神様のいない日曜日

神さまのいない日曜日 (富士見ファンタジア文庫)

神さまのいない日曜日 (富士見ファンタジア文庫)

告白しよう。表紙と冒頭数ページに今まで騙されて敬遠していた。そんで、読み通すと今まで敬遠してきたことを後悔した。
なんだこれは。
わたし好みの悪趣味、醜悪、矛盾と悪徳のオンパレードではないか。
いかにも萌え萌えなおにゃのこが村人にお菓子貰ったり、父親&母親変わりの男女といかにも頭の悪い会話をしたりしていた冒頭こそいわゆるひとつのザッツ萌え要素! みたいな感じだが、ふらりと村にやってきた少年が村人たちをあっさりと皆殺しにするあたりから、作品の背景にある世界のとんでもなさが徐々に明らかになっていく。
タイトルにいつわりなし。
ようは、「神様が職場放棄した世界」なのだ。
生まれる人も死ぬ人もいなくなって、十五年。おまけに、神様は最後の置き土産にと、気まぐれに「誰か」の願いを叶えてやったりもしていたらしく、それが事態をさらに複雑なものにしている。
最初に提示された情報が、ひとつひとつ薄皮を剥かれて「別の形」を提示していく過程は、なかなかにスリリングだった。こういう驚きを提示されることは、嫌いではないよ。
でもなぁ。
あとがきによると、これ、(売れ行きが極端に悪くなければ)続刊も予定されているようだが、それは止しておいた方がいいように思う。
これ一冊できっかり完結しているし、なにより、この世界、この主人公でこの先の物語を続けても、どうにも幸福なさきゆきになりそうにない。
ってか、もうこの世界、「終わった後」じゃん。主人公が成長したりしても、何かが変わるってことはないじゃん。