基礎自治体としては全国初の討論型世論調査(DP)が30日、藤沢市で行われた。約300人の市民が「藤沢のいま」と「藤沢のこれから」をテーマに丸1日かけて討論し、アンケートに回答。この調査結果は、同市が策定中の新総合計画の基本構想に反映される。
 会場は、DP導入を支援した慶応大の湘南藤沢キャンパス(同市遠藤)。アンケートに答えた後、約15人ずつに分かれて午前10時から90分間、「藤沢のいま」の問題点やその解決法、将来伸ばすべき分野などについてグループ討論を行った。
 午前の全体討論ではその結果を持ち寄り、パネリストとの質疑を実施。財源問題に関しては、沼尾波子日大教授が「藤沢市は不交付団体で、財政的に恵まれているので、基礎体力があるうちに高齢化など将来の課題に着手することが必要だ」と助言した。「湘南、江の島など全国ブランドの観光資源を生かしきっていない」との指摘には、NPO法人「地域魅力」の田中美乃里理事長が「イメージだけで人を呼べる時代ではない。B級グルメによるまちおこしなどを参考に、新たな観光資源の開発も検討すべきだ」と問題提起した。
 また、藤沢駅周辺などの慢性的な交通渋滞対策については、菅孝能・藤沢市景観審議会会長が「即効性はなくても、鉄道など公共交通の魅力の再発見、歩いて楽しいまちづくりなどを考えたらどうか」と、からめ手からの対策を提案した。
 午後は「藤沢のこれから」を中心に、グループ討論と全体討論を実施。パネリストとして増田寛也・元総務相、福嶋浩彦・前我孫子市長が加わった。最後に再びアンケートに答え、午後5時半に全日程を終えた。

本記事では,藤沢市における討議型世論調査の取組を紹介.同取組に関しては,同市HPを参照*1.「3,000人のサンプリングをして約1,200件の回答に基づく世論調査」を実施,「その中から300人程度の参加者による集中討論(1日討論)」を行うもの.アンケートでは,「藤沢市民の「藤沢のいま」「藤沢のこれから」に対する意識を幅広く抽出」,「討論」では,「現在から将来にかけて,「藤沢の良さや困ったこと」に対する意識をどのようにお持ちであるかについてを中心」として開催された模様.
「事前アンケート」の「回収状況」は「1,217 通(回収率40.6%)」.そして,「参加予定者の状況」としては,当初の「参加予定人数」は「308名」とあり,その「参加予定者の男女比」では,「男性」が「156名」,「女性」が「152名」とほぼ同数.また,「参加予定者の年齢構成」に関しては,「20歳代:6.7%」,「30歳代:19.1%」,「40歳代:22.7%」.「50歳代:18.9%」,「60歳代:18.9%」,「70歳代以上:13.7%」*2と,20代は一桁とややその割合は他の年代に比べると低いものの,各年代ともに,ほぼ20%前後での構成とされている.討論会の進行は,まずは,「藤沢のいま」の「テーマ」で,「10:00-11:30」から「グループ討論」を「90分」で行い,その後,「全体討論」を「11:40-12:50」の「70分」間実施.「13:00-13:45」での「昼食」後は,「13:45-15:15」に「90分」間での「グループ討論」を「藤沢のこれから」のテーマで行い,「15:30-17:00」の間で「全体討論」を「90分」実施.そして,「17:00-17:30」には「討論後アンケートの実施等」*3とされている.
2008年9月1日付の本備忘録にて取りあげたように,神奈川県では「討議的意識調査」として試行され,「国内初」*4として,2009年12月5日には実施*5,討議型世論調査.「調査は世論の「スナップショット」ではない」*6との考え方が実施される同取組.「同市が策定中の新総合計画の基本構想に反映」することを想定されているものの,「参加者が熟議を経た意見,主張,世論を正統な多数者のそれと見なして受けれ容れるかどうか」*7,実際の取組結果に関しては,要経過観察.

*1:藤沢市HP(総合案内計画・施策総合計画)「「藤沢のこれから,1日討論」〜討論型世論調査

*2:藤沢市HP(総合案内計画・施策総合計画「藤沢のこれから,1日討論」〜討論型世論調査)「総合計画の策定をふまえた全国で初めての討論型世論調査「藤沢のこれから、1日討論の実施」2頁

*3:前掲注3・藤沢市(総合計画の策定をふまえた全国で初めての討論型世論調査)3頁

*4:神奈川県HP(神奈川県記者発表資料2009年10月7日)「国内初の試み!「討議型意識調査」の本格実施に向けて考案者のスタンフォード大学フィッシュキン教授と知事が意見交換を行います!

*5:神奈川県HP(組織と仕事案内総務部自治総合研究センターホームページ)「「討議型意識調査」討議イベントにおけるアンケートの集計結果(速報)

*6:キャス サンスティーン『インターネットは民主主義の敵か』(毎日新聞社,2003年)98頁

インターネットは民主主義の敵か

インターネットは民主主義の敵か

*7:田村哲樹「熟議による構成,熟議の構成」小野耕二編著『構成主義的政治理論と比較政治』(ミネルヴァ書房,2009年)121頁

構成主義的政治理論と比較政治 (MINERVA比較政治学叢書)

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