nomuran's diary

野村直之のはてな日記(後継ブログ)です

「クロスメディア」の肝(キモ)がわかった気がしました。

本日は、JAGATさんの「クロスメディア」研究会主催セミナー
「ビジネス活用がすすむ次世代ウェブサービス Web2.0から Enterprise2.0へ セマンティック・サービスの現状と未来」
で講師を務めてまいりました。
Mextractrについて、動作原理や、内部の意味分類、機能仕様、活用事例、ROIなど、他サービスと比較して、ある程度詳細にご紹介させていただきました。

熱心に聴いてくださった皆様、そして一緒に登壇してくださった、湯本さん、亀山さん、小林さんに感謝いたします。
 
さて本題です。
XMLコンソーシアムで「クロスメディア・パブリッシング部会」が発足した直後、「クロスメディア」とは、
「紙メディア」「PC」「携帯」のうち2つ以上を使うこと、と定義され、ずぅーっとしっくりこないまま、横目で見てまいりました。
 
そこへ最近、Web広告、マーケティングの高度化を企図し、真剣に学ぶ必要に迫られて、「さとなお」さんの本「明日の広告」を読んで、正しい「クロスメディア」の定義が腑に落ちたのです。ちなみに、「明日の広告」は、「グランズウェル」に匹敵する大変な名著だと思います。ソーシャルの仕組みを広告・マーケティング方面で使いこなすべき人には、手放しでお奨めします。必読です。

さて、「クロスメディア」ですが、まず、何でないか、を認識すると、位置づけが明確になってきます。

「メディアミックス」では断じてない。
「メディアミックス」は、同じコンセプトの広告を複数媒体で適宜予算配分して同時に進めるキャンペーンのことであり、昔からありました。何の知性も戦略もない、といえます(クロスメディアに比べたら)。寧ろ、「マルチメディア」の原義(ナチス党が複数メディアを駆使して徹底的に国民を洗脳したことに端を発する)に近いといえるでしょう。違いは、限られた予算を有効に使いましょう、というクライアント企業へのメッセージが付加されている点だけかもしれません。

 ではクロスメディアとは何か。例えば、ドッグフードの広告キャンペーンをするとしましょう。
 犬が片足あげて立ち止まる間飼い主が見つめ続ける重要なメディア=電柱というものに、掴みとなるメッセージを貼り付けます。次の電柱に、素直な続きが書いてあります。
 そして、電柱上でのメッセージの終了場所にQRコードを印字し、ケータイで愛犬と似た犬が喜んでドッグフードを食べにかけよってくる動画を配信します。
 さらに、その動画を見終わったら、[商品名]検索!という画面が出て、帰宅後、商品名をPCで検索するように促します。すると、PCの画面で、競合商品と比べた、栄養分析表が詳細に表示され、いかに犬の健康に良い商品であるかの説得材料が見せられます。
 別ページで自分の住む地域での特売情報をクリックすると、近所のスーパーマーケットのサイトに移ります。そこに翌日の特売チラシのPDFがあります。それをプリントして忘れないように玄関に置いておき、スーパーに出かけて無事ドッグフードをゲットして終了。

 以上のように、メディアミックスと違って、消費者をとりまく環境(古代科学者の信じていたエーテル=メディアですね)のように一連のメッセージが複数メディアに【分担】されます。個々のメディアに込められたメッセージは互いに違うものです。しかし、クロスして連携していきます。消費者の行動を先読みし、「ここで栄養成分が心配になるかな」と心理を予測し、ぴったりの回答を、ちょうど良いタイミングで、その回答をのせるのにぴったりのメディアによって提供する。
 これがクロスメディアだったのですね。クロスメディアを超えた域に「メディア・ニュートラル」というのもあるそうです。

 「クロスメディア」研究会の講師を務め終えた数時間後に、正しい「クロスメディア」の定義を学んだ、というエピソードでした。

 「明日の広告」には、次のように大変示唆に富むメッセージが具体的な事例とともに紹介されていて、勉強になりました。

・・・どう売るか考えてはいけない、想定できた買い手のことをきちんと知ろうと目をこらし耳を澄ますこと。この商品を買いたがっている人、商品の情報を伝えてもらいたがっている人がどんな人か、考え抜くこと。F1M1なんて消費者はいない。想像したフリだけして本当に相手について考え抜き、アイディアを出して検証する前に広告イメージの落としどころなんて決めるのは論外。前世紀ならそんな乱暴で非効率なやり方も通用したかもしれないけれど、誰も普通の広告に振り向いてくれなくなった2004年以降は、伝統的な広告マンの話は何の役にもたたないどころか有害である。・・・