【森】渡島管内森町の佐藤克男町長は町内のすべての約8千世帯を対象に、議員定数と議員報酬の引き下げの適否を問うアンケートを始めた。各世帯に今週末までの返送を求めている。背景には議員定数や報酬などをめぐる町長と町議会の対立があるとみられ、佐藤町長は「結果が出れば、町民の声として議会に定数、報酬ともに引き下げを迫りたい」としている。
 質問は、議員定数について「議会で決議した16人」と「町長が(議会に)要請した12人」のどちらが適当か、議員報酬の削減率は「議会で決議した7・7%」と「町長が要請した20%」のいずれを望むかの二つを二者択一式で尋ねた。町の広報誌に回答用の郵便はがきを1枚ずつ挟み、全世帯に配布。はがき代は公費で負担した。

本記事では,森町における議員定数及び議員報酬に関する住民アンケート調査を実施されたことを紹介.同調査の経緯に関しては,同町広報8月号を参照*1
同広報内の記事を拝読させて頂くと,同町長より「4月5日に議会議長宛」として「議員報酬と議員定数の削減」に関する「議会要請書という文書を提出」されたものの,同広報公刊時点では「未だ返事をもらえて」いない状況の下,まず,議員報酬に関しては,「議員が発議という形で議会へ議案を提出し,議員が決議して決める」手続を採用されていることもあり,同町長側から議案提出を行う制度的環境にはないことを前提として,具体的には,「町職員」の「給与が10%から18%の削減を実施」されたことに対して「今年の議員報酬の削減が7.7%」と「余りにもバランスが悪い」との認識に立ち,議員報酬に関しては「20%の削減」を要請されている.一方,議員定数に関しては,同「町の議会でよく発言(質問)される議員は10人未満」であるとの現状認識や「友好町の「静岡の森町」」が同「町より千人ほど人口が多いのですが12人」であるとの比較衡量により,「12人にしていただきたい」との要請されている.以上のような経緯から,本記事にて報道されているように,「町民の皆さんのご意思とご意見を聞かせていただきたく思い」に立ち,上記広報に「はがきを添付」*2され,意識調査を開始された模様.
「戦後日本の自治体運営」においては「「対立」を抑える術が非常に発達して,実際に“対立”が顕現すること自体が少なかった」として,「権力分立は統治制度の1つの知恵であり,抑制と均衡という「対立」が発生することは,むしろ望ましいこと」*3とも解されることもあるなかで,同町議会からは,いわば回避された対立課題ともいえる議員報酬・議員定数.調査結果次第では,首長と議会議員との「対立」も誘発されることも想定されなくもなさそう.
例えば,議員報酬に関しては,「金額水準が妥当であるかどうかについての判断は,それぞれの地方公共団体の裁量の問題」とされるものの,「議員がお手盛りで高水準の報酬を定める虞があることをかんがみ,附属機関として特別職報酬等審議会に諮問しその答申を得て条例の改正を行う方法が一般的」*4とも観察されているなかで,同調査の結果は,同種審議会の資料として用いられることに止まるのか,又は,自発的な「議員の発議」を促す誘因にもなりうるのか,更には,と例えば「現行」通りを選択された場合での「理由・根拠」*5はどのように提示されることになるのか,同調査の結果の用法や作用に関しては,要経過観察.

*1:森町HP(おすすめ情報広報もりまち広報8月号)「広報もりまち」No.65,平成22年8月号,1頁

*2:前掲注1・森町(広報もりまち)1頁

*3:金井利之「首長と議会の対立を超えて」『ガバナンス』No.112,2010年8月,22頁

ガバナンス 2010年 08月号 [雑誌]

ガバナンス 2010年 08月号 [雑誌]

*4:碓井光明『政府経費法精義』(信山社,2008年)440〜441頁

政府経費法精義

政府経費法精義

*5:大森彌「地域主権戦略大綱と自治体議会の役割」前掲注3・所収・22頁