チマチマした人間

黒ずんで汚れた銅鍋が出てきたので、磨いて新居で使うことと決める。
でも銅鍋の手入れって難しいのだ。
まずは、酢と塩を同量ずつ混ぜ合わせたもので擦る。
「5分でみちがえるようにきれいに」というネットの情報は嘘で、ところどころぽっちりずつ汚れが薄れるだけ。
銀製品にはみごとな化学変化を示す歯磨き粉で磨くと、やはりぽっちりずつ。
これにかえって闘志がわき、ぴかぴかになるまで永遠に鍋磨きをしていたくなる。
「今、そんな場合ではない」と自分を戒めるのが大変。

文庫本の山を見ていて気がついた。
新潮文庫だけでもけっこうあるはず。
私は一度も応募したことがないけれど、新潮文庫にはYonda Clubというものがあったのではないか?
カバーについている三角形のマークを50点分集めれば、ちょうどなくした腕時計をもらえるし、そのくらいの冊数はあるのでは?と思い立って、本を取り出してははさみでマークを切り始めたが、あれもこれもすでに切られている?
私が買って、私しか読まない本なのに、Yonda Clubに送ろうとした覚えはないのに、いつの間になぜ?
切り取られた分のマークはどこへ?
結局、36冊分しか集められなかった。

引っ越し屋に「雑巾を2、3枚用意しておいてほしい」と言われた時から実はうずうずしていて、「今そんな場合ではないのに」と思いながらも、昨日ミシンのメンテと称してつい雑巾12枚、コースター7枚縫ってしまった。
一番上のがお気に入り。
花雑巾を作るまでは行かなかったが、古いバスタオルの青い鳥の刺繍を生かして、ぶら下げて干せる紐をつけたもの。
ずっとくすぶったままの手芸欲が2パーセントくらい満たされた。

ああ、今こそもっと抽象的で構築的でマクロな人間にならなくては!!(20年ぐらいずっと思っているが)
きっと4月からは。

いつのまにか春

うわーっという感じに日々が過ぎて、状況も気分もどんどん変わり、日記がひと月空いてしまった。
ありえたかもしれないエントリーを少し。

・鬼門のパリでフランス名物ガストロ(フランス版ノロウイルス)に襲来され、ホテルで数日間、阿鼻叫喚の地獄絵をくり広げたこと。完治したかもわからないまま、決死の覚悟で食べた生牡蠣のすばらしいおいしさ。
・干潟の神秘。朝靄のなか、ゴム長の足元にひたひた水が満ちてくる。昼夜の差だけでなく、緯度や季節や天候によって変わる潮の満ち引き。清涼な空気、微かなヨードの香り、水鳥の声につつまれた数日間。あのシャンブルドットの部屋からの風景は、今考えると夢のよう。
・3.11は、午前は初めてのメレフラ、みなとみらいで黙祷、夕刻よりRainy day Books & Cafeの「レイニーデイ 新しい春のために」イヴェント。聞くのが初めてでない演目(朗読されたテキストのいくつかや『銀河鉄道の夜』)もあるのに、まあたらしく、すみずみまで魂がこもっていた。それにしてももっと踊れるようになりたい。
・引っ越しを前に、ミクロなことにとらわれがちな自分が前面に出てくるのに気づかされ、情けなく思う毎日。細々したモノなんかに価値はないのだとわかっているはずではないか、馬鹿。
・家に新陳代謝は必要。本棚にも新陳代謝は必要。蔵書自慢とか本棚自慢とか、そういうブッキッシュなのって私はちょっと「けっ」と恥ずかしく思ってます。そういう自分もチマチマとしか手離せない、思い切りが悪くミクロな奴。
(つづく)

こう見えて忙しい私

人生暇なことが多かった私だが、昨今、雪だるま式に忙しくなっている。
気持ちばかりが先走って、ヘマも多い。
乳液のつもりで二日にわたりヘアコンディショナーを顔にすりこんでいた。
この香り、違う場面で嗅ぐ香りだなーと頭の隅では思っていたのだが。
昨日は歯磨きとブラッシングを同時にしなければと焦って、歯磨き粉のたっぷりついた歯ブラシで髪をとかしてしまった。
それにしても、公私いろいろな活動を総合的に考えると、新年度から当面は365日休みなしかなあ。

当面の予定は、週末からフランス → (パリの宿で)帰国直後の発表原稿執筆とフラのひとり猛練習 → ブルターニュへ。牡蠣を食べながら、すわ、通訳!!?? → 帰国、すぐ出張 → 出張ついでに午前中は家探し、発表、懇親会 → 翌日も家探し続き、帰京 → 朝、ヘアメイク!!??(お団子ヘルパー買った)、フラ3曲踊る → 一日で猛然と確定申告(忘れないよう注意) → まだいろいろ続く……

ちなみにここで発表します。お近くで興味のある方はどうぞ↓
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/re/k-rsc/lcs/kikaku/2012.3.9kankaribu.pdf

踊るのはE Hoi I Ka Pili、Ku’u Lei HokuとLei Nani。
新曲2曲をあらたにipodに入れて旅先に持って行くつもりが、どうも調子が悪く入れられない。
「クウレイホク」はほんとはデニス・パヴァオ・ヴァージョンだがなかったので、11歳のエミリーに練習のパートナーをお願い。
http://www.youtube.com/watch?v=jarWdaeXtqs
http://www.youtube.com/watch?v=t-hIAc_VRmY

身体週間

久しぶりにカラオケ。
「なのにあなたは京都へゆくの」(チェリッシュ)、「京都慕情」(渚ゆう子)、「カーネーション」(椎名林檎)などを今回新しく歌う。
楽しかった。
それにしても皆さん、「職業まちがってるんじゃありませんか?」と笑ってしまうほど上手だ。
演歌が上手に歌える人は気持ちよさそうでうらやましい。

今週はヨガ三回、フラ一回、カラオケ一回で、「身体」がテーマ。
からださえうまく動けば、きっとすべてが乗り越えられます。

楽しい新幹線

めずらしく厳寒の日本列島。
米原から大垣あたりまでは徐行しつつも吹雪のただ中に列車が突っ込んでいくようで、車窓にひたすら顔をくっつけてわくわくしながら見とれていた。
田んぼの形通りの直線を描く雪原。
人工物でいいなあと思うのはまるまっこく雪をかぶった墓石の列。
除雪車の動きも普段見慣れないので興味深い。
走る車体と雪がこすれるシャシャーッという音も心地よい。
「遅れてご迷惑かけます」と何度もアナウンスがあったが、こういう景色が見られるならずっと遅れていていいと思った。
多少の用事なら「すみませーん、新幹線が雪で遅れちゃって」と堂々と言い訳だってできる。
ふと前後の席を見れば、そんなふうに窓の外に見とれている乗客がたくさんいた(おじさんが多い)。

ブラジル→ホットヨガ

風邪終結宣言の一昨日は、西麻布Rainy Day Books & Cafeに今福龍太、港千尋管啓次郎氏によるブラジルをめぐるお話を聞きに行く。
十字路(辻)の神、エシュが見守るなか、ブラジルに行ったことがなくても心躍るようなおしゃべりを聞き、詩の朗読を聞き、ヴィニシウス・ジ・モライスの曲を聞き、遠い日に撮られた写真を見ることの、なんという心地よさ。
この規模の空間ならではの一体感というか臨場感というか満足感がある。
こんなふうなかたちで文学とつき合える場があるのはうれしいことだ。
「ブラジルとはある精神風土を指すのであって、世界のいろいろなところにある」、「ブラジルとは固有名詞でなく普通名詞」という話が心に残る。

昨日は二カ月にわたり行けなかったホットヨガを再開。
躯が、すみずみまで、ほぐれる。緩む、全身ずぶ濡れになるまで汗をかく。あまりにも気持ちいい。

雌伏千年。
人生最長の風邪で、途中三度別のウイルスに罹患し医者にまで笑われたが、ようやく持ち直してきた。
ひとり勝ちなどと言ってバチが当たっていたのかもしれない。