伊東の民話    ごろすけ ふくろう        (鎌田)

  ホーホーホー。
    夜になると森でふくろうが鳴きます。
   ホーホーホー。
      淋しくて、悲しい鳴き声です。

 昔、鎌田村にごろすけと言う若者がたった一人で住んでいました。
おっとうとおっかあは、ごろすけが小さい時、はやり病で死んでしまいました。その後はばあちゃんに育てられました。
そのばあちゃんも、ごろすけが十五の時に亡くなりました。
十五からのごろすけは村の名主さんの所で働いて暮らすようになりましたが、どういう訳か仕事が遅く仲間からはからかわれたり、虐められたりしていました。
しかしごろすけはどんなに遅くなっても言付けられた仕事は必ずきちんと終らせていました。そんなこともあって、名主の一人娘の千代は何かとごろすけを庇ってくれていました。
それが返って仲間の反感を買い、ますます酷い虐めにあうのでした。
 ある日、朝から仲間と一緒に馬場の平に萱を刈に行くことになりました。ごろすけは一生懸命萱を刈るのですが、仲間よりどうしても少ないので昼の握飯もろくに食わず働きました。
やっと仲間と同じぐらいに刈れたので一休みしている時の事です。
仲間の一人がごろすけの鎌を隠してしまったのです。
又、萱を刈ろうと思ったごろすけは、鎌が無くなっているのに気づき彼方此方捜したのですが見つかりません。とうとう見つからずじまいでした。
 夕方になると仲間はごろすけを残し、さっさと帰ってしまいました。
どんどん暗くなり、とうとう三日月が出るまでになりましたが鎌を見つける事が出来ず、萱を刈ることも出来ませんでした。
途方にくれたごろすけは、思い余ってとうとう山の天辺から谷に飛び降り、自ら命を絶ってしまったのです。
 
 哀れに思われた観音様は、ごろすけの魂を小さなふくろうの身体に移されました。

 暗くなると森の中でふくろうが悲しそうに鳴くのには、そんな訳が有ったからです。
”ホーホーホー ごろすけホー”と鳴いているのは「ごろすけふくろう」なのです。              お し ま い