夫婦写真散歩のススメ

歩く速さで、街の新陳代謝や季節の移り変わりをゆっくり、丁寧に味わってみましょう。

栗林公園(香川県高松市)

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特別名勝栗林公園を歩く、撮る

香川県高松市にある池泉回遊式大名庭園、栗林公園。

平庭部分の面積は約16万平方メートル。

紫雲山のふもとに広がる宏大な庭園は北庭と南庭に分かれ、

6つの大池泉と13の築山を調和させた趣きの異なる見事な景観を作り出しています。

まさに一歩一景の美しさ、写真散歩には最高の場所です。


前回に引き続き、香川県高松市を歩いた記録のなかから特別名勝「栗林公園」を中心にお届けします。

高松市街案内図


高松駅から道幅も広いオフィス街が続く中央通りから、

ショッピングアーケード

天井も高い約3km近く続く見事なショッピングアーケードを歩きながら、栗林公園を目指します。

瀬戸内国際芸術祭

この夏開催される瀬戸内国際芸術祭(トリエンナーレ)の垂れ幕を眺めながら歩くと、

高松中央商店街

高松中央商店街のほぼ全てを覆うアーケードは総延長が2.7km。
総延長では日本一の長さを誇るアーケードには、

私の大好きな麗しき昭和の香り漂う喫茶店もあり、

街の賑わいは何ともうれしい気分になります。

東京都内でも増えている、いわゆる「シャッター通り」を取材することが多い昨今。

瀬戸内の心地よい海風に吹かれながら、紺碧の空の下、広々としたこの空間。

本日のBGM PART1

気分はすっかりボサノバ、歩くリズムも軽快になって、脳内BGMはEliane Elias。

Eliane Elias「Call Me」


Dreamer

Dreamer

Amazon

東名阪という大都市特有の猥雑感に慣れた身としては、一味違った城下町にして港町、そして瀬戸内の穏やかで心地よい解放感。

地元経済に寄与する街の再開発もぜひ成功してほしいと思う、高松中央商店街です。

お昼をいただいたばかりでも、こんな幟に心誘われ、ついついメモ。

立ち寄りたい場所は数あれど、

また今度、次回はぜひゆっくりと心に誓いつつ、

キョロキョロ眺めながら歩いていると特別名勝「栗林公園」に到着です。

栗林公園写真散歩



栗林公園公式サイト


公式サイトも分かりやすい見事な作りに感心します。

まずは栗林公園の起こりと現在までの歴史を駆け足で。

栗林公園の歴史

栗林公園の起こりは、16世紀後半、元亀天正の頃、当地の豪族佐藤氏によって、西南地区(小普陀付近)に築庭されたのに始まるといわれ、寛永年間(1625年頃)に、当時の讃岐国領主・生駒高俊(たかとし)公によって南湖一帯が造園され、現在の公園の原型が形作られました。


その後、寛永19年(1642年)生駒氏の転封に伴い入封した初代高松藩主・松平頼重(よりしげ)公(水戸光圀公の兄君)に引き継がれ、さらに100年以上経た延享2年(1745年)、5代頼恭(よりたか)公の時に、園内六十景命名をもって完成しました。以来歴代藩主が修築を重ね、明治維新に至るまでの228年間、松平家11代の下屋敷として使用されました。


明治4年(1871年)高松藩が廃せられ、新政府の所有となり、明治6年1月公布された「公園に関する太政官布告」に基づいて明治8年(1875年)3月16日に県立公園として一般に公開されるようになり、さらに昭和28年3月には、文化財保護法による「特別名勝」に指定され、今日に至っています。

東門

初夏の眩しい陽射しに映える松、松、松。


鶴亀松


コンパクトデジタルカメラ(通称:コンデジ)二台で、4:3の画面比と16:9の画面比で撮り比べながら、まずは園内を一周することに。

商工奨励館

東門を入ってすぐの場所に高松藩初代藩主松平頼重が隠居後住んだといわれる檜御殿跡、現在の商工奨励館です。

ヒマラヤ杉

民芸館


このあたりを境におよそ23万坪の大庭園は北庭と南庭に分かれます。

それでは南庭の北湖から、一歩一景を味わっていくことと致しましょう。

築山芙蓉峰



16:9の画面でどうぞ。画面をクリックすると大きなサイズでもご覧いただけます。

湖水までが松の影を映して、濃緑に染まり、背後には紫雲山。

松の見事な樹形をつくりだす高度な剪定技術に驚嘆させられます。

松は不老長寿の樹木として、日本の歴史のなかで長く大切に扱われ、
松翠の風景が醸し出す世界観は道教における不死不老の理想郷=「神仙蓬莱」の世界でもあります。


南湖回遊

南湖東岸の築山飛来峰から望む風雅と静寂の風景。その美しさにしばし言葉を失います。

画面をクリックして、ぜひオリジナルサイズで味わってみてください。

吹上渓流の沢渡り

吹上は東南端にある水源地。曲水式の流れに敷かれた飛び石を渡ります。

掬月亭

予約で一杯だったため、入れませんでしたが、いずれまた訪問し、ここでお茶を味わいたいと考えつつ、メモ。

お座敷からの風景は大名庭園ならではの絶景、幽邃な山水画を思わせる眺めを味わうことが出来るでしょう。

それはまた次回と心に誓います。
桜か紅葉の季節を狙って。
もし高松に雪が積もるようなことがあれば、それはそれは美しいだろうと想像しながら次へ進みます。

小普陀の石組み

室町期のものと推定される枯山水風の石組みがあります。この築山は中国浙江省の観音霊場、普陀山にちなんで名付けられました。

西湖の赤壁

西湖は紫雲山に沿って長く造られた池泉。不断の努力によって数々の殖産政策に成功し、全国有数の雄藩に育てた五代目藩主松平頼恭(よりたか)が中国湖北省の名勝地、赤壁にちなんで名付けたそうです。

「庭園」という言葉自体は明治期以降に作られた比較的新しい造語ではありますが、古来、山水、林泉、前栽などと呼ばれていました。

日本庭園の真髄

現在理解されている「庭園文化」の起源を辿ると、仏教伝来と同時期まで遡ることができますが、なかでも仏教や道教の影響は大きく、「神仙蓬莱」や「須弥山」などの考え方=思想が作庭のモチーフに多く用いられます。それが長い歴史の中でアレンジされ、日本独自の庭園文化を形成していきます。

また日本庭園の独創は人工的な曲線や左右対称の構成を用いず、自然素材の柔和な曲線を活かす、まさに大自然の縮景にあります。

水と自然を尊ぶ精神、さらにその水と自然を目と耳、五感を総動員して感じる。

人間としての原点回帰が日本庭園の真髄でもあるのです。

水と光と風の流れをスローシャッターと水平垂直を壊しつつ、表現してみました。

それにしても広々とした屈託のかけらもないこの空間。

晴れやかにして朗らかな幸福感と気品ある贅沢気分が満ち溢れている「栗林公園」。

前回も申し上げましたが、讃岐高松松平家が徳川幕府の譜代大名筆頭と同列の扱いで、御三家でもある水戸徳川家出身であり、水戸光圀の兄であった初代藩主松平頼重以降、殖産政策に成功した五代藩主、松平頼恭まで、長い年月を掛け、造園しただけあって、実に見事。

回遊が楽しめ、伸びやかな山里の自然のなかに粋を凝らした茶亭が佇み、

季節の花々があり、





茶事だけでなく、花見、月見、舟遊びが広大な池泉で催され、

鴨猟や弓馬鍛錬などの武芸の場所も提供したことが分かる遺構も残されています。


明治になっても、砂糖の生産など数々の殖産政策によって、全国屈指の富豪藩主でもあった高松松平家。

栗林公園薬草園

薬草園があり、

一歩一景の風雅が味わえる栗林公園。






ミシュラン観光ガイド「わざわざ訪れる価値のある場所」と日本庭園ランキング

2009年3月16日発売のミシュラン観光ガイドに「わざわざ訪れる価値のある場所」として最高評価3つ星に選定されたことや、2012年には米国の庭園専門誌「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング」の「2011年日本庭園ランキング」で、足立美術館(島根県)、桂離宮(京都府)に続く3位を獲得したことも十分に頷ける特別名勝「栗林公園」の散歩となりました。

日本三名園(水戸偕楽園、金沢兼六園、岡山後楽園)



高松中央商店街と高松駅周辺夕景

日もだいぶ傾いてきたので、再び徒歩で高松駅へ。
アーケードを歩いて、

都内から消えた麗しき喫茶店文化「名曲喫茶」を発見して、一休み。
広々とした店内、シックなインテリア、フードメニューも昭和テイストで充実。
それが何ともうれしいのであります。

喫茶「皇帝」、食べログURL

http://tabelog.com/kagawa/A3701/A370101/37004429/
「皇帝」という店名もベートーベンのピアノ・コンチェルトが由来ですね、きっと。

サンポート高松

サンポート高松の夕景をメモし、帰路に。

ああ、麗しき高松の街。

住みたくなったなぁ、良いところです。また伺います。


ということで本日はこれまで。