時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

楽しかった。エルボルソンの書き初め

ここ数日快晴で日中は30度近くになります。でも早朝は5度近くまで気温が下がり、寒くて午前中ストーブを焚く日もあります。
日本の様に湿気がないので30度になっても、日陰や室内では涼しく感じます。

私が移住した25年前は、エルボルソンに日本人は4人、日系人は子供も含め6人程でした。それが今では日本生まれの日本人は6人、おじいさんが日本人とか、ひいお婆さんが日本人とかの日系人まで含めると50人近くになりました。
日系人で日本語を話す人は殆どいませんが、それでもみんな日本人をとても意識していて、日本の文化や習慣を子供たちに伝えていこう、アルゼンチン人に紹介しようと日本人会を作ろうという話が持ち上がりました。
年末に初めての集会があり、その時は発起人家族と僅かな人しか集まりませんでしたが、連絡網やFBを作って呼びかけたら、新年早々の集会には30人以上の人が集まりました。
私は長くここに住んでいますが、正直言ってこんなにたくさんの日系人がいることに驚きました。第1回集会で、新年の第2回集会では何か日本的な事をやろうという事になり、私が書き初めをする事になりました。
日系人だけでなく、日本に興味がある人も参加してくれました。寿司やおにぎり、串カツなどのご馳走も持ち寄り、和気あいあいの集会になりました。
役員選考、今後の活動などの話し合いを書き初めと並行して行ったので、書き初めに参加出来たのはそれを目的に参加したアルゼンチン人や子供達だけでしたが、私の持っている筆、硯がフル活動でした。墨を擦るのが間に合わず、一本だけ持っていた墨汁を水で薄めて使いました。
習字紙は貴重なので、最後に1人3枚だけ清書をしてもらって、あとはこちらで売っているわら半紙を切って練習用としました。
ただ、日本語を知らない、ましてやひらがなも漢字も分からない人に習字を僅かな時間で理解してもらう事は至難の技です。筆の持ち方、姿勢だけは説明しましたが、筆運びの練習は初めっから諦めました。
書き初めという事で、新年の抱負を書いてもらおうとしましたが、抱負の意味が理解できずに戸惑ってしまい、今年の夢、希望を聞いてもピンと来ない様で、結局「平和」「愛」「健康」などの言葉になりました。
筆運びを説明するのは無理なので、私が手を持って一緒に書いて、感覚を覚えて貰おうと、
「力を抜いて、一緒に書いてみましょう」と言うのに、私の手に抵抗するかの様に、ぐいぐい勝手に進んでしまう人もいてなかなか大変でした。
会場の使用に時間制限があり、日本の習字ってこんなもんだよ、こんな道具を使うんだよ、と言う程度のことしか出来ませんでしたが、「なんて素敵なの!」「面白いわ」と、みんなが感激してくれて嬉しかったです。練習で書いた紙全てを持って帰る人もいて、少しは日本文化の紹介になったかな?と自己満足しました。
私は書道の有段者でもないし、小学校の頃、お寺の習字教室に通った程度の経験なので、本当はこんないい加減なハッタリしちゃいけないのかもしれませんが、習字を書くのは好きで家で一人で時々書いていますし、私のできる事で喜んでもらえる事があるならやっていきたいと思っています。
会の運営となると、考え方、運営方法、目的、出費 、派閥などいろんな問題が出て来てしまいますが、和気あいあいのとても楽しい出発点に今みんなが立っているので、このエネルギーを楽しんで大切にして、私に出来る事は一生懸命やろうと思っています。