松江市は1日、市民生活相談課に「伺います係」を新設し、業務を始めた。係には8人を配置し、専用電話などに寄せられた市民の相談に素早く対応し、現場に行って問題解決を目指す。
 市役所であった開設式で、係の愛称「まちのお助け隊」を発表、看板を設置した。松浦正敬市長は「市政は市民の信頼で成り立つ。要望に応えるのは大事なことなので、利用してほしい」とあいさつした。電話相談は、平日の午前8時半―午後5時15分に受け付ける。伺います係=電話0852(55)5677。

同記事では,松江市において市民生活相談課内に「伺います係」を設置し,同係の愛称を「まちのお助け隊」としたことを紹介.同係は,同市市長のマニフェスト*1内でも,「「すぐやる窓口」(仮称)の設置など,住民の身近な要望にスピーディに対応する市役所の組織整備」とあり,その対応時期は「今すぐ」と提示されていたことを受けて設置されたのだろうか.ただ,同市HP内の例規集を確認させていただいたところ,事務分掌規則(「松江市事務分掌規則」(平成17年05月23日規則第287号)は,現在のところ従来のままであり,その業務内容の制度上の詳細は把握はできず,残念.
同記事にあるように,正式名称と愛称が二頭立てとなると,住民からは,「どちらが正しいの」等の「伺い」がまずは出てきそうかとの心配があるものの,その心配を余所に,2009年6月2日付の毎日新聞の報道*2にもあるように,既に積極的に活動中.同報道によると,初動は「住宅の振動についての相談」,当日だけでも「電話4件、来庁1件の計5件の苦情や相談があり,2件は解決」とのこと.
自治体らしい仕事の形を創造し」*3,「これまでのお役所仕事とはひと味違った行政をしたいという願いから」(189頁)か,独自の名称がつけられることが時折ある自治体行政組織.2009年5月29日付の本備忘録で取り上げた各自治体の特産物のPRを兼ねた名称を採用するという,いわば個別商品の統合化の系譜がある一方で,1969年に松戸市による「すぐやる課」設置以来の「住民に向けた統合化」*4の系譜もまたあり,同記事で取り上げられている同市もその一つといえそう.後者の「住民に向けた統合化」の現況としては,2009年6月2日付の読売新聞による報道では,「多い時は全国で300以上の自治体が導入」してはいたものの,「予算が付くまで対応できなかったり,夫婦げんかの仲裁など個人的な相談が増えたりしたことで存続が難しく」なったとして,同記事にもある松江市が「現在,把握する自治体は10前後」*5の状況にあるという.「特定自治体の組織革新が,相互参照や模倣というメカニズムを通じて,他の自治体に波及していく」*6動態は,新規設置(名称変更)のみならず廃止という選択もまた同様ということだろうか.興味深い.

*1:松浦まさたかHP(マニフェスト)『マニフェスト』6頁

*2:毎日新聞(2009年6月2日付)「伺います係:期待ひしひし、松江市で早速出動 内容想定できず戸惑いも/島根

*3:大森彌『現代日本地方自治』(放送大学出版会,1995年)187頁

現代日本の地方自治

現代日本の地方自治

*4:礒崎初仁・金井利之・伊藤正次『ホーンブック地方自治』(北樹出版,2007年)179頁

ホーンブック 地方自治

ホーンブック 地方自治

*5:読売新聞(2009年6月2日付)「道路補修 早速「伺いました」松江市 8人体制「係」始動

*6:伊藤正次「自治体行政組織の構造変化と改革課題」『都市問題研究』第61巻第4号,2009年4月号,61頁