一位の人を狙うこと

「僕の番ですね。んー、じゃあ赤を攻撃します」
「うぎゃあ。なぜ!」
「だって赤がトップですから」
「次は僕ですね。えーと、赤を攻撃します〈笑)」
「ぐえー」
「じゃあ僕も赤を……、おっと、これで僕がトップですね」
「じゃあその黄色を攻撃します」
「やめてぇえ〜」
 マルチゲームという言葉があります。もともとは多人数でプレイするゲームというだけの意味だと思うんですが、最近ではマルチゲームというと、

  • ちょっと旧式の
  • 相手を選んで直接攻撃ができる
  • 主にアメリカ産のゲーム

を指すことが多いようです。で、このマルチゲームという言葉はしばしば悪い意味で使われております。冒頭の会話の例は“一位叩き”と呼ばれる現象で、つまり直接攻撃が可能なゲームにおいて、ゲーム中の各場面で、その時点でトップの人が足を引っ張られるという状況です。また、一位叩きが可能なゲームでは、それがあることを前提としたバランスになっていることが多いので、一位叩きがコンスタントに行なわれないままだと、中盤で優勢な人がそのまま勝ちきってしまうということもあります。
 これがしばしば議論の争点になります。つまり、一位の人を狙うのは必須なのか、それ以外のことをするのはよくないのか、それはプレイの自由度を奪うのではないか、などが問われるのです。ゲームによっては、プレイヤー間の直接攻撃の要素をなくすことによって、一位叩きの問題が生じないようにしていることもあります。
 しかし僕は、一位の人を狙うのはやはり正解であり、それはマナーなのではないかと思います。もっと言えば、一位叩きによってこそ、ゲームが楽しいものになるということがあると思います。直接攻撃のないゲームでは、強い人がどうしても勝つという状況が揺るがないことがあります。しかし、トップが叩かれるのであれば、雌伏している二番手、三番手にもチャンスがあります。みんなで一位を叩けるゲームでこそ、実力に差のあるメンツが楽しめるとということが言えるのではないでしょうか。
(もっとも、そんな暗黙のマナーなんか窮屈だし気持ち悪い、という意見も理解できるものです。そういう人はそういうゲームには向かないでしょう)。

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