83%85%e5%a0%b1%e5%89%8a%e9%99%a4%e3%82%ac%e3%82%a4%e3%83%89%e3%83%a9%e3%82%a4%e3%83%b3