三重県伊勢市鈴木健一市長は13日の記者会見で、庁内の会議を効率化して無駄を省こうと、会議に参加する市長や職員の人件費を1秒ごとにパソコンのモニターで表示する「ミーティングタイマー」を導入すると発表した。伊勢市は「自治体で同様のタイマー導入の例は聞いたことがない」としている。
 計算ソフトのエクセルファイルを利用。市長、部長級、一般職級などの平均月給を1秒単位で割った額を最初に設定し、会議に参加する各職級の人数を入力すると、1秒ごとに人件費が加算されていく仕組み。市長の場合、1秒当たりの人件費は1・6円。導入に伴う経費は発生しない。導入時期は未定だが、市長と主要な部長が参加する20日の会議から試験運用を始め、最終的には全職員を対象にする予定。同市は人件費を減らすため、2013年4月までに職員165人の削減を目指している。鈴木市長は「職員自身に人件費がかかっているという認識が足りない。(導入で)会議に緊迫感が出る」と話している。

本記事では,伊勢市において,庁内で開催される会議に関して,同会議へ参加される職員等の人件費を表示する取組を紹介.同取組に関して,同市長のご自身のブログには経緯が掲載されているものの,同市HP内の「記者会見」*1へは掲載されおらず.同サイトの更新後,要確認.2009年10月23日付の本備忘録にて記した,下名の中心的観察課題である,「自治体内会議体」の観点からは,非常に興味深い取組.
「組織では,会議によって正式に意志が決定され」ており,まさに自治体内には「さまざまな会議がある」*2.その多様性がある「自治体内会議」では,「アイディアの創出」,「情報の意図とその解読を合致」,「成員性を改めて確認」*3が企図されており,加えて,「会議の場こそ,閉鎖型任用制の下での職場内研修の場」として「下級職員にも重要事案への参画意識を与える」*4こともあり,いわば,「参加者の動機付け」*5の効用も期待される.
その一方で,会議を通じた「政策対応」により「迅速性がかけ,タイミングを失してるきらい」*6も生じることとなる.同市における同タイマーを通じた人件費の顕示の取組は,「事実情報を提供」*7することにより,会議時間の長期化という「習慣」の「旧弊効果」*8を「矯正(correction)」*9し,まさに,「早く終わる会議は良い会議」*10如く,会議運営の迅速化も想定されそうか.加えて,「一見したところ適正な決定手続きであっても,その実,情報共有を妨げ反対意見の表面化を阻み,不正な案件を通しやすい決定手続きである可能性」*11も内包されることもあるとも観察される.
人件費をもとに,個別の会議体による効果と間で分析が図られると,また,更に興味深そう.今後の取組状況は,要経過観察.

*1:伊勢市HP(市の案内市長室)「記者会見

*2:田尾雅夫『公共経営論』(木鐸社,2010年)235頁

公共経営論

公共経営論

*3:前掲注1・田尾雅夫2010年:236頁

*4:西尾勝行政学 新版』(有斐閣,2001年)315頁

行政学

行政学

*5:H.A.サイモン,V.A.トンプソン, D.W.スミスバーグ『組織と管理の基礎理論』(ダイヤモンド社,1977年)250頁

組織と管理の基礎理論 (1977年)

組織と管理の基礎理論 (1977年)

*6:前掲注4・西尾勝315頁

*7:藤井聡社会的ジレンマの処方箋』(ナカニシヤ出版,2003年)52頁(後期開講の学部演習の来週のテキスト.制度設計を考えるうえでも,非常に参考になります)

社会的ジレンマの処方箋―都市・交通・環境問題のための心理学

社会的ジレンマの処方箋―都市・交通・環境問題のための心理学

*8:前掲注7・藤井聡2003年:43頁

*9:前掲注7・藤井聡2003年:52頁

*10:森田朗『会議の政治学』(慈学社,2007年)2頁

会議の政治学 (慈学選書)

会議の政治学 (慈学選書)

*11:岡本浩一, 足立にれか, 石川正純『会議の科学』(新曜社,2006年)174頁

会議の科学―健全な決裁のための社会技術 (組織の社会技術2)

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