• 小林明夫「複数の自治体の政策協調による条例の制定方法についての一考察(一)」『自治研究』第八四巻第九号,二〇〇八年九月,129~145頁.

「複数の自治体の政策協調」(130頁)という観点からの条例制定(「共同条例」)に関する制度設計の可能性についての論考.先般書いた,景観関連での自治体間調整(協調)に関する小論の問題関心に,まさにフィットしており,刺激が多い一本.
本号では,既存の「関係する複数の自治体間での相互の意識的な取組により規定内容・形式を共通化させた条例(条例群)」である「共通条例」(131頁)への現状分析とその課題を明らかにしている.分析の対象とされた条例は,新井頸南地域広域行政圏構成市町村による「ごみの散乱防止に関する条例」,四万十川流域市町村による「四万十川保全及び振興に関する基本条例」,北東北三県による「県外産業廃棄物の搬入に係る事前協議等に関する条例」「産業廃棄物条例」の3本.これらの条例分析を通じて,特に,「共通条例が採用しようとする制度設計がオリジナルなものであればあるほど,それに伴って各自治体の法制担当課の意見にも違いが出てくる」,「関係自治体間で「共通条例」を目指して調整・立案作業を行ってきた条例案が,法制担当課の審査を経て,全く別のものになってしまう可能性すらある」(142頁)と分析(観察)された,「共通条例」の法制担当課による審査を通じた不統一化の要因は興味深く拝読.次号以降も楽しみ(蛇足.表紙目次に掲載されているご所属名の記載が,本文とは異なっているとも思うがどうなのだろう).