Twitterとアニメの幸せな結婚生活を考える(婚活編)

 皆さん、お久しぶりです!Twitter*1暗黒セカイから帰還もとい一時帰省して参りましたnoir_kでございます。最近の自分はと言いますと……なぞと、はてなダイアリーに更新のなかった1年間の想い出、そう、はてな記法のすべてを忘却するほどの大冒険(!)について語るのもまた良いのですが、ここではざっくり省略させていただきます(笑)。

ご報告とUSTREAM

 まずはご報告になるのですが、反=アニメ批評さん(id:ill_critique@ill_critique)とEpisodeZeroさん(id:episode_zero@epi_zero)が編集を行うアニメ系同人誌『アニメルカに軽めのエッセイのような論考のようなものを寄稿させていただくことになりました。

 この『アニメルカ』の特徴的な点として、同人誌の制作過程を完全公開することがあげられます。具体的には編集会議の様子をUSTREAMアニメ同人誌用公開企画会議. Radio」で行っているのです。第1回目の放送は2010年1月16日22時〜24時に行われ、サークル名および同人誌の名前をリスナとともに決めるという観客参加型の面白い試みをされていました。

 さらに第1回公開座談会の中で提案された企画案として、USTREAMTwitterを利用して新しいタイプの公開座談会ができないか」というものがありました。その場では、そんな「座談会2.0」の具体的な方法論までは確立できませんでしたが、とりあえずやってみようという流れになったのでした。

 以上のような経緯で第2回編集会議が2010年2月13日22時〜24時半に行われました。テスト座談会のテーマは「Twitterとアニメ」、そしてろくさん(id:n_euler666@n_euler666)とともに不肖わたくしid:noir_kがゲストパネラとして出演したのです!……とまたも事後報告(笑)。そのときに話し足りなかったことや、刺激を受けて考えたことなど、ぱたぱたと書かせていただければ、なぞと思います。

Twitterの特徴って何じゃらほい(死語)


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 日本国内では2009年後半からすごい勢いでもてはやされたTwitterは、「それをビジネスに応用しよう!」といった趣旨の関連本が多数出たことでも話題を呼びました。不勉強ながらその手の本は一冊も読んでいないのですが(笑)。一部ではメディアによる意図的な流行だなぞといった陰謀論ちっくなことも耳にしたりもしますが、すでに1年半ほどお世話になっている身としては草の根的に広まってきた最近では珍しいタイプのメディアのように感じます。それでもここ半年くらいの急成長ぶりは謎ですが(笑)*2

 では具体的に、そのような本の中でTwitterの特性がどのように語られているのか、実例を見てみましょう。参考にさせていただくのは……津田大介『Twitter社会論』をまとめられている「きゃずひさ」さんのエントリです。この記事からTwitterの特性として述べられているものをまとめると次のようになります。

・リアルタイム性 オープンチャットの亜種と考えていただいてもOKです。
・伝播力が強い いわば口コミの可視化でしょうか。
・オープン性 Followという概念がありますが、基本的にはどのページも誰でも見ることができます。*3
・ゆるい空気感 ログイン状態を他ユーザに示したりはしないTwitterですので、別に話しかけられても応えなくても良いわけです。そこまでのリアルタイム性は必要とされません。
・属人性が強い 匿名のハンドルネームを用いていますが、個々のユーザは固有性を保持しています。それゆえ「誰の発言か」という観点が大きな影響力を持ってきます。

 ここで述べられている諸特性はなるほど、自分がTwitterを使用している感覚ともマッチします。ではこれらの特性をベースに、自分の考えるTwitterの特色について考えていきたいと思います。

キャラクタを偽装し易い?

 まず一見して分かる特徴ですが、TLには「アイコン+ハンドルネーム+140文字」のみが羅列されます。140文字で制限されているゆえ、「見せたくないものを見せない」というコントロールが可能です。これは「嘘」や「知ったかぶり」がばれにくい*4、と言い換えても良いかもしれません。


※これ(1つのPOST=投稿)が縦に連なってTL(タイムライン)が構成されます。アイコン付きの脚本みたいな感じ?

 また140字という絶妙に少ない情報量は、POSTの背後にある投稿者の「人格」への想像力が働きやすいとも考えられるでしょう。しかもアイコン*5が常に表示されることで、投稿者の存在感がいやおうなしに強調されます。それもまた投稿者の「人格」を想像させ、ただの平面的な記号からありありとした存在感を持つ「キャラクター」に引き上げる効果が大きいです。

 まとめますと、Twitterの表示形式は「キャラクタを偽装し易い」と言えると思います*6。簡単な例としては、ネカマがし易い(笑)。さらにひとつひとつのPOSTが他者のPOSTに紛れ込んで表示されることで、個々の存在が圧倒的なリアリティをもって立ち上がってくるでしょう。

文脈の「強制的」な切断

 最長で140文字までしかPOSTできないTwitterにおいて、140文字を超過する内容をPOSTする際には、必ず2つ以上に分けなくてはいけないことになります。そのPOSTをいかに短い間隔でPOSTしたとしても、他人のTL(上ではそのふたつのPOSTのあいだに他人による無関係なPOSTが必然的に入り込んでしまうことになります。


※投稿は下から上に蓄積されていきます。ちょっとr_akutagawaさんが「イタイ」感じに見えますね(笑)。

 また「文脈の切断」が前提となる状況では、異なる人物によるまったく無関係なPOSTであっても、逆説的に文脈を読み込むことができる、ということです。もう少し丁寧に説明すると、ある出来事AについてのPOSTであるA'と別の出来事BについてのPOSTであるB'が同一TL上に並ぶとき、その言及している出来事AおよびBが同じ出来事を指しているかのように誤解しやすい、ということになります。


※註:xxx_xxxさんはリナカフェにいるとは限らないよ!本当はまったく違うところにいたり。

 文脈が強制的に切断されるからこそ、逆に文脈を推測し読み込もうとする人間心理がはたらく……。これって何かに似ていないですか?

Twitter萌え4コマに似ている?

 ここまでで述べてきたTwitterの特徴2点をおさらいすると次のようになります。

  • アイコン+140字という表示形式によって、「キャラクタ」の存在感が圧倒的に立ち上がってくる。
  • 文脈が強制的に切断されているため、何もないところから過剰な意味を読み込んでしてしまう。

 以上から何を主張したいのかというと、ズバリ!「Twitter萌え4コマ*7に似ている」ということなのです!お久しぶりにも関わらず、いきなり電波っぽくってスミマセン(笑)。

 個人的な理解としては、萌え4コマの特徴は次の2点です。

  • 複数の女子が等価に配置され、キャラクタの存在感を軸に、客観的な視点から描写される。
  • さりげない日常が描写され、物語的な起伏が小さい。あるいはオチがない

 かなり意図的に抽出した特徴なので、現状にそぐわない部分もあるし、「空気系と日常系を一緒にすんな!」みたいな反論が聞こえてきそうですが、そこは堪えて堪えて(笑)。この後の展開はもう、賢明なる読者諸氏にはお分かりかと思います。ね!

「物語」のないエンタテインメントは存在しない!

 萌え4コマはキャラクタが命、とよく言われます。それは2点目にあげた「物語的な起伏が小さい」とも重なるのですが、個人的理解としては十人十色なキャラクタの性格/言動から生じる「濃度差」から「物語的なもの」が浮かび上がってくるからだと考えています。「物語的なもの」が立ち上がってくることで、初めてエンタテイメントとして受容できるのだと考えられます。それはある意味においてはものすごくリアルな物語の作り方だとすら思います。*8

 しかし実作品を思い浮かべると、意外と過剰に際立ったキャラクタばかりではないことが分かると思います。しかしながら、そのような中でも複数いるキャラクタ間では差異化が図られています。もちろんそこには「描き分け」という作品制作上逃れることのできない物理的制約もあるし、幅広い層のファンを獲得すると言う経営的/商業的制約もあるのですが(笑)。ただそれらに加え、作品が作品たるための「駆動力」として個々のキャラクタの「存在」自体が求められているのだと考えられます。

「意味」は自分で考えろ!

 さらに萌え4コマは「オチがない」のに楽しく読めてしまいます。この現象は奥が深くて、本当にオチがない(=作者が意図していない)こともあると思います。しかし読者は「4コマまんがは4コマ目でオチる」と信じていますので、4コマ目でオチがないように感じても、なんとか自分の頭で考えて「オチ」を見つけようとします。言ってみれば「考えオチ」の究極のようなものです(笑)。4コマまんがという形式が持っているアフォーダンス的な読者への働きかけのあらわれです。

 さらにはキャラクタの微細な表情から描かれていない関係性を敏感に読み取る読者も少なくありません。その多くは百合関係だったりと、ほとんど妄想に近い深い読みなのですが(笑)。普通のエンタテイメントコンテンツでも同様の行為は行われ、ある種のファン行為として認知はされていますが、表面的な物語が見えにくい萌え4コマであるからこそ、よりそのような欲望が喚起されやすいのではないかと思います。
 ぶっちゃけた書き方をすると、(表面的な)物語なき世界に美少女2人いれば、少し翳った表情を見せるだけで、そこから百合関係を読み込めるということですね。あるある(笑)。

受動的なんだけど能動的なTwitter

 上述してきたようにTwitterにおいては能動的な側面と受動的な側面があります。勝手に他人のPOSTが並び自動更新されていくというTwitterの受動性はかなりのものですが、一方でその読解においては能動的な振る舞いが要求されています。換言すれば「Twitter遊ぶ」のではなく、「Twitteer遊ぶ」ということです。そしてその構造は萌え4コマの構造と類似点がある、と。
 どう?Twitter萌え4コマって似てるでしょ?(笑)


※参考文献:美水かがみらき☆すた』(角川書店

追伸:本エントリを読んでTwitterを始めようと思った方へ。確かに参入障壁は高いと思います。どうすれば分からないひとは、新規登録したら自分@noir_kをFollowしてください。そしてその周辺をもろもろFollowしていくと面白いと思いますよ(笑)。

*1:今ではもう説明の必要はありませんね(笑)。そもそも自分が始めた1年半前においても、はてな界的にはすでにTwitterはありふれたものになっており(以下略)。

*2:これについては、本当の意味でのアクティブユーザ数について考えるとわかるような気がします。詳細は省きますが、Twitterユーザ内には温度差に非常に大きな偏りがあるように思えます。1000人近くをFollowしていても、いつも見たことのあるような顔しか並んでいないという経験的事実が個人的な感覚としては非常に大きいです。

*3:Protectedという許可したユーザにしか発言を見せない設定や、特定のユーザにのみ発言を見せないBlockという設定も存在します。

*4:他の項目の補足でも書いていますが、リアルタイム性ゆえに「調子に乗ると」ボロが出やすいメディアでもあります(笑)。

*5:しかもアニメ風なアイコンとか多いんだよなぁ(笑)。一方では実写アイコンなぞというムーブメントもあるのですが。

*6:「簡単に」という側面が強いです。本気で深層までの偽装を行おうと思ったら、リアルタイム性を持ち合わすがゆえボロが出やすいTwitterよりも、サイト運営等の方が適切かと思います。なぜ偽装したいのかは分かりませんが(笑)

*7:空気系/日常系4コマ。あるいはそれに類するまんが/アニメを入れても良いかもしれません。想定する具体例は『あずまんが大王』、『らき☆すた』、『ひだまりスケッチ』、『けいおん!』、『苺ましまろ』あたり。

*8:ちなみに「物語の起伏」を「少ない」ではなく「小さい」と表したのは、そのあたりを含意させています。萌え4コマを「物語がない」というのは、要するに「(大きな)物語がない」だけで、本当の意味で「物語がない」とすれば、エンタテイメント作品として受容できるわけがないと個人的には考えています。