時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「笑え笑え。頑張れ頑張れ。それは私に言う言葉」


難病にかかり、日に日に運動機能が衰え、目もよく見えず、会話能力も無くなって、最後の数年は寝たきりになってしまった人に、私はいつも「もう自分では何もできないと思っているかもしれないけど、あなたの笑顔は全ての人を幸せにする力があるよ。だから笑って。微笑んで。」と手紙を書き続けていました。
ずっと側にいて手を握ってあげることも、時々は会いに行って声をかけることさえ出来なかったくせに、それは本当はとても残酷な言葉だったのかもしれません。微笑めないほどの悲しみや苦しみや辛さ。本人ではない私に、その絶望感は分かりっこないのです。
人と接するのが 苦手な私は、冗談も言えず人を笑わせることも下手です。それでも会いに行けた時は何とか笑って欲しくて、面白い話題をいつも探していました。
食べ過ぎてお腹を壊して電車で冷や汗タラタラの話をした時、クスッと笑ってくれた事があって、嬉しくて涙が出ました。元気な時には一杯笑いあったけど、今何時も思い出すのは、その時の笑顔です。
頑張れって、言ってはいけない。人を追い込んでしまうと言われます。でも私は頑張れって言う言葉は好きです。だって、本当に頑張っている人には、頑張れなんて言えないし思いもしません。まだ出来るよ、まだ力はあるんだよ、だから頑張ろうよ。と言いたいのです。でもそれは本当は、私は一人では駄目だから一緒に頑張って、私を支えてと、言っているのです。
悔しいことや腹立たしいこと、うんざりしたり呆れたり、辛いことも悲しいことも沢山あるけれど、それは私がここで生きて暮らして人と関わりあえるから感じることが出来る、ある意味とても貴重な思いなのです。
私は人に、特に身近な人に、安らぎよりも不愉快や苛立ちを与えてしまうようです。私といて、文句を言うよりも笑ってもらえるには、自分が笑わなければいけなかったのです。笑う事は実はとても苦手で難しいけれど、どんな時にも頑張れ。笑え。微笑め。そう自分に言い続けていこうと思います。

大雪で押しつぶされた木が、倒れたままでも上を向き始めました。
例年より遅れたけれど、猫柳の蕾が膨らみ始めました。
水仙ジャーマンアイリスも凍った土から芽を出しています。
アカゲラの声が時々聞こえる様になりました。
みんな前へ進んでいます。春の気配を感じます。


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