京都市門川大作市長は20日、財政健全化に向けて2011年度予算編成から、予算総額を「職員給与」と公共工事に充てる「投資的経費」、補助費や扶助費を含む「消費的経費」の3区分に分類し、それぞれに上限額を設ける新方式を採用する方針を示した。編成手法の見直しは04年度以来7年ぶり。市議会が開いた普通決算特別委員会の市長総括質疑で明らかにした。
 新方式では、部局の枠を取り払い3区分に予算をまとめた上で、市長が各部局から上がってくる要求内容を精査し、部局横断的に政策の重要度や緊急性などを判断し予算額を決定する。投資的経費に含まれる市債発行額にも厳格な上限を設定する方針で、歳出抑制につなげる。
 門川市長は委員会で「縦割りの反省もあり、局横断的に必要な予算を選択する。投資枠などを設け、全市的な視点から優先枠を決める」と述べた。市はこれまで、前年度予算をベースに各部局の予算枠を圧縮して設定し、各部局がその枠の範囲内で政策判断して予算を決める手法を取ってきた。従来の手法では各部局の専門性を予算編成に反映させる利点がある一方で、前年度予算を踏襲するため全市的な政策優先度の見直しが難しく、予算規模の固定化につながる側面があった。
 学識経験者らでつくる市財政改革有識者会議(座長・伊多波良雄同志社大教授)も今月、全市的な政策判断を重視する新たな予算編成システムへの転換を市に提言していた。市は11年度予算で、臨時対策債を除く市債発行額を本年度当初予算の約580億円からさらに約100億円圧縮する目標を掲げている。ゼロベースでの事業見直しが必要で、市は11月にも編成作業を本格化させる。また門川市長は委員会で、予算編成プロセスを透明化し市民と情報共有するため、各部局の予算要求内容についても査定前に公表する方針を示した。

本記事では,京都市における予算編成の取組について紹介.
2010年10月5日付の本備忘録にて取り上げた,同市において設置された「京都市財政改革有識者会議」が取りまとめた提言『京都市の財政改革に関する提言〜低成長,少子高齢化時代にふさわしい財政運営の考え方〜』では,本記事にも紹介されているように,「財政の構造改革を進めつつ,京都市の重要政策を推進するためには,政策評価と事務事業評価からなる行政評価システムとの連動を高め,縦割りではない全市的観点に立った政策判断を一層重視する予算編成システムへの見直しが欠かせないところ」*1とも提言.本記事では,同提言内容を受けての取組の模様を紹介.同取組の詳細に関しては,現在のところ,同市HPでは把握できず,残念.公表後,要確認.
本記事にも紹介されているように,同市では,2004年度から,「予算を「政策重点化枠」と「局配分枠」の2つに区分され,「政策重点化枠」では,「政策評価結果などを勘案し,全市的観点から定めた政策重点化の方針に基づき,新規・充実事業に対して局横断的に予算を配分」し,「局配分枠」では,「各局がすべての事務事業の予算を要求し,理財局が一件ずつ査定を行う「一件査定型予算編成」方式を廃止し,各局があらかじめ配分された財源の範囲内で主体的に事業別の予算額を決定する「財源枠配分型予算編成」からなる,「戦略的予算編成システム」*2を採用.前者の「政策重点化枠予算」の編成に関しては,「政策重点化の方針」を「政策評価制度の評価結果や各局の重点政策の状況などを勘案」し,「市長をトップとする政策推進会議において決定」,その後,「9月下旬を目途に公表」を行う手続が想定されており,「各局が政策重点化の方針に基づき新規・充実事業を発案」し,「精査」を通じて,「限られた財源の戦略的,重点的配分を徹底」*3されることを企図されていた模様.後者の「局配分枠予算」の編成では,「各局に配分する編成財源」を,「次年度収支見通しや各局の義務費の状況などを勘案」し,「政策重点枠予算」と同様に,「市長をトップとする政策推進会議において決定」,その後,「9月下旬を目途に公表」,「各局」では「事務事業評価制度による個別の事務事業の有効性や効率性」を「事後評価」した結果を踏まえて「事務事業の見直」すことで,「個別の事務事業に予算を割り振る権限を原則として各局の長に委譲」し,「各局の部・課が予算を編成する」で「限られた財源の効率的配分を徹底」*4されることが企図されていた模様.
本記事を拝読させて頂くと,同方式では,「各部局の専門性を予算編成に反映させる利点がある一方」,「前年度予算を踏襲するため全市的な政策優先度の見直しが難しく」なり,加えて「予算規模の固定化につながる側面」があったとも報道されている.そのため,同市では,今後は,「予算総額」を「職員給与」,「投資的経費」,「消費的経費」の「3区分に分類」され,「それぞれに上限額を設ける新方式」を採用される,とのこと.上記の通り,同方式の詳細を把握していないため,同3区分の編成方式等は,今一つ判然とはしないものの,「部局の枠を取り払い」との報道も踏まえると,現方式が,2008年4月2日同年10月25日2009年10月17日同年10月18日付同年11月27日付2010年7月14日の各本備忘録でも取り上げた,部局単位での枠配分制度とすれば,部局単位の「枠」を超え,いわば,費目単位の「枠」を設けた,大枠配分制度との理解が適当か.加えて,この大枠に対して,「要求限度の範囲内で,優先順位の選択を厳しく行うことを要求側に課することで,安易な予算要求を抑える機能」を持つともされる「シーリング」*5も設けられる模様.果たして,三費目単位の,大枠配分制度における「財源のやりくり算段」*6を,どの主体が,どの時期に,どの程度の精度で行われることになるのだろうか,非常に興味深そう(2008年4月2日同年10月25日2009年10月17日同年10月18日付2010年9月10日付の各本備忘録で取り上げた,自治体内における「財政部(局)統制」を頑強化されるのでしょうか).要経過観察.

*1:京都市HP(市の組織行財政局各課の窓口財政課財政健全化推進本部会議・財政改革有識者会議)「京都市財政改革有識者会議京都市財政改革有識者会議」から提出された「京都市の財政改革に関する提言」について)「京都市の財政改革に関する提言〜低成長,少子高齢化時代にふさわしい財政運営の考え方〜」(京都市財政改革有識者会議,平成22年10月)33頁

*2:京都市HP(市の組織行財政局財政課予算・決算)「戦略的予算編成システムへの改革〜「京都市版行政評価システム」を活用した予算編成手法の導入〜」(平成15年7月25日)2頁

*3:前掲注2・京都市(戦略的予算編成システムへの改革)3頁

*4:前掲注2・京都市(戦略的予算編成システムへの改革)3頁

*5:長谷川淳二「予算編成のトレンド」『財政運営システムと予算の新展開』(ぎょうせい,2007年)153頁

財政運営システムと予算の新展開 (シリーズ 地方税財政の構造改革と運営)

財政運営システムと予算の新展開 (シリーズ 地方税財政の構造改革と運営)

*6:小島昭『現代の公共政策』(筑摩書房,1990年)367頁

現代の公共政策

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