社会不安障害

5分ほど遅れて銀行協会に到着。
今回のテーマは社会不安障害(SAD)。
主催が明治製薬さんということで、デプロメールの宣伝がもk(ry
不安障害には大きく分けてPTSD、強迫性障害パニック障害全般性不安障害、SAD、各種恐怖症があり、いずれも女性に多い。
SADは鬱の併発率が高いが、鬱と不安は似て非なるものである。
鬱は、ある期間中ず〜っと鬱なのだが、不安はある特定の状況にさらされている間のみ不安や恐怖を感じるのである。
また社会不安障害と似たような症状を示すものとして妄想性障害や身体醜形障害があり、鑑別が必要となる。
昔から認識されている対人恐怖症とも似ているが、対人恐怖症が「人からどう思われているか、自分は人に迷惑をかけるのではないか」という他人中心の不安、恐怖であるのに対し、SADは自分が恥をかくことを恐れる自分中心の不安、恐怖である点が異なる。


SADは思春期に発症し、生育環境などが関係していることが多いために治療が困難な全般型SADと30〜40代で発症することが多く、比較的治療しやすい限局型SADとに分類できる。
後者は「会議で発表しなくてはならない」など特定の状況が発生するときにのみ発作がおき、またその状況を回避しようとする。*1
生涯有病率14%と大うつ病、アルコール依存に次ぐ精神疾患であり、自殺や鬱の前駆症状ともなりうる割には本人に病識がないため、受診率は33%と低率である。
また、患者自身がSADであることを認めたくないために、頭痛など他の症状を主訴に来院することがある。


SADの治療法として認知行動療法*2が行われていたが、薬物療法として先月日本で初めて、マレイン酸フルボキサミンデプロメール)が初めて保険適応を取得した。
そのほかに適応外使用ではあるがベンゾジアゼピン(BZD)系薬剤やβ遮断剤、MAOB阻害剤などが用いられるが、β遮断剤やMAOB阻害剤は日本ではあまり使用されない。
SSRIは効果はあるが即効性がなく、効果発現までに4〜12wを要する。
一方BZDは即効性はあるが依存性があるため長期に使いにくい。
このためBZDを導入に用いている間にSSRIを2wくらいかけて漸増*3し、コントロールできたらBZDを中止して症状を抑えていく治療法がスタンダードになっている。
またSSRIには「こだわりを和らげる」作用があるため、認知行動療法を行う上でも補助的な薬効が期待できる。


症状改善後も、最低で半年〜1年間はSSRIの服薬を継続した方が再発予防の面から好ましい。
このとき「よくなった行動パターンが本当にあなたのものになるには1年くらいかかる」などの服薬を続けるためのケアが重要となる。
コントロールが順調にできていれば、さらに半年〜1年かけてゆっくり減量*4を行う。
また長期服薬を行っていると副作用のモニタリングが重要となるが、このとき患者自身から訴えにくい副作用に「性機能障害」があり、患者自身からは言いにくい割にフラストレーションはたまりやすいので気をつけるとよい。

*1:会議のある日だけ頭痛が起きる、など。

*2:心のリハビリ

*3:SSRIによる消化器系のSEを予防するためであるが、量を増やしていくと患者は「自分は悪くなっている」と思ってしまうため、薬剤師によるケアが重要となる。

*4:当然ながら突然の服薬中止は退薬症候群(リバウンド)を引き起こす原因になる。