野村ともあき【非公式】ブログ|前堺市議会議員

野村ともあきの非公式ブログです。前堺市議会議員 公式ブログは→https://note.com/nomuratomoaki/

堺市への復興予算とがれき処理について

堺市に復興予算86億円が交付され物議をかもしています。


えっ!? がれき処理「検討」だけで復興予算約86億円 堺市 - MSN産経ニュース


世間の議論が錯綜しているようですので、この経緯について詳しくご説明しておきたいと思います。少し専門的な話になるので、説明するのがとても難しいのですが、時系列でなるべくわかりやすいように書くよう努力します。



事の発端は、東日本大震災から3ヶ月が経過した平成23年6月19日に、当時の政府民主党と環境省が被災地以外でのがれきの焼却を認めたことでした。その後、環境省は広域処理のための補正予算を何度か行い、「災害廃棄物処理事業費」は3年で1兆円という予算が付き、がれき処理は巨額の利権となりました。この予算を巡っては東電子会社が事業を請け負っているなど金の流れについて当初から不適切であるとの指摘がありましたが、全国の自治体が、住民の強い反対がありながら広域処理に手を上げました。



平成23年9月27日には、当時、橋下知事がトップを勤めていた大阪府でも広域処理について検討会が始まり、大阪でがれきを受け入れる方針が示されました。ここで問題だったのが、当時の民主党政府と環境省が「震災がれき」の量の試算を誤り、広域処理にかかる費用をかなり多く見積もっていたことです。この予算査定のずさんさが後に大きな問題となります。



ところで平成23年11月27日、いわゆる大阪ダブル選挙が行われ、橋下氏が大阪市長に、大阪府知事には松井一郎氏が就任しました。
橋下市長は全国でも最もがれき受け入れに積極的だった首長であり、その後を譲った松井知事のもと、平成24年2月16日に大阪府は24年度当初予算としてがれき広域処理の費用49億1129万9000円を発表します。その際、具体的な処理場として大阪市舞洲工場や堺市のクリーンセンター東工場の名前が上がっていました。



市を包括する地方公共団体である府が、受入の方針を固めて予算措置までしたわけですから、堺市が事業の「可否」を検討するのは当然です。
私の自宅はクリーンセンター東工場から数百メートルの場所にあり、多くの方から陳情や要望が寄せられました。そのほとんどはがれき受け入れ反対でした。これを受けて、平成24年2月28日、私は「震災がれきの広域処理について」本会議で取り上げ、市民生活を守るためにも、また被災地のためにも受入について慎重に慎重を期するよう強く要望しました。



一方、これに先立つ平成24年1月、がれきの広域処理とは全く関係なく環境省から堺市に対して平成24年度の交付税がいくら必要か照会があったそうです。
堺市は震災以前から、ごみ処理場として臨海工場の建設と東工場の基幹整備を行っており、平成24年度は交付対象事業費約86億円のうち、交付金として約40億円を通常枠で要求しました。
ところが、だぶついた復興予算をなんとか消化したい環境省は、翌2月に交付金を通常枠から復興予算に切り替えられないか内々に堺市に意向を調査してきました。堺市は復興予算ではなく通常枠予算での措置を要望したそうですが、その要望は無視され、平成24年4月12日、環境省からは復興予算として交付金40億6324万8000円が一方的に内示されました。
*1
環境省側の理由としては「環境大臣より広域処理の協力を要請しており、堺市ががれきを処理する可能性がある施設の整備事業として復旧・復興枠の対象と判断した」という説明だったようです。



平成24年5月11日、がれき受け入れの可否について調査中のまま、堺市環境省の方針に基づき交付金の交付申請を行います。
ところが、6月29日になって環境省から堺市長あてに「がれきの広域処理の目処がついたので今後受け入れの調整は行わない」という通知が来ます。ずさんな目算で想定よりがれきが少なく、広域処理の必要がなくなったというのです。*2



ここで復興予算から交付される予定だった臨海工場の建設及び東工場第二工場の基幹的改良工事のための予算が宙に浮いてしまいます。しかし、環境省は「全国にがれきの広域処理を促す効果があった」というよくわからない理由で、10月付けでそのまま交付金の交付決定をしました。
これが今回、問題にされている復興予算です。



さて、長くなりましたが、どうお感じでしょうか?



確かに、復興予算として内示があった際に堺市が通常枠での交付要望を押し通さなかったのは失態だったかもしれません。しかし、状況的に見ればがれき受入の可否の結果も出ていない中、国の方針に対して異を唱えることは難しかっただろうと推察します。むしろ、ずさんな復興予算を見積もった環境省と、住民の反対を押し切って受け入れなくてもいいがれき受入を決めた大阪府に、堺市が翻弄されたというのが実情です。
他方で、チェックしきれなかった堺市議会にも責任の一端はあるでしょう。この点については我々も反省しなければなりません。



一部で、維新の議員さんがこの件について熱心に批判をしているようですが、少なくとも、この混乱の原因を作った維新の議員さんは、議会の一員として反省することはあっても、批判する立場にはありません。そこは強く指摘しておきたいと思います。



「復興予算は被災地のために」という心情は痛いほどわかりますが、今回、堺市特別交付税として措置された予算を国に返上したり義捐金として被災地に送ったりすることは地方財政法等に違反することとなり不可能です。
ずさんに計上された復興予算はいまだに余っており、平成25年度予算に繰り越されるようです。
私としては、政権が交代した今、国政における政府・自民党の国会議員さんに対し、残された復興予算が真に被災地のためになるよう使われることを要望していく限りです。

*1:細かくなりますが、総事業費107億円のうちの交付対象事業費が約86億円で、通常枠として交付金約40億円が交付された場合、差額の約46億円に対し約42億円は起債(借入金)でまかない、約4億円を堺市一般財源で支出し、地方負担分の起債額約42億円の2分の1、すなわち約21億円は後年度に地方交付税として措置される仕組みです。議会で問題視されたのは、堺市一般財源からの負担分4億円と残りの起債される約21億円も復興予算を財源とする特別交付税で全額措置されるのはおかしいという点です。このあたり報道とは数字が異なりますが、私の挙げた数字が正しいものです。

*2:先月(平成25年2月)の報道によると、がれきの量は当初の6分の1にまで激減し、今月3月には広域処理はほぼ終わるということです。