添付文書に従わない薬の投与は“医療慣行”

ある疾患の患者に薬物治療をしていますが、その薬剤の添付文書の使用上の注意事項として、「1カ月に1回肝機能検査を実施する」といった記載があります。本当にこのような頻度で血液生化学検査を実施しなければならないのですか。
(相談者:診療所・院長)

との素敵記事が日経メディカルオンラインにて掲載されていた。*1
血液毒性や肝障害他が報告されている薬剤にはえてして上記のように定期的な検査を行うよう添付文書に規定されている。
しかし患者さんに話を聞いてみると規定通りに検査を行っていない例には日常茶飯事に遭遇する。
かといって外部薬局から病院/Dr.に対して検査を行うように疑義照会することなどできるわけもなく。

この点について、最高裁判決では、以下のように述べています。「医師の注意義務の基準となる医療水準は、平均的医師が現に行っている“医療慣行”とは必ずしも一致するものではなく、医師が医療慣行に従った医療行為を行ったからといって、医療水準に従った注意義務を尽くしたと直ちにいうことはできない」。
比喩的にいえば、「時速40㎞制限の道を、多くの車が時速60 ㎞で走っているから、自分も60㎞で走っても良い」という考え方が、誤りであるということと同じでしょうか。


最後に付け加えておきますが、最高裁判決の判例解説では、「仮に、医療の現場が、医薬品の添付文書に記載された注意事項を必ずしも守っていない現実があるとしたら、医療に従事する者だけでなく薬事に携わる者をも含めて反省すべき点があるものと思われ(る)」と指摘しています。

逆説的ではありますが多くの車が時速60kmで走っている道において、制限速度が40kmだからといって40kmで走ったとしたらどうなるか。
結局オイラたち院外調剤薬局の薬剤師にできるのは血液毒性や肝障害などの初期症状を注意深くモニタリングして、異常が認められる場合の対処を患者さんに伝える&受診勧告を行うことになってくるのではないでしょうか。