Hatena::ブログ(Diary)

! nopi’s talk このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

■profile■ [writer] [archive] [other PAGE]
■category■ [ゲーム] [非電源] [メタルフィギュア] [購入] [診断] [書籍] [日常] [感想] [tours]

2016-05-17

[]skyrimリプレイスカイリム異聞手記〜その10”竜の血脈10

f:id:nopi:20160207211602j:image

扉を開けると、涼しい風と鮮やかな朝日が飛び込んできた。クリーム色に染まる広葉樹の葉の上で光が踊り、眼前にそびえ立つハイフロスガーは陽光を受けて銀色に光り輝いている。

紅葉に色付くイヴァルシュタッドは、予想だにしなかった光景を、わたしに見せてくれた。イヴァルシュタッド自体は、リバーウッドを彷彿とさせるスカイリム典型的地方都市だ。基礎のみ石造りの木造の家々が立ち並び、人々は林業農業に就いている。イヴァルシュタッドはハイフロスガーの入り口ということもあり、宿屋は大型で、イヴァルシュタッド内外の人々でにぎわっていた。

ここで少し、スカイリム地方宿屋について記す。

リバーウッド、ホワイトラン、そしてイヴァルシュタッドと巡ってきたが、スカイリム地方宿屋は非常に似通った点が多い。そのひとつに、宿屋の中心となるホールには、非常に巨大な囲炉裏が設えられている点が挙げられる。囲炉裏の大きさは大人用のベッドが、二つ三つ入ってしまうほど大きく、基礎と一体化した頑丈な石造りとなっている。囲炉裏では、巨大な鍋に入ったスープが温められ、あるいは鉄杭に差したシカ肉、キジ肉が炙られている。囲炉裏を取り囲むようにして、テーブル椅子は配置されている。たいていの囲炉裏ホールの中心に設えられているため、宿屋全体を隈無く暖めることができる。

いうまでもないが、スカイリムはどこに行っても寒い。そんな寒さの中を旅してきたわたしたちにとって、この囲炉裏がどう映るのか、想像に難くはないだろう。スカイリム地方における宿屋役割は、まずはこの囲炉裏なのだ

グレイビヤードに呼ばれたイブンは、一路ハイフロスガーに向かっていた。大陸一高い山である世界のノドを冠するハイフロスガー山系は、スカイリム地方のほぼ真ん中に位置している。絶壁を抱く西、および北斜面、そしてジェラード山脈に連なる南斜面には、いずれも登山経路は無い。唯一、東斜面のみがハイフロスガーに登るルート確立されている。そのルートハイフロスガーの七千階段と呼ばれる過酷ルートだ。

一歩進むごとに息が切れる。視界の縁は白く塞がれ、意識の汚濁も感じる。疲労だけが原因ではなさそうだ。ハイフロスガーの高所には、なにかわたしたちを拒絶する力が働いているようにもおもえる。膝に手を突き、息を整える。

リディアは、わたしより少しマシな程度で、やはり原因不明の疲労感に襲われているようだった。少し前までは、歩みの遅いわたしを先導するかのように先行していたリディアは、しかしいつの間にかわたしたちの歩幅はほぼ同じとなり、いまでは私と同じように、一歩進む度に深い息を付いている。

辺りは雪と空しかなかった。降雪こそ多く思えたが、積雪はそれほどでもない。風が強く、降り積もる前に吹き飛ばされてしまうのだ。積雪の少なさによる足元の確かさには救われたが、時折吹く突風は、雪だけではなくわたしたちをも吹き飛ばしそうな勢いがあった。姿勢を低くしつつ、一歩、また一歩と進んでゆく。

七千階段

ハイフロスガー山頂に至る長大山道を、スカイリムの人々はそう呼ぶ。実際に階段はある。だがそれは、かろうじて階段の原型をとどめた石の連なりにすぎなかった。記憶言葉も届かぬ古に築かれ、この荒れ狂う気候のなか、数千年に及ぶ歴史を刻んできた階段だ。それは階段としての機能はほぼ失われ、ハイフロスガーへの道しるべとしてのみ、存在していた。

階段にそって、山道は急激な起伏を伴って続いていた。世界のノドを、幾重にも取り巻き、遥かなる高みを目指すこの世でもっとも長い階段

やがて階段は回廊に変わった。回廊の果てに、黒い建物が見える。私たちの足取りに力が戻る。

崖に沿って広がる雪の道を歩いて行くと、建物輪郭がはっきりしてきた。

黒い石で出来たレンガを積み上げた、直線を多様した重厚な印象を与える建物だった。中央の四角い塔を最長とし、両脇に長く連なる構造になっている。

ハイフロスガー。声の道の実践者たる賢者グレイビアードたちが、世俗を離れて修行に勤しむ施設だ。

黒い塔の手前には巡礼者たち向けの祭壇があった。祭壇にはいくつもの捧げ物があった。私たち巡礼者ではないし、そもそも呼んだのはグレイビアードたちだった。

私たちは塔の脇にある扉をあけ、ハイフロスガーに入っていった。

建物の中は、薄暗く、そして静かだった。石造りの回廊を進んでいくと、やがて広間に出た。広間には黒いローブを着た男たちがいた。男たちは目深にフードを被っており表情は窺えないが、突然のわたしの来訪に驚いた様子はない。男たちの中のひとりが歩みでて、言った。

「よくぞ参られた、ドラゴンボーン

男はアーンゲールと名乗った。フードから覗く顔は髭に覆われている。グレイビアードたちのまとめ役だが、リーダーというわけではなさそうだ。

グレイビアードたちは私の叫びを聞いたといった。叫びとは?という私の問いに、アーンゲールはそれはシャウトである、と答えた。

シャウトこそが、彼らが実践する声の道の中核を為すものだ。適切な呼吸法発声により、大気に満ちるキナレスの力を現顕せしめるという。

ドラゴンの咆哮を聞いたことがあるだろう。あれこそがシャウトだ。ドラゴンの吐く炎の息も、彼らの天を駆る翼が発する揚力も、すべてはシャウトの力だ」

魔法みたいなもの、ということでしょうか?」

「この世への現れ方は。だが、魔法はこのニルンの外なる力の現れであるのに対し、シャウトはこの世界そのものの力の現れだ。我らはシャウトを通じて、この世界、すなわち母なるキナレスとの合一を果たすべく、修行を続けている」

わたしは頭を振った。

あなた方の哲学について理解したいと思いますが、ですがなぜ、わたしが呼ばれたのか。その肝心な点についてまず、説明をお願いしたい」

アーンゲールは穏やか答えた。

「今説明したとおりだ、ドラゴンボーン。シャウトとドラゴンは深いつながりをもっている。そしてドラゴンボーンは、シャウトを使えるが故、ドラゴンボーン足りうる」

グレイビアードたちは、シャウトの習得のためにその人生を捧げている。だが、ドラゴンボーンは違う。竜の言葉であるシャウトを、殆ど修練なしで習得する事ができると、グレイビアードたちは言う。その基礎を、イブンはこの場で習得したと思われる。その時のことを綴ったとみられる一節がある。

「ファス!」

わたし叫びがもたらした空気の揺らめきは、シャウトの力の発現ではとうていなく、それは鼻息にすぎなかった。わたしは頭を振る。

「アーンゲール、まるで要領得ません。そして声の力で物を動かすなど、とうてい想像できません」

「声は力だ。それはお前こそが知っているのではないか異邦人イブン。おまえは声の力で、スカイリムハンマーフェルのの友好を果たしにやってきたといっていたではないか

「それは詭弁ではないでしょうか、アーンゲール。私がいう声とは言葉であり、言葉の力意味を知る者同士の間に作用するものです」

アーンゲールは予想に反して大きく頷く。

「その通りだイブン。つまりお前はドラゴン言葉を知らなければならない。ドラゴン言葉意味を知らなければならない。その言葉意味の持つ力は、この世界作用する」

世界に、言い聞かせる。世界を、説得する。

わたし深呼吸した。

わたし意志言葉に代え、声として世界に解き放つ。我が意志を、我が声を、聞けよ世界

「ファス!」

声は青白い衝撃波となり、アーンゲールを襲った。アーンゲールはよろめき、柱に手をついた。わたしは慌ててアーンゲールの元に駆け寄った。わたし差しのばした手を取るアーンゲールは、しかし微笑んでいた。

「そうだ、イブン。それでいい。いまのスォームが“揺るぎなき力”だ」

2016-02-25

[]skyrimリプレイスカイリム異聞手記〜その9”竜の血脈9”

f:id:nopi:20160207211602j:image

舗装された石畳の道が、農村地帯をうねりながら続いていた。農村地帯は色彩にこそ乏しかったが、その畑には豊かな実りが数多く生っているのが見て取れた。四方山脈に囲まれたホワイトラン盆地は極めて乾燥しており、おおよそ農業には向かない土地だ。そのなかにあってホワイトラン周辺のこの一帯は、ホワイト川の灌漑により相当な生産力を持つ農園となっていた。交易の中心地という表の顔から想像も付かないホワイトランの隠された一面を垣間見た気分だった。

道はやがて農村地帯を抜け、ホワイト川に掛かる石造りの橋に出た。リバーウッドからホワイトランにくる途中で見かけた橋だ。橋はホワイト川の東岸に続いている。馬車のすれ違いも可能なほど大きく頑丈な、帝国様式石橋だ。

橋を渡ると道は北に転じた。左手ホワイト川を、右手ハイフロスガーの絶壁を見ながら緩やかな上り坂をすすむと、しばらくして絶壁は切り立った山へ、そして急峻な丘陵へとかわっていった。

リディアは、道を外れない方が良いと言う。

「近くに山賊のねぐらがあるらしいんです、従士どの。いくつかの商隊や旅人たちが襲われています」

首長バルグルーフも言っていたな。商隊護衛に衛士をとられていると。ねぐらを抑えるわけにはいかないのか?」

「巧みに隠されているんです。ねぐらを探している手間で、また別の商隊が襲われています。いたちごっこですよ」

第四紀201年、スカイリム治安は確実に悪化していた。大戦による人員不足に加え、高まる内乱の予感に全ての要塞は通常兵力を増加させていた。勢い、治安能力は低下していた。ホワイトラン方面に限っていえば、帝国の主要な拠点の一つであるヘルゲン要塞の陥落が、治安悪化の大きな要因となっていた。

そんな、乱れ始めたスカイリム地方に、イブンは旅立っていった。ホワイトラン衛士リディアを連れて。

いくつかの功績により、ホワイトラン従士に任命されたイブンは、従者としてリディアを率いることを許された。ホワイトランの記録では、確かにこの年、何十年かぶりに従士の任命が行われている。だがそこにはイブンの名はない。

しかし、ホワイトラン衛士リディアという人物は実在確認されている。若くしてホワイトラン衛士となり、十年以上に渡ってその職務を全うしたのち、従者としてホワイトラン従士に仕えたという記録が残されている。リディアは当代のホワイトラン衛士のなかでも最高の手練れの一人であり、剣も弓も盾も、すべてをバランスよく扱えたのことだ。身を守る術に欠いていたイブンにとって、これほど力強い味方はいなかったことだろう。

バルグルーフによるイブンの従士の任命、及び従者リディアについては、諸説ある。もっとも有名なものは、ドラゴンボールのお目付役だ。

イブンが、本当にドラゴンボーンであった場合、その存在スカイリムにとって、二重に三重意味を持つことになる。ドラゴンボーンの本当の仕事である竜殺しは、ただの害獣退治で終わることは無い。古来より予言された英雄が帰還し、同じく古来よりの宿敵である竜を退治するのだ。それも、このスカイリムの乱れた時代にあって。バルグルーフは、ドラゴンボーンが持つ政治的危険性についていち早く見抜き、先手を打ったのだ、とする説である。だが、イブンの手記で描かれる、ドラゴンボーンのお目付役であるリディアは、そのようなそぶりを見せることはない。バルグルーフへの定期的な連絡も、あるいは旅先からホワイトランに戻った時であってさえ、連絡をとっている形跡はない。無論、彼女自身政治的に立ち回っている様子もない。ただひたすらに、従者として従士の剣となり盾となり、イブンを守り続けている。

道は右手、すなわち東側へと大きく曲がった。左手眼下に見えるホワイト川は、ずいぶんと下方にある。ハイフロスガーの北斜面は、急峻な西のそれと異なり、ずいぶんと緩やかに見えた。リディアによれば、その丘陵地帯も途中までのことで、その先は登る事が出来ない絶壁に通じているという。

「大回りになりますが、結局はイヴァルシュタッドへ行くのが、一番の近道なんです。ハイフロスガーの入り口イヴァルシュタッド。これは間違いのないことです」

わたしたちはイヴァルシュタッドを目指していた。ハイフロスガーに登るためだ。ホワイトランからイヴァルシュタッドへの道は二種類。途中を遮るハイフロスガー山系を、北から回るのか、南から回るのかの違いだ。南側ルートは壊滅したヘルゲン要塞を経由することになる。ヘルゲンがどうなったのか気になるところではあるが、北側ルートを選ぶことにした。北側ルートは途中までホワイト川に沿って進むことになる。ブラックウォーター川との分岐まで来たら、今度はブラックウォーター川の遡行になる。ハイフロスガーを半周する、長いルートだ。

ブラックウォーター川との分岐あたりまでくると、もはやホワイトラン盆地乾燥した気候はなりを潜め、鬱蒼と生い茂った緑に取って代わった。豊かな水源とハイフロスガーによって遮られて籠もった空気が、豊かな植生を育てていた。それはわたしハンマーフェルから初めてスカイリム地方に入ったときにみた、ファルクリース地方の植生とは些か異なっていた。ファルクリースの緑は、乾いた高原のそれだったが、ハイフロスガー北面の植生は、もっと湿度を持った生々しいそれだった。

道は大きく南に転じた。このあたりの道に勾配はなく、二つの斜面の間を蛇行しながら流れる川に沿って続いていた。

豊かな植生は、わたしにかつて手慰み程度に嗜んだ錬金術への興味を再び起こしていた。旅が長引くようであれば薬は必要となってくるだろう。再び学んでみるのもいいのかもしれない。

わたしのそんな取り留めのない思考は、突然の轟音と共に遮られた。リディアが素早く鯉口を切るのがみえたが、わたしは叫んだ。

「にげろ!」

聞き間違えようがない。その轟音は、ドラゴンの咆哮だった。

かくして、スカイリム全土に渡って、ドラゴン跋扈する恐怖の時代が再び訪れた。ドラゴンは神出鬼没であった。道を、砦を、時にはホワイトランやソリチュードの街中にいたるまで、どこにでも現れ、破壊殺戮の限りを尽くした。むろん街道といえども例外ではない。

我々が血の代償をもって学んだ事柄として、ドラゴンとの戦いにおいて、逃げ場のない場所、すなわち谷間などの狭隘な地形は避けるべき、ということがある。ドラゴンの本当の恐ろしさは、そのブレスではない。ハヤブサの機動性とカワセミ運動性を併せ持つ、その飛翔能力にある。この飛翔能力とブレスの組み合わせこそが、ドラゴンの本当の恐ろしさである

わたしたちは倒れ込むようにして道の脇の木立に逃げ込んだ。ドラゴンの炎が石畳を舐めたのはその直後だった。火は瞬く間に木立にも引火した。わたしたちは火から逃れるように木立の中を駆け出した。足場も視界も悪いが、逆に言えばドラゴンからも見えにくいということでもある。街道に出れば一瞬で焼かれてしまうだろう。

「従士どの!!」

リディアが指差す方向に、山の斜面を登る石の階段があるのが見えた。階段の先はは曲がりくねって視界からは見えない。それでも、あの階段を登ればある程度の高度は稼げるだろう。飛翔するドラゴンと戦うためには高さが必要だ。

わたしたちは木立を飛び出し、石の階段を駆け上った。急な階段だった。あっという間に息が切れる。視界の隅にドラゴンの黒い影が過ぎる。焼かれる、そう思うと同時にわたしは炎に包まれていた。

ドラゴンが飛去るのが見える。しかし、わたし燃えていなかった。リディアだ。盾を構えたリディアが、わたしドラゴンの間に割って入ったのだ。ドラゴンの炎はリディアの盾と、盾によって隠れきれなかった手足を酷く焼いていた。わたしの体の奥底が熱く燃える。全身に力が漲ってくるのを感じる。わたしは、まだ焼けくすぶるリディアを抱えると、階段を駆け上っていった。

アリクル砂漠に住むレッドガードたちは、その過酷な生活環境を生き抜くため、奇妙な特性を発達させているという。曰わく、一時的にその体力を爆発的に解放させるというものだ。それによってかれらは常時からは考えられない底力を発揮するという。この場においてイブンが発揮したのも、そういった力だったのかもしれない。

リディアを抱き抱えたまま、石造りの門をくぐる。その直後に、炎は襲ってきた。炎は遺跡の周囲の草むらを焼き、遺跡そのものをも舐めた。だが遺跡は、それすら耐え抜いた。

わたしリディア遺跡の奥まで引きずり、回復魔法を唱えた。回復魔法宮廷の児戯めいた遊びで会得していたものだが、スカイリムでは生死を分けるほどに重要だ。ドラゴンが降下してくるまで、それほど間はない。

「・・・カイネにかけて・・・!」

予想外の声に、わたし魔法が中断されかかる。わたしたちが逃げ込んだ遺跡に、わたしたち以外の誰かがいた。それはノルドの男だった。男は使い込まれた皮鎧を纏い、身の丈ほどもある長剣を背負っている。山賊らしい格好だが、山賊ほどの不衛生さはない。男は突然の来訪者であるわたしたちと、そしてもちろん、ドラゴンの出現に驚いているようだった。

男のその様子を見て、わたしはこの男が山賊ではないと確信した。すくなくとも、わたしたちやドラゴンの正体を掴んでから対応を決めようとしている。わたしは手短に顛末説明した。

「話は判った。おれはゴルディール。見てのとおり、剣と盾なら扱える。あれを倒すんだな?」

「そうだ。この高度なら、弓も十二分に届く。わたしリディアドラゴンを落とすので、トドメを頼む」

このエピソードには、じつは後日談があるらしい。このエピソード場所について、前後の行程よりおそらくヒルグラントの墓あたりだろうと推測されている。ヒルグラント家には、ゴルディールという青年が残した手記が伝わっている。その手記によると、彼が先祖霊廟を奪い返すために墓に行ったところ、旅人ドラゴンに遭遇したという。彼は旅人と共にドラゴンを討伐し、意気投合してヒルグラントの墓にまで同行したという。この手記の真実性については、いまだ検証されていないが、イブンの記述との一致性については、十分に留意必要だ。

2016-02-11

[]skyrimリプレイスカイリム異聞手記〜その8”竜の血脈8”

f:id:nopi:20160207211603j:image


「おまえはグレイビヤードに呼ばれたのだ、ドラゴンボーン

わたしにそう言うバルグルーフの表情は、どこか楽しげですらあった。この状況を楽しんでいる、というべきか。

だがわたしにとっては、楽しむべき状況とは大凡言い難かった。イリレスらと共に、西の監視塔に襲来したドラゴンを討伐したわたしは、奇妙な現象に出くわした。死んだドラゴン燃え上がり、光となってわたしに吸い込まれていったのだ。むろん、わたし自身には何ら変化はない。だが、わたしをみる皆の目が、すべて変わってしまった。時を同じくしてハイフロスガーの高みから発せられた轟きもまた、この現象無関係であるとは思われなかった。

イリレスの進言に従い、わたしホワイトランに戻り、ホワイトラン首長バルグルーフにすべてを報告した。そして先の言葉となる。

首長バルグルーフ、わたしには何がどうなっているのか分かりません。わたし記憶が正しければ、ドラゴンボーンとは、帝室の血統を指し示す言葉であったはず」

「それは寛容例としてのドラゴンボーン、狭い意味としてのドラゴンボーンだ、異邦人イブンよ。ドラゴンボーンの真の意味はこうだ」

神祖アレッシアが、最高神であり竜の化身であるアカトシュと契約を結んだが故に、帝室の血統ドラゴンボーンと呼ぶが、ドラゴンボーンそのものが、アレッシアに連なる者だとは限らない。なぜならば、我々が知る最も偉大なドラゴンボーンであるマン一世も、タイバー・セプティムも、共にアレッシアの血統ではないからだ。故に、ドラゴンボーンとはアカトシュに選ばれた者を指す名である

「ですが、しかし、首長バルグルーフ、わたしは、・・・」

わたしは完全に混乱していた。首長を前に、礼すらも失していた。それでも首長バルグルーフは、穏やかに頷きながら答えてくれた。物わかりの悪い子供を、諭すように。

異邦人イブン、わたしがお前をドラゴンボーンと呼ぶ理由は2つだ。ひとつは、お前とイリレスの双方から報告された、死せるドラゴンの発火現象だ。この現象が何を指し示すものなのか、具体的なところはわたしにも解らない。だが、お前とドラゴンの、深い交わりを暗示しているように感じる」

あの場に居合わせたのは、わたしやイリレスをふくめ、十人以上にのぼる。その中で、あえてわたしだけに、光は集まってきた。

「もう一つが決め手だ、ドラゴンボーンよ。ハイフロスガーのグレイビヤードたちが、お前を呼ぶ声が轟いた」

バルグルーフは語った。スカイリムの中心、世界のノドを冠するハイフロスガーには、グレイビヤードと呼ばれる賢人たちが住んでいる。彼らはノルド古来の思想である“声の道”の実践である。ユルゲン・ウィンドコーラーによって始められた声の道は、元は八大神の一人であるキナレス信仰の一派であり、今なおノルドたちの静かな尊敬を集める存在なのだという。

先のハイフロスガーから轟いた声こそ、彼らの“シャウト”そのものであり、その声はわたし呼ぶものであった、とバルグルーフは言った。

「グレイビヤードたちはドラゴンボーンを呼ぶのだ。彼らの声の道は、父なるアカトシュの荒ぶる竜神の力を、母なるキナレス瞑想により御する業だ。それは竜の血と人の血を併せ持つドラゴンボーンそのものだと言っていい。歴代のドラゴンボーンたちは例外なくシャウトを扱えたという。おまえもまた、ドラゴンボーンとしてハイフロスガーの七千階段を登るのだ」

わたしの混乱は増すばかりだったが、それでも首長バルグルーフの言葉と知恵はわたしを落ち着かせるのに充分な効果があった。声の道、シャウト、グレイビヤードドラゴンボーンに関するバルグルーフの造詣の深さは学者のそれに匹敵するといってもよかった。

「なぜわたしがグレイビヤードについて詳しく知っているのかというとだな、異邦人イブン」

バルグルーフは悪戯っぽく笑って言った。

わたしもまた、ハイフロスガーに登った事があるのだよ!」

ホワイトラン首長バルグルーフがハイフロスガーの七千階段を登ったことは、当時としてはそれなりに有名なエピソードだった。イブンが記す内容も、極めて正しい。ただし、イブンがドラゴンボーンであった、という点を除いて。

今なお我々は、竜との戦いの中心人物となったドラゴンボーンその人について、なんら正確な情報確認出来ずにいる。イブンの手記を始め、ドラゴンボーン言及している書物は枚挙に暇がない。だがその実像は、全くつかむことが出来ない。

当時のスカイリムは、内戦前夜だったとはいえ、帝国のお手本とも言うべき法治統制がとれており、例えばホワイトランやソリチュードなどの大都会であれば、街の浮浪者にいたるまで戸籍が残っている。それらの情報の中に、ドラゴンボーンその人と一致しそうな人物を、歴史家はいまだ見出すことは出来ていない。その点からも、ドラゴンボーン異邦人説は極めて説得力があるものだ。だがそれは、故にイブンはドラゴンボーンである、という意味ではない。現に、当時のホワイトラン資料検討すると、この時期にバルグルーフがドラゴンボーンを見いだしたという記述は一切見られない。

「さて異邦人イブン、このたびの働き、見事であったぞ」

「有り難き賞賛に御座います、陛下。ですが、わたし戦士ではございません。実際の戦いは、イリレス将軍とその配下ホワイトラン衛士たちによるもの。彼らにこそ最大の恩寵を賜らんことを」

「むろんだイブン。そして彼らへの報酬とおまえへの報酬は別だ。なぜならば、おまえだけがホワイトランを守る誓いもないなか、それでもその身を挺してホワイトランを守ってくれたのだからな」

わたし自身不思議気持ちだった。なぜ、戦士でもないわたしが、ドラウグル溢れる古代遺跡潜ったり、ドラゴンと戦っているのか。

すべてはドラゴンに行き着く。ヘルゲン要塞で始めてドラゴンを見て以来、わたしのすべてをドラゴン支配していた。わたしドラゴンボーンか否かは兎も角、何らかの関係性は強く感じる。そしてそれを確かめるための術はただひとつハイフロスガーに登り、グレイビヤードたちに会う。首長バルグルーフの報酬は、そのために役だってくれるだろう。

イブン、おまえへの報酬は三つある。ひとつは、この斧だ」

青白い光を放つ両刃の斧は、わたしの背丈の半分ほどもあり、そして重かった。握り手をみる限り、片手で扱う武器のようだが、わたしは両手で受け取ってなおふらついてしまった。バルグルーフは穏やかに微笑みながら言った。

「この斧はホワイトランに伝わる伝統的な斧だ。しかり、片手で扱う、実践的な武器だ。・・・戦士になれ、イブン。おまえがスカイリムで生き残るには、それしかない。・・・さて、二つ目報酬は、おまえをホワイトラン従士に任命する」

バルグルーフの言葉とともに、肩幅の広い剃髪の男が歩み出て、わたしの目の前で巻物を広げ、なにかを読み出した。それは共通語ではなかったため、わたしにはその内容は判らなかった。

剃髪の男は、わたしの混乱を予想していたようだった。巻物を読み終えると、続けてわたしにこう言った。

わたしの名はプロヴェンタス・アヴェニッチ。ホワイトランの家令としてバルグルーフ様にお仕えしている。さてイブン・ファラギット・ファドラン。従士について、説明しよう」

従士とはスカイリム地方独自名誉役職で、それぞれの要塞が、その要塞にとって特に働きの認められた者に送る称号とのことだ。

役職自体特に職務は科せられない。ゆえにに要塞からの定期的な報酬もない。文字通り、名誉職だが、すくなくともわたしが家令になって以来、初めての出来事ではある」

誰にでも送られる称号というわけではないということだろう。わたしは謹んで受け取ることにした。斧よりはよっぽど益がありそうに思えたのだ。だがその思いは、家令の次の言葉で打ち砕かれた。

「なお、従士には従者が与えられる。従者は従士の盾であり剣である。従者は従士にいついかなる時も付き従い、その身を呈して従士を守る。リディア!」

家令プロヴァンタス・アヴェニッチの呼び声に反応し、一人の戦士が歩み出た。筒状のホワイトラン衛士専用兜を脱ぐと、長い黒髪が顔の左右に流れた。戦士は脱いだ兜を小脇に抱え、わたしのもとまで来た。そして言った。

ホワイトラン衛士リディアです。これより、あなたの従士として付き従います」

紛れもなく女戦士だった。背の丈は平均的ノルド女性と同じくらい、すなわちわたしより幾分高いくらいだったが、肩幅を含めたそのがっしりとした体型は、紛れもなく戦士のそれだった。腰には幅広いで肉厚な刃をもつ、ノルドたちが好んで使う重たい長剣を佩いている。左手には縁を鉄で補強した丸盾を持ち、胴体を中心にした部分鎧を着ていた。

戦士ホワイトランの、女戦士

首長バルグルーフが言った。

イブン、彼女が三つ目の報酬だ。リディアイブンを、ドラゴンボーンを頼んだぞ」