モエラキの丸い巨岩

成田空港。出発前の待ち時間。パソコンでニュージーランド気象庁のホームページを検索して、これから天気が崩れるのは判っていた。
オークランド国際空港に着いた時は曇り空。
そこから国内線に乗り換えてクライストチャーチへ向かうが、いったん離陸した機体は厚い雲の上を南下するので、美しいはずの下界はまったく見えず。その雲を突き破ってクライストチャーチに降り立っても、まだ雨がさしせまっている気配は無い。ぽつりぽつりと重い空から天の水が落ち始めたのは、この旅の足になる6人用キャンパーを借り受け、スーパーで買い物を済ませて、期待を胸に国道1号線を南に進み始めた頃だ。

1時間ほどハイウェイを走り、1日目の宿泊を予約していたアシュバートンのホリディパーク(=ニュージーランドでは一般的なキャンプ場の呼称)に到着した頃には、すっかりしのつく雨に変わっていた。

シャワーを浴び、食事を済ませた後で、全員参加で明日以降の行程に付いての作戦会議。
決まったルートや束縛されるような予約がいっさい無い旅だ、せっかくなら雨を避けて気持ち良く旅したい。おおまかに予定を立てていた、テカポ湖を経由してマウントクックに至るルートを大幅に変更し、少しでも雨の弱そうな太平洋岸をこのまま南下してダニーデンに向かうことに決定。

後で判ったことだが、このとき全国を覆った雨雲の正体は、のちに<ギータ>と名付けられたサイクロンが北島周辺を通過したことによるもので、南島のさらに南部では小雨程度で済んだものの、旅の終盤に北上した折りには国道の通行止めなどで被害を思い知らされることになる。


ルートの変更で思いがけず立ち寄ることができた、モエラキ・ボウルダーという不思議な景観。
1500万年位前に海底で出来たものが400万年前に隆起し、土壌が浸食されて出てきたというこの丸い岩。砂浜から無数に顔を出した直径2メートルほどのボウルたちは、看板の解説文によると亀甲石結晶という呼び名で、太古に石英やカルシウムの結晶が球状に発達したものというのだ。
2年前にも見てはいるのだが、やっぱり完全には生成を理解できない自分がもどかしい。

天気の予想はほぼ思惑通りで、たいした雨にたたられることもなく、旧い英国の地方都市のようなダニーデンを経てさらに南に歩を進めることになる。