ボーン・トゥ・ラン

ミュージシャンは人々に何かを口で説明することはできない。実際にやってみせるだけだ。

ブルーススプリングスティーンの自伝。御年67歳、バリバリの現役ミュージシャンの自伝は当然ながらそれはそれは長い。ニュージャージー州で生まれたひとりの少年がロックに出会い、ブルーススプリングスティーンになるまで。そして、なった後。これまで伝記とか自伝モノを読んでこなかったもので、波に乗るまではなかなか大変でしたが、バンド結成あたりからは読むのが止まらない。秋の長夜にピッタリな2冊。
事実を淡々と述べて過去を振り返っているだけのつまらない文章じゃなくって、当時の心情をとてもリアルに、時にユーモラスに描かれている。プレスリーに衝撃を受け、バンドを初めてみるも、もちろん最初はうまくいかないし、プロになれるかどうかも分からないし、、やっと人気が出てきたと思ったら、レコード会社との契約も散々でお金は無いし・・・そんなところで生活してたの?というようなハチャメチャ生活。
そこから、ヒット曲に恵まれ、人気者になった後にも(人気者になったが故?)苦労は続く・・・と、父親との確執や結婚、離婚、再婚、自身の心の闘いなど、タフなボスには想像もつかないような弱い人間らしい部分も隠すことなく書かれている。アルバム裏話やらジャケ写秘話なんかも盛りだくさん。
とくに興味深かったのはその歌詞との向き合い方。ブルーカラーの代弁者は一躍人気者のお金持ちになる。ブルーススプリングスティーンというロッカーは、その矛盾に向き合う手段として音楽を自己表現だけではなく「ファンと共に成長する」という手法を選んだ。英語はからきしダメなもので、今まで訳を意識して曲を聴いてこなかった身としては、少しづつでいいから歌詞の意味を知って行かないとなーと反省。あと、全体を通して、ブルースの人生に大きな影響を良くも悪くも与え続けた父親の存在感が大きい。Eストリートバンドに対しては完全に父親役なのがなんだか奇妙なような愉快なような。。

本当に力強い言葉が多くて、読めばこの人が支持される理由が分かる。

おれたちは移民の国に暮らしている。
今日、だれが国境を越えてくるかもわからないし、その人物の物語がアメリカ史に重要な足跡を残すかもわからない。
〜(中略)〜
前世紀と同様、これからも人々が国境を越えてどんどん流入し、貧困と差別に苦しむだろう。彼らは保守反動の圧倒的な力と闘いながらもいわば養子に出された家で冷たい扱いを受け続けるだろう。それでも彼らは強い回復力を示し、最後には勝利をおさめるはずだ。

随分と前から来日して欲しいアーティスト第1位な訳ですが、待ってるだけじゃダメかな。会いに行かないとダメかなー。

海外のファンのために演奏することは昔も今も俺の人生の中で何よりも素晴らしい経験のひとつだということだけだ。

1997年から日本に来てないんだよー!
来日祈願!