鯖江市で4月に施行された「市民主役条例」の理念を具体化するための市民有志による条例推進委員会が7日夜、発足した。市民主役のまちづくりを進めていく上で、委員会と市との役割分担や、相互協力関係などを定めた協定を結んだ。
 協定では両者の対等な立場と自主性を認め、情報交換を密にして協力する関係を原則とした。役割と責任では、委員会は市民の意見や要望を集めて市に提案する一方、条例の趣旨を市民に広く理解してもらうよう努める。市は委員会の活動に必要な情報や場所を提供し、調査活動を支援。提案内容を施策に反映するよう努力する。両者が実施状況を市民に報告する義務も明記した。
 条例推進委員会の発足で、条例の理念に沿って市民が市政運営を検証し、施策を提言するなどの基本的な体制が一応整った。発足時の委員は、昨年11月から条例の原案策定に携わった条例策定委員16人のうちの11人。条例施行後、推進・検証体制をどうするか、準備会をつくって協議してきた。市役所での協定締結式では、蓑輪喜通委員長と牧野百男市長が協定書に調印した。蓑輪委員長は「条例づくりの過程で議論した具体案を、実現に向けて一つ一つ実行することが『新しい公共』につながる」と述べた。牧野市長は「市民すべてが行政の舞台で主役となって活躍していただくための条例。社会の変化に対応できる条例となるよう支援していただきたい」と期待を寄せた。(田中宏幸)

本記事では,鯖江市におけるによる「市民主役条例」に関する取組を紹介.同条例に関しては,同市HPを参照*1
「市民主役」というユニークな名称を用いられている同条例.同条例の目的としては,同条例第1条を拝読すると,「この条例は,市民が市政に主体的な参加を果たし,未来に夢と希望の持てる鯖江の実現に向け,市民と市が共に汗を流すという意志」と「それを実現するために市の施策の基本となる事項を定める」ことを通じて,「自分たちのまちは自分たちがつくるという市民主役のまちづくりを進めることを目的」とされている.
同条例の前文では,「わたしたち」を「市民および市をいう」とも規定.全12条の内,第2条の「基本理念」,第3条の「ふるさと学習」,第4条の「鯖江ブランド創造」,第5条の「ふるさと産業」,第6条の「地産地消」,第9条の「情報の集約,発信」,第11条の「市民参画」,第12条の「条例の自己点検,見直し」の9項目に関しては「わたしたち」,一方,第7条の「地域づくり」,第8条の「ボランティア,市民活動」の2項目では「市民」,第10条の「市民と行政の情報共有」では「市」と,各努力規定における主語(主体,又は「主役」でしょうか)に置き,項目毎で,その役割分担が想定されている模様.
同役割分担において,第12条「条例の自己点検,見直し」は,いわゆる「評価法務」*2としても整理ができそう.興味深い.ただ,2008年1月22日付の本備忘録にて取り上げた神奈川県の「条例の見直し」*3の取組では,「行政判断」が前作業として実施され,その後に「議会」への「報告」,住民への「公表」*4の手順が進められたことと対比すれば,同条例では,同作業もまた「市民および市」による実施を想定されている模様.具体的には,同条例案を検討された「(仮称)市民主役条例策定委員会」における『提案書』を拝読すると,「策定委員会で出された具体的な施策案」としては,「「仮称・市民主役委員会」のような組織で,おおむね1年ごとに条例の自己点検を行ない,その結果を広く市民に公表することを提案」「その上で,数年ごとに条例の見直しを考える市民委員会を立ち上げ,条文の改正の是非も検討」*5等が提案.
制定された条例では,同条例案の原文通りに「自主的にこの条例の自己点検や見直しを行うよう努めます」とも規定されており,具体的な作業は,必ずしも判然とはせず,同「自主的」という表現からは,むしろ「法律・条例の指示に基づかず」「導入」される「裁量的市民協働」*6としての判断領域も留保された規定とも読めなくもなさそうか.実際の同取組の運営に関しては,要確認.
なお,蛇足.下名としては,「市民」(又は,住民)は,「主役(いわば,the principal role)」という「役」回りというよりも,「主人(the principal)」そのものと想定がされなくはないものの,「主役」という用法に関しては,こちらもまた,興味深い.

*1:鯖江市HP(最新の改正条例事項鯖江市例規集)「鯖江市民主役条例」(平成22年3月26日,条例第1号)

*2:兼子仁・北村喜宣・出石稔共編『政策法務事典』(ぎょうせい,2008年)408頁

政策法務事典

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*3:神奈川県HP(県の運営情報県庁改革)「条例の見直し

*4:井立雅之(2009)「神奈川県における条例の見直しシステムの導入」『Jurist』No.1391.2009・12・15,129頁

Jurist(ジュリスト)2009年 12/15号 [雑誌]

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*5:鯖江市HP((仮称)市民主役条例策定委員会(仮称)市民主役条例策定委員会の開催状況)『鯖江市民主役条例案について―提案書―』((仮称)市民主役条例策定委員会,平成22年2月3日)11頁

*6:原島良成「市民協働の政策法務」『Jurist』No.1401.2010・7・15,98頁

Jurist (ジュリスト) 2010年 7/15号 [雑誌]

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