男の色気

nostalji2016-11-14

ダビングして持ってきた『男の顔は履歴書』(1966年・松竹/監督:加藤泰)を観る。東映の監督だった加藤泰が松竹に出向き、ヤクザの親分だった異色俳優・安藤昇を主演に作り上げた異色アクションです。
雨宮(安藤昇)のみすぼらしい病院に交通事故にあった崔(中谷一郎)という韓国人が運ばれてきます。崔は日本名を柴田といい、雨宮と崔は沖縄戦線で共に戦った戦友だったのね。戦後の日本は三国人たちが暴れ回り、雨宮が地主だったマーケットは崔の仲間である九天同盟の劉(内田良平)に狙われ、劉の子分(菅原文太)たちが好き勝手にしています。地元ヤクザの小野川親分(嵐寛寿郎)は頼りにならず、マーケットの有志は雨宮に助けを求めますが、愛人の看護婦マキ(中原早苗)と虚ろな日々を送る雨宮は無関心。血気にはやる雨宮の弟・俊次(伊丹十三)は有志たちと九天同盟に殴り込み、捕らえられますが、好意を持つ恵春(真理明美)や崔に助けられます。しかし、逃亡中に俊次と恵春は殺され、崔は負傷。雨宮は崔をマキにたくし、九天同盟を殲滅し、マーケット戦争は終結します。8年後、刑期を終えて出所した雨宮の前から崔とマキは消えており、無気力な医者となった雨宮の前に瀕死の崔が運び込まれ……
この作品は、後続の『阿片台地・地獄部隊突撃せよ』『懲役十八年』と合わせ、戦中・戦後三部作(いずれも主演は安藤昇)と呼ばれています。加藤泰の戦中・戦後の人生観を表しています。ただ、冒頭の「この映画は敗戦後の日本の混乱した時代に想定したフィクションである。そして、世界中の人間が互いに愛し合い、信じられる日を信じて作られたドラマである」の字幕は不要ですね。映像で見事に具現化していますからね。
安藤昇はセリフを少なくして(長セリフができる俳優ではない)、虚無感を見事に出していました。既存の役者にはない凄みがあり、それが何とも言えぬ男の色気になっています。安藤昇の顔のクローズアップから始まり、顔のクローズアップで終わるラストは、まさに“男の顔は履歴書”で〜す。