経費削減などを目的に、吉村美栄子知事が入居せず、廃止された状態の知事公舎(山形市松見町)と知事公館(同)について、県は1日、ともに売却する方向で調整に入った。庁内の各部局に有効な利活用方法がないかどうか照会していたが、期限としていた5月31日までに、県が引き続き活用するアイデアが寄せられなかったためで、国の出先機関山形市に対し、近く活用の意思を確認する。
 知事公舎と公館について、県管財課は4月中旬、各部局に(1)県が有効に直接利用する案はないか(2)事業者などが使いたいという情報はないか−を照会。アイデア、情報があれば5月31日までに回答するよう求めていたが、期限までに具体的な回答は得られなかった。同課は近く、山形財務事務所、山形農政事務所といった国の出先機関に加え、山形市に対し、公舎と公館を活用する意思がないかどうか文書で照会する。行政機関で売却先、貸与先が見つからなかった場合、県行政の無駄を排し、経費の効率化を図るため、7月に新設する予定の第三者委員会に諮り、委員の意見を聴いた上で吉村知事が最終判断する。
 県として引き続き施設を活用する道が実質的に閉ざされたため、売却、貸与の選択肢が残されているが、普通財産の売却益を貴重な収入源とするため、今後は売却する方向で検討が進むとみられる。仮に広く購入者を募る場合は、一般競争入札を実施し、事前に公表する予定価格を上回る応札があれば、売却先が決定する。知事公舎と公館は、周辺の駐車場を含めると敷地面積が約4000平方メートルにも及ぶほか、特に公館は外国の賓客をもてなすことまで配慮して設計した重厚な造りで、相当高額な予定価格が想定される。遊学館山形市緑町1丁目)の整備に伴い、知事公舎は1988年3月、現在地に新築移転され、これまでに板垣清一郎、高橋和雄、斎藤弘の歴代3知事が入居した。公舎に併設された知事公館は各種審議会の開催、賓客応対などを目的として、93年3月に完成した。

同記事では,山形県における知事公舎・公館の用途をめぐる検討状況を紹介.
その用途として同県知事による入居がないことから,同県による公共財産としての利用を検討されてきた,行政財産としての知事公舎・公館.庁内からは具体的な用途に関する回答が得られなかったことを受けて,山形市,国に対して活用意思を照会する方針にあるとのこと.「行政財産は,普通地方公共団体の行政執行の物的手段として行政目的の効果の達成のために利用されるべきものであり,したがって,これを交換し,売り払い,譲渡し,出資の目的として,若しくは信託し,又はこれに私権を設定することを認めることは,行政執行の物的手段としての行政財産の効用を減少し,ひいては行政目的を達成し難くなる虞」*1があるとはされるものの,その「目的の転移」が生じた場合,例えば,2008年1月23日付の本備忘録でも取り上げた東京都における知事公館売却に関する記事と同様に利用されない場合,売却の判断もまた妥当とは言えそう.ただ,売却となれば,知事のみでの判断での実現には困難な部分も残る.そのため,貸与先の検討はもちろんのこと,例えば,「県民に開放」し「有料貸出」*2を含めた,「目的外使用」ともいえそうな,多様な利用方法の可能性についても検討できそうか.

*1:松本英昭『新版 逐条地方自治法第5次改訂版』(学陽書房,2009年)904頁

新版 逐条地方自治法

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*2:東国原英夫『知事の世界』(幻冬舎,2008年)82頁

知事の世界 (幻冬舎新書)

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行政官の役割―比較行政学的アプローチ (1981年)

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  • 購入理由:図書館で折に触れて借りていましたが,古本販売があっため購入.

社会教育の終焉

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  • 購入理由:古本屋さんの入口前のワゴンにて.