匿名の反対は実名ではないし、実名かハンドルかという議論は不毛

個別の議論はあまり見てないのだけど、「匿名か実名か」という話題が流行ってるらしい。
で、いろいろ盛り上がってるらしい。
なぜ盛り上がってるかというと、「匿名か実名か」という名目のもと「実名か非実名か」という議論をしていて、そこに「匿名か記名か」という議論が混じって、いろいろこんがらがるからだ。


そう。匿名の反対は記名だ。実名の反対は実名以外だ。
「匿名か実名か」というタイトルで、「サービスのIDのみか、実名を併記するか」という話をしているのだから、議論がまとまらないとしても無理はない。
そこで実名という言葉のオレオレ定義をしたりする人なんかが現れて、話はもっとわけがわからなくなる。


IDのみで活動していても、いっしょに酒を飲んだことがあって、その人がどの会社でどんな仕事をしているか、どんな学校でなにを勉強しているか知っていれば、その人の家でメシを食ったりしたことがあれば、実名を併記しているかどうかは全く関係のない話だ。
モノのやりとりをするにしても、会社が許容するなら、たとえば「東京都ナントカ区D社 ymsr様」のようなIDでもちゃんと届くだろう。


結局、IDのみであろうが実名を併記しようが、それでしばらくブログを書いたり飲み会に出たりしているのなら、そのIDにおいて責任をとって活動をしているわけで、匿名ではない。
むしろ、たとえば勉強会の飲み会で会ったときに「始めまして鳩山です。何度かついったーでやりとりしてます」などと言われたとき「IDはなんですか?」と聞き返す。で「ついったIDはyhtymです」などと言われたら「あーなんか見たことあるかも。アイコンは?」と問い返し「あ、赤い丸がふたつ縦に並んだような」といわれたときに「そういえば!」と思い出したりする。
で、「先についったIDを言えよ」と思うわけだ。


ようするに、ぼくはあなたの実名なんかに興味はない。顔にも興味はない。ついったIDもしくははてなID、それとアイコンを提示しろと。


それが世間一般の常識だとは思わないけど、ブログやついった上で議論をしているような人であれば、だいたいそういう感じではないだろうか。
そういう状況で、実名を出すか出さないか、という議論をしたところで、実名やID以外の付随情報をどれだけ出しているかという話になるだけで全く意味がない。
「実名だと高校の友達が探してくれる」という話も、「高校のころからこのIDで活動してたんで高校の友達がみつけてくるんですよねー」などという人をひとりやふたりつれてくれば、実名だからどうこうという話ではなくなる。それに「結婚して名前かわっちゃったから、実名で活動しても高校のときの友達はみつけてくれないんだよねー」という人もいると思う。「高校で同じクラスだった田中だけど」って言ったら「どの田中?」「野球部でキャッチャーやってた」「あータナチンかー田中っていわれても思いだせんかった」的なやりとりをしたことがある田中さんもいるんじゃないだろうか。


公式な場所では実名使うでしょっていう話は、「nowokayというidで活動してるけど、xxxってサービスではそのidが取れなかったのでnaokiというidを使ってます。役場のサービスでは親がなおきって名前でアカウント作ってたのでそれを使ってます」っていう話で、サービスが違えばアカウント名が変わるのも仕方ない。役場のサービスが広域に使えるので、それを別のサービスでも使うほうが便利だよって話でしかない。それでも役場のサービスはアカウント名の重複を認めてるので、実名ではだれの発言かわからないという人も多い。そりゃ、小飼とか勝間とかなら、かぶることは少ないだろうけど。岸田もありそうであまりない苗字なので助かってる。
結局、実名というのは公共サービスに登録したIDでしかない。その公共サービスがいまのところ一番広範囲に使えるというだけのことだ。


「実名を出すかIDだけで活動するか」という議論にはほとんど意味がなく、ネット上で活動することの影響は、結局それ以外の要素も含めて決まる。実名を出したときの波及効果が多くの人に共通で語りやすいというだけだと思う。
そういうことがらを「匿名か実名か」というずれたタイトルで議論すると、さらに収集がつかなくなるのではないかと思う。
問題は、ある場所での活動を一貫性のある識別子をもっておこなっているかどうかであって、その識別子がはてなIDだろうが実名だろうが、そんなことは大きな問題ではない。
ネットの匿名性というのは、複数の識別子で活動を行うことが容易かつそれぞれの結びつけが困難ということであって、その識別子が実名であるかサービスIDであるかは大きい問題ではない。
匿名かそうでないかという議論をするなら、匿名側は増田で主張するべきだ。