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2013-04-04

[]グロッグナック・ザ・オーク(28) -The Elder Scrolls III-

第四、そして第五の予言は、ヴァーデンフェル全土に散らばるダンマー部族から、『転生者』もしくは『勧告者』であるという承認を得る、というものだった。転生者であり勧告である、ということは伝説ロード・ネレヴァーその人であるともいえる。賢母ニバミ・ミーサは、ヴァーデンフェルを一つにまとめ上げダンマー連合軍を率いてレッドマウンテンに進軍せよ、といった。ダゴス・ウルを倒すにはそれしかない、と。

こうしてグロッグナックの新しい旅は始まった。


旅は、一年と少しの間続いた。ネレヴァーの指輪とアーシラク族の承認だけを持って始めた旅ではあったが、グロッグナックは一つ、また一つと部族承認を取り付けていった。

グロッグナック旅路を救ったのは、他ならぬダゴス・ウルだった。悪化する一方のブライトと第六氏族の暗躍は、ダンマー氏族に深刻な問題となっていたが、トライビューナル神殿や大氏族連合帝国駐屯軍は有効な対策を打てずにいた。

そこに現れたのが、ネレヴァーの指輪を持った巨大なオークだった。伝説の英雄、偉大なる先祖の転生がオーク。そんなはずは、ない。人々は訝しく思い、困惑した。真に救世主であるならば、と無理難題をふっかけた。だが、オーク言葉少なげに、しかし着実に難題を解決していった。

繰り返されるブライトのため氏族存亡の危機に立たされたアーマサ族では、氏族全体の新たなる移住地を探し求めた。

後に、アーシラク族と同じほどの友好関係を培うことになるザインダ族では、族長花嫁探しに奔走した。

族長を欠いたエラベニムサン族では、正当な後継者に力と知恵、そして勇気を授けた。

政治経済に長けたハラル氏族では、秘密結社組織し第六氏族と結託していたリーダー秘密を暴いた。

武を尊ぶレドラン氏族では、苛烈政治闘争に巻き込まれた末、ヴァーデンフェル最強と謳われる剣士との半日に及ぶ一騎打ちを果たした。

氏族全体が巨大な魔術的秘密結社であるテルバニ氏族は、ヴァーデンフェルの命運に全く無頓着でありながら、自らの魔術的欲望をかなえる為にグロッグナックとネレヴァリン伝説を最大限に利用した。

そしてそのすべてを、グロッグナックは解決していった。ひとつ、またひとつと。一つの氏族の問題を解決するごとに、グロッグナックの名声は高まり、そして噂は広がっていった。グロッグナックが解決したのは氏族の問題だけではなかった。その過程で、各ギルドや個人が抱える問題に、それとは知らずのうちに巻き込まれ、そして解決していったのだ。グロッグナックの噂は、指導者層や一般人民問わずヴァーデンフェル全土一切衆生などにあまねく広まっていった。


「・・・”ハラル氏族評議員であるクラシウス・キュリオは、オークグロッグナックを『勧告者』として承認する。”と・・・」

伝統的な意匠が縁に施された公式文書用羊皮紙の上に、ダンマーの肌の色を思わせるダークブルーのインクで達筆な文字が綴られてゆく。インクは羊皮紙に吸い込まれると、わずかに発光した。改ざん防止の魔術が、インクと羊皮紙の双方に呪付されているのだ。

クラシウス・キュリオは羊皮紙から顔を上げ、目の前に立つオークグロッグナックを見上げる。1年前にグロッグナックと初めて出会ったのも、このヴィヴェックにあるキュリオの執務室だった。あのときのグロッグナックは薄汚い旅装束に身を包んだ、あきれるほど巨大な、だがただそれだけのオークだった。そのオークはとんでもないことを言った。自分を『勧告者』として承認して欲しい、と。その時の衝撃は、今なお思い出すことができた。

だが今目の前に立っているグロッグナックは、1年前とは別人だった。身にまとうのは、各有力氏族から賜った魔術装束や、アシュランダーたちが大切に保管し続けてきた由緒ある武具だった。無数のそれらは、しか合理主義であるグロッグナックの厳格な取捨選択によって選び抜かれ纏われていた。そしてその顔には、一年もの間、人々を説き続け、その思いを行動で示し続けてきたその顔には、人々を教え導くリーダーの威厳と風格が漂っていた。

キュリオは思わず破顔して言った。

「・・・今の君は、まるで・・・まるで本物のロード・ネレヴァーのようじゃあないか?なぁ、グロッグナック?」

グロッグナックの顔にも、わずかに笑みがこぼれる。

グロッグナックにとって、キュリオはかけがえ無いのない盟友だった。こと陰謀渦巻く大氏族連合の各氏族から勧告者』である承認を取り付ける旅路において、キュリオが果たした役割は非常に大きかった。ハラル氏族評議員であるキュリオ自身、元はと言えばヴァーデンフェル島の生まれではない。故に、いまヴァーデンフェルが直面している危機について、極めて客観的危機感を抱いていた。キュリオがグロッグナックに肩入れした理由は、キュリオとグロッグナックが同じ「ストレンジャー」である、というだけでは無かった。

キュリオは感慨深げに言った。

「・・・私の承認をもって、君は大氏族連合を構成する全ての氏族から勧告者』である承認を取り付けたことになる。そしてアシュランダーたちからは既にネレヴァリン・・・『転生者』である承認を取り付けている。ということは、今の君は、ヴァーデンフェル全土を率いるリーダーである、ということになる。しかし『勧告者』は限定指導者だ。すなわち、対ダゴス・ウル戦線指導政策決定のみが認められている。・・・むろん、こんなものは言い方次第だがね。とはいえ、人々の願いは、君を勧告者として認めたヴァーデンフェルの人々の願いは、一日でも早くダゴス・ウルを討伐し、ブライトによる被害や第六氏族テロを無くすことに他ならない」

人々は口々に噂し合っていた。古代英雄ネレヴァーの転生体であるグロッグナックが、ヴァーデンフェル連合軍を率いてレッドマウンテンに攻め込むことを。レッドマウンテン奥底に潜む、ダゴス・ウルを倒すことを。

「機運は高まっているが、軍隊を編成し、動かすとなると大事だ。そのためにはまずは・・・」

グロッグナックはキュリオの言葉を穏やかに遮るように言った。

「キュリオ、だがまず、俺にはやらなければならないことがある」

「やらなければならないこと?」

グロッグナックは何も言わずに頷き、キュリオの執務室を後にした。

キュリオがグロッグナックを見たのは、それが最後になった。


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その広い部屋はうす暗く、そして静かだった。グロッグナックは、漆黒の刃の幅広の大剣を構えたまま、部屋の中に入っていった。幅広の大剣は血塗られていた。

ドーム状の部屋の中心には見たこともない装飾が施された床があり、その上に胡座をかいて浮かぶ半裸の男が居た。男の肌の色は半身がダンマーの青黒、もう半身が黄金だった。男は完全武装のオークの出現に驚くこともなく言った。

「待ちわびたよ、古き友よ・・・さぁ、我らの務めについて語り合おうじゃないか」

グロッグナックオーディネーター達を斬ったばかりの大剣を構えたまま言った。

ヴィヴェックだな?」

「その通りだ、友よ。長い間、君が来ることを待ちわびていた」

ヴィヴェック。ネレヴァーの三人の側近の一人であり、死せる創造神ローハンの心臓から力を得た現人神グロッグナックが、まず、とキュリオに言ったのはヴィヴェックとの会談だった。会談自体ヴィヴェックの方からの提案だった。

グロッグナック大剣を床に突き刺し、両手を柄に掛けた。幅広の刃をそのまま盾として用いることも、地走りからの切り上げで強襲することも可能な、攻防一体の構えだった。だが、ヴィヴェックはまるで気にする事なく、話を続けた。

「・・・私がまだ人の身を持っていたころ、それはもう短気な性格をしていたものだ・・・。来たのは君だが、呼んだのは私だ。だからまず、私の用件を伝えよう」

「・・・聞こう」

「まず、オーディネイターたちにネレヴァリン教団と疑正統教義派への弾圧をやめさせる。ネレヴァーの再来を認め、ネレヴァリンと共にモロウィンドを救う為に一致団結するように、トライビューナル神殿の名のもとに公布を出す」

それは神殿の完全敗北宣言に他ならなかった。長らくヴァーデンフェルを支えていたトライビューナルは、その権力を復活したネレヴァリンと彼が率いるアシュランダー連合、大氏族連合に委ねることにしたのだ。

「・・・だがこれは君の求めていた答えではあるまい?」

グロックナックは寸分の隙もない構えの下から言った。

「・・・ダゴス・ウルを、殺す方法

ヴィヴェックは小さく頷くと、手をかざした。宙に異形の小手が出現した。小手は右手しか無かった。見たことも無い光沢を放つ金属でできており、何の用途なのか見当の付かない様々な器具で覆われていた。グロッグナックは小さく息をのんだ。

「・・・”ライスガード”・・・!」

「そうだ。我らのかつての親友であり、そして宿敵でもある、ドウェマー・カグラナックが作り出した三魔具の一つ・・・。その用途は、既に知っているな?」

カグラナック・ツール。死せる創造神ローハンの心臓から、その力を取り出すために作り出された三つの魔具。ヴィヴェック、アルマレクシア、ソサ=シルはネレヴァーと共に、このツールをつかわないと女神アズラに誓い、そして破った。

「ダゴス・ウルを倒すためにはカグラナック・ツールが必要だ。すなわち、ダゴス・ウルを倒すと言うことは、カグラナック・ツールの責を負うということでもある」

かつてダゴス・ウルを狂わせ、ヴィヴェックらに女神アズラとの誓いを破らせたツール。それは神なる力がもつ狂気のものだった。

「だからまずは、君にその責を担う覚悟があるか否かの確認だ。すべての神々と民と生きとし生けるすべてのものと世を去りし魂にかけ、私の名誉と君の名誉の元に、カグラナック・ツールを用いてダゴス・ウルの侵略を退けモロウィンドの地とそこに住まう命を守ることを誓えるだろうか?」

グロッグナックは即答した。

「おれが誓うのは、ダゴス・ウルを殺すこと。それだけだ」

ヴィヴェックは頷いた。

「それは賢明な返答とはいえないが、私が望んだ答えでもある」

ライスガードがかき消えた。次の瞬間、グロッグナックの視界が閉ざされた。宙に浮いたように感じ、そして元に戻った。

「死せる創造神心臓を打つ鎚サンダーと、その力を吸収する刃キーンは、いずれもレッドマウンテンにあるダゴス・ウルの要塞にある。ダゴス・ウルを殺す為には、全てのカグラナック・ツールが必要だ」

グロッグナックの右腕にはいつの間にかライスガードがはまっていた。肘を曲げのばし、指の動きも一本一本確認する。

「ローハンの心臓から力が流れ込んでいる間はダゴス・ウルを倒すことはできない。 その流れを断ち切るには心臓サンダーで打ち、キーンに持ち替えてさらに2回以上打つのだ。 無論、いずれもライスガードを装備していなくてはならない」

グロッグナックは拳を握り締める。ライスガードの有り余るエネルギーが、指の間から吹き出す。ヴィヴェックは、神になってはじめて恐怖を感じた。

だがグロッグナックは踵を返し歩き始めた。ヴィヴェックはその背中に向けて言う。

「待て!話はまだ終わっていない。ダゴス・ウルの居場所は判っているのか?」

グロッグナックは歩みを止め、だが振り向かずに言う。

「・・・心臓のある部屋だ。そして心臓のありかはライスガードが教えてくれる」

「その通りだ。ダゴス・ウルは、心臓のある部屋から、絶対に出てこない。なぜならば、ダゴス・ウルを不死身させめているのは心臓の力であり・・・」

グロッグナックは突然振り向いた。その表情は悲しみに満ちていた。ヴィヴェックは続く言葉を失った。

「・・・ダゴス・ウルは心臓のある部屋から出てこれないのではない。出てこないのだ・・・。それがネレヴァーへの誓いだからだ」

から、おれが殺してやる。ダゴス・ウルを、そしておれを縛る全ての誓いを無きものとするために。だがヴィヴェックよ、おまえの失われた誓いは?誰がお前を救うのか?

「・・・だが、今ではない」

グロッグナックヴィヴェックの元を去った。

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