• 村上裕一「官民協働による社会管理 −自動車安全のための技術基準策定プロセスを素材として」『國家學会雑誌』第122巻,第9・10号,2009年,1266〜1330頁.

村上裕一先生より,ご恵与賜りました.ありがとうございました.
「政策の基になる各種情報に関する官民の相互依存関係」(1270頁)と定義をおかれた「官民協働」の視角から,自動車安全を巡る技術基準の策定過程を丹念に分析された本稿を通じて,これまでに十分に共有されてこなかった,自動車安全行政の「官民の「綱引き」」(1275頁)実態を立体的に把握を試み,その成功をされております.特に,本稿では,規制行政における「囚虜理論」に対する「根本的批判」(1272頁)に根ざした問題意識からの実態分析により,「規制当局によるプロセス設計・管理において,被規制者により規制が不当にキャプチャーされない,「官」による社会管理へのコミットメントを担保するための工夫」(1318頁)を鮮やかに抽出することにも成功されており,既存の規制行政に関する理論への再考させていただく機会を提供されております.
下名,個人的には,御高論の主テーマであります「官民協働」という行政現象が,特定の分野における技術基準設定に限定されるものであるのか,更には,同現象が,生成時点より所与の形態として生成されたものであるのか,または,複数の分野における設定経験を踏まえつつ,形成されてきた現象となるのか,将亦,他の分野において醸成された現象が移植されたことにより,普遍化している現象であるのか等,思いを巡らせていただく機会となりました.
心より御礼を申し上げます.誠にありがとうございました.