監訳者の今村都南雄先生・財団法人地方自治総合研究所様よりご恵与賜りました.ありがとうございました.
前職場の頃,WTO政府調達協定等と自治体と関係に関する調査に,(周辺的ではありましたが)関わらせていただく機会があり,国際問題・外交に関しては,まさに本書にいう「中央政府の専管事項ではない」(鄯頁)現況にあることを感じておりました.ただ,同分野におきましては,その後,不勉強のままでおりました.本書では,経済外交,国際交流・国際協力,そして,ハード外交という多くの分野にわたり,外交上の「プレイヤー」(1頁)としての自治体について分析されております.同テーマについては,上記の通り,不案内である下名ですが,謹んで勉強させていただきます.重ねて御礼を申し上げます.

京都府で昨年度に相次いで発覚した裏金や国庫補助金の不適正経理問題の再発防止に向け、府は18日、各部局で会計事務の点検や公金管理を担う出納員を対象に初の研修会を開いた。会計課や財政課に勤務経験のある財務指導員が「出納員は府民への説明責任が問われる立場。職場で注意や問題提起をし、嫌われる存在になるべきだ」と心構えを説いた。
 京都市上京区で開かれた研修会には、府庁や出先機関、学校、警察などの出納員約160人が出席した。岡本吉弘財務指導班長が不適正な会計処理の事例を交えながら「この程度なら許されるという意識が不祥事を招く」と意識改革を訴えた。また、府職員OBの山本周三財務指導員も「円滑な事業実施を優先させる傾向がある中、けん制する姿勢が大切だ」と呼び掛けた。
 府では近年、行政改革の一環で、支出伝票の作成や物品発注など会計事務の大半を臨時職員が担当し、会計事務の経験のない出納員が増えているという。このため、府は本年度から本庁と各広域振興局に5人の財務指導員を配置し、日常的に財務会計事務の指導や相談に当たっている。

同記事では,京都府において,出納職員に対する研修会を開催したことを紹介.同記事では「初の」とされているが,同種の研修会がこれまでにも開催されたことがないのだろうか,少し驚き.
同府の「財務会計事務の適正化」への経緯と取組については,同府HPを参照.同府における「いわゆる裏金」(「会計外保有現金」)*1に端を発し,その後,「不正な経理処理又はその疑いがあるもの」「商品券等の現物を保有しているもの」「その他保有している現金等(事務処理が不適切なもの)」の3区分に基づく調査の結果,「43所属89件3,627,087円」を把握.
同府の調査では,「いわゆる裏金が古いものは昭和62年から連綿と引き継がれてきたことが明らかとなった」とする一方で「多くのものが事実上閉鎖されており,ここ数年は収入・支出のいずれもが数万円程度に激減してきた」現状があるとのこと.そして,このような減少「推移」としては,「食糧費をはじめとした経理適正化の取組を進める中で,公金に対する職員の意識が変わってきたことや旅費等に係る会計システムの改善によってもたらされた面が多い」と,意識面や技術面での変化が,いわゆる「裏金」縮減化に有効であった,とする.
しかしながら,残置された背景としては,「過去数度の調査でも裏金の存在を確認することができず,結果的に問題が今日まで放置されてきたことや,一部の管理職員が裏金の存在を知りながら,適切な対応を講じることなく事態を見逃したという事例があったことは深く反省すべき」としの自省とともに,「これまでの点検・検査のあり方が不十分でいわゆる裏金の存在を見抜けなかったことも反省すべき点である」としている.制度面では,「予算執行の面においては,余った予算を年度内に無理に消化しようとするいわゆる「使い切り予算」が,預け金を生み出した大きな要因」と認識するとともに,「いずれにしても,管理職員をはじめ,職員の公金に対する意識が徹底されていなかったことが今回の問題が発生した大きな要因と言わざるを得ない」と職員の認識がその要因であると,同府は整理する*2.そこで,2009年4月から各種組織改正を行い,「出納員に対する指導等を行う「指導検査担当参事」を会計課に設置」し,更に「担当参事を班長とする「財務指導班」」,「各広域振興局エリアごとに財務指導員」,「監査委員事務局の監査第一課」へ「「特別財務調査担当参事」を設置されている*3
第29次地方制度調査会答申においては,監査委員の独立性の強化(12頁)及び同事務局の「能力向上」(15頁)を図るためにも,後者については,その「監査体制の強化」のために,「監査委員事務局の共同設置の促進を図るために,事務局の共同設置を可能とする制度改正が検討されるべき」*4と答申されたところ.また,同答申内では,審議内での見解として,「監査委員事務局の職員の大部分を,超部局からの出向による職員が占めていることにより,監査委員事務局の長部局からの独立性の確保が不十分となるのではないか,監査事務局に精通した職員の育成が困難となるのではないか」(16頁)という,いわゆる「自治体では職員集団の一体性が強い」*5特性があることへの疑義が「指摘」されたことをあげ,同調査会内では「監査委員事務局と他の執行機関との人事異動を制限すべきではないかといった意見」(同頁)があったことや,一方で同種の制限を置くことにより「逆に優秀な人材の確保が困難となるのではないか,特に小規模団体において人事の硬直化がすすむのではないか」という「懸念」(17頁)をも示している.同府の場合,地方自治法第171条により必置でかつ,長によって命ずる*6ことにある「一体性」がより明瞭な出納員という職において,いわば「内なる敵」に徹しきることが可能となるのか,要経過観察.

*1:京都府HP(行政改革等)「いわゆる裏金に関する知事記者会見について

*2:京都府HP(府政情報広報・情報公開等報道発表資料2008年12月)「いわゆる裏金問題の調査結果及び再発防止策(案)について

*3:京都府HP(府政情報インターネット知事室知事記者会見平成21年3月25日知事記者会見)「平成21年度組織改正及び人事異動について」9頁

*4:総務省HP(以前の新着情報(会議資料・開催案内・他))第29次地方制度調査会『今後の基礎自治体及び監査・議会制度のあり方に関する答申』(平成21年6月16日)16頁

*5:礒崎初仁・金井利之・伊藤正次『ホーンブック地方自治』(北樹出版,2007年)201頁

ホーンブック 地方自治

ホーンブック 地方自治

*6:松本英昭『新版 逐条地方自治法第5次改訂版』(学陽書房,2009年)545頁

新版 逐条地方自治法

新版 逐条地方自治法