ヤサぐれ者の魔窟vs発掘亭日乗越

2005-02-12

nori542005-02-12

【発掘】【ダンス】向井・砂連尾・チェルフィッチュ

向井さんの葬儀の会場を間違えて大幅に遅刻してしまう。京都の時といい、このところ書くことに特化して一般的な事務処理能力が落ちているな、オレ。会場では、向井爽也氏の愛弟子・原健太郎氏が頑張っていた。お手伝いできず、申し訳ない気持ちで一杯だ。

帰りには瀬川先生や、久々にお会いするエノケンの娘さん等とお茶。お母様(エノケン夫人)の近況なども聞きながら。

喪服のまま砂連尾理+寺田みさこ。とてもよい。二人の関係性がクリアになってきた感じ。

会場で、先日岸田戯曲賞を受賞したばかりの岡田利規チェルフィッチュ)君と会う。アフタートークに出るそうな。

「受賞して何か良いことあった?」

「いや、まだ特には…… だいたいみんな『誰それ?』って感じですから」

 あー、なるほどね。2/24に出る、「ぴあ」と「シアターガイド」が共同で出す「シアターワンダーランド」という雑誌で「来年活躍を期待する小劇団」のトップにわしが挙げたのが「チェルフィッチュ」だった。書いたのは去年末だから、まさか受賞するとはね。いや、受賞に価する作品ではもちろんあるんだけど、もうすこし自由な立場でいくつか作品を作ってからのほうが……とも思う。

 が、まあトークショーとかの言い方を見ていると、好きなことを好きなように言える腰の強さがあるので大丈夫だとは思うけれども。


もう消えてしまったので、受賞作『三月の5日間』↑を見たときの感想を再録。

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 チェルフィッチュは人々が入れ替わり立ち替わり、だらだらと「けっこうそういうのってメンドクサイじゃないですかぁ、ていうかまあどうでもいいっていうか」というテンションで話す。演技らしい演技はほとんどない。でも見ていると、これは高度なナチュラル・メイクのような、緊密な「演技に見せない演技」になっていることがわかる。

 朗読に近いこうした形は、実はポエトリー・リーディングの世界では珍しくないものだが、繰り返しなども効果的に使い、ストーリーというか流れをしっかり作っている。

 しかも初めは薄笑いを浮かべた男が「まだ六本木ヒルズができる前の六本木から西麻布に行く途中に、坂がきつくなる前の平らなところがあるんですけど、そのあたりにある小さなライブハウスに、カナダのバンドを聞きに行って、まあつまんないバンドなんですけどそこで引っかけた女とその日の内に即マンっていうか、そういうことになっちゃった男の話を、やります」とか言い出す。ほぼ棒立ちで。どうなってしまうのかと思っていると、いつの間にか隣にもう一人立っていて「うん」「へえ」と相づちを打ち、それに反応したりまた客席に話しかけたりと憎いハズし技。その後「5日間ラブホにとまりっぱなしでやりっぱなしだった」という話が続くのだが、まるで色っぽい描写はなく、バイト仲間の話をファミレスでメシを食うついでに聞き流しているがごとく。自称ミッフィーちゃんの挙動不審な女が男を逆ナンしようとするんだが絶えず身体が動いてしまうのが止まらず「おいおいキョドっちゃってるよ私、っていうかコイツだっていい加減お前も挙動不審だろーって感じの男なのに不気味がられてるしなあ私」とかキュートなシーンを挟みつつ、ラブホの5日間がイラク戦争と重なっていく。

 いや、正味なところ、なにも重ならない。

「名前も連絡先も交換せずに5日間経ったら別れて、それっきり二度と会わないようにしよう」という取り決めも、深い意味があると言うよりは「それくらいしか金とかもちそうにないし。おれバイト給料日が二十日締めの月末払いだからさ、金ないんだよね、今」みたいな話だ。「でもさ、この戦争だって5日くらいで終わるだろ。それであれだよ、いつか死ぬ前に、思い出す記憶の中にさ、ああ、むかし、くだらない戦争が起こっている間、ずっと渋谷ラブホでヤリまくってなあとかさ、いい思い出になるよ」

 なにがグッと来るかというと、「現実との距離感」が、まったくもって見事でリアルでその通りだからだ。演劇的には野田秀樹の頃の饒舌さと、「静かな演劇」の何も起こらなさが、思いも寄らぬ形で融合し、ゲル状になって、流れてるんだか転がってるんだかよくわからない感触で果てしなく斜面を下っていく。それって「動きの情報量は多いのだが説明している内容は少ない、のだがリアリティの共感がある」という点、ダンスに近い。

 20年前にダンスの威力の前に言葉が魅力をなくしてしまっていたが、言葉の復権がなるか。脱力のままでな。

(本文中、引用風のセリフは、乗越たかおの記憶によるものなので、正確ではありません)

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 とくに年寄り9.11に舞い上がって「若手のアーティストに多大なショックを与えている」とか言っていたけど(そんなことを言うのは総じて40才以上)、ここで岡田が「くだらない戦争」と言い切っているのが爽快だった。