明後日発表のレポート*3

例によって例のごとく晒しあげ。
ロキソニンが週に1日だけ、1×N朝食後で4週分処方されていた内科受診、63歳男性の症例について。

非ホジキンリンパ腫
悪性リンパ腫は腫瘤形成性リンパ系腫瘍の総称であり、ホジキンリンパ腫以外の悪性リンパ腫非ホジキンリンパ腫(NHL)と称する。NHLはB細胞もしくはT/NK細胞に由来する腫瘍であり、細胞起源、病因、病理組織像、臨床病態、免疫学的表面形質、遺伝学的特徴などの点において、きわめて多様性に富む疾患複合体である。NHLはリンパ節に発生する節性リンパ腫と、臓器に発生する節外性リンパ腫に大別されるが、後者は全身のあらゆる臓器に発生し、発生部位によって臨床病態が異なる。悪性リンパ腫かどうか、悪性リンパ腫であるとしたらどのような疾患単位かの診断が個々の患者に対して適切な診療を実施するうえでの最も重要なポイントである。


[治療方針]
A 中高悪性度リンパ腫
化学療法と局所放射線療法併用が推奨される。その場合の化学療法はCHOP療法(エンドキサン+アドリアシン+オンコビンプレドニン)が標準的。
B 限局期低悪性度B細胞リンパ腫
Ⅰ、Ⅱ期の低悪性度B細胞リンパ腫では30−40Gyの局所放射線療法が一般的な治療選択であり、約50%の症例に10年以上の無病生存が期待できる。胃のリンパ腫ではH.Pyloriの除菌療法が第1選択である。
C 進行期低悪性度B細胞リンパ腫
病勢進行が緩慢で症状に乏しく、生存期間中央値が7−10年と長いが、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫への組織学的進展などによって大半の患者が最終的に治癒しないことが問題である。標準治療は確立されておらず、病勢進行や症状発現までは無治療経過観察しても生存に不利益はないとされてきた。
近年、抗CD20抗体リツキサンが導入され、化学療法施行後の再発・再燃例に対して約60%の奏功が得られることが判明した。


*リツキサン(リツキシマブ)
効能又は効果:CD20陽性のB細胞性非ホジキンリンパ腫
用法及び用量:通常成人には、リツキシマブ(遺伝子組換え)として1回量375mg/m2を1週間間隔で点滴静注する。最大投与回数は8回とする。
用法及び用量に関連する使用上の注意:本剤投与時に頻発してあらわれるinfusion reaction(発熱、悪寒、頭痛等)を軽減させるために、本剤投与の30分前に抗ヒスタミン剤、解熱鎮痛剤等の前投与を行うこと。


リツキシマブはPro‐B細胞、形質細胞を除くほとんどの正常及び腫瘍化したヒトBリンパ球のみに発現する分化抗原であるCD20抗原を標的とする分子標的薬であり、殺細胞作用を主体とする従来の化学療法薬とは薬物有害反応のオーバーラップが少ないことが知られている。
主な副作用は、非血液毒性では発熱64.3%、悪寒34.4%、掻痒21.7%、頭痛21.0%、ほてり20.4%などであり、血液毒性は、白血球減少47.8%、好中球減少45.9%などとなっている。
非血液毒性のうちもっとも高頻度で出現する副作用がinfusion reactionである。infusion reactionは投与中〜投与開始24時間以内に出現する副作用であり、一般的な過敏症状やアレルギー反応に類似した発熱、悪寒、悪心、頭痛、血圧低下、血管浮腫、咽頭痛、発疹、掻痒感、咳などの症状を呈する。発現機序は不明であるが、Bリンパ球が傷害される過程で産生・放出されるサイトカインが原因として推察されている。この副作用は、初回投与時の投与後30分〜2時間に現れることが多く、2回目投与時からは発現頻度が減少する。特に重篤infusion reactionの80%は初回投与時に発現しており、また、その発現は注射速度と関連があり、投与速度を上げたときに生じやすい。
Infusion reactionを軽減するための対策として、リツキシマブ投与開始30分前に抗ヒスタミン薬と解熱鎮痛薬の前投薬が推奨されている。しかし、これらの前投薬を行った患者においても重篤infusion reactionが発現したとの報告があり、リツキシマブ投与中は患者の状態を十分に観察する必要がある。