横浜市は、国に導入を求めている「大都市制度」の具体像を検討する「横浜市大都市自治研究会」を設立する。委員には、行政学や財政学などを専門とする有識者6人が就任する予定で、12日に初会合を開く。年内に第1次提言をまとめ、国の議論の進み具合を見極めながら、市として独自の大綱を策定する。
 大都市制度は、政令市などの大きな自治体に対し、現在よりも大きな権限と財源を移譲して県との二重行政を改め、自立的な地方自治の実現を目指すもの。大阪や名古屋、新潟の各市など、全国的に導入を求める動きが広がっている。横浜市は先月下旬、川崎市と共同研究を進めることで合意しており、これと並行して市としての考えを整理し、国への働きかけ強化につなげたい考えだ。研究会では、大都市制度導入のメリットや、制度の枠組み・機能をどうすべきかなどの視点から、大綱策定に向けて議論を進める。

本記事では,横浜市において,大都市制度の検討に関する研究会の設置と開催に関して紹介.同研究会の設置と開催に関しては,同市HPを参照*1(取材の希望確認はあるようですが,下名のような外部のものも傍聴ができるのかなあ).
同研究会は,「大都市にふさわしい地方自治制度の検討にあた」り「専門的見地から本市への助言・提言を得るため」に設置.「当面の検討内容」としては,同市が2010年5月にとりまとめた「新たな大都市制度創設の基本的考え方」*2を踏まえて,「新たな大都市制度創設に向けた基本的姿勢と基本的枠組みを整理・具体化」し「地方自治制度の一類型としての「横浜特別自治市構想」の大綱を策定する」うえでの「知見」*3を得ることを目的とされて,「主な検討の視点」*4には,次の三点が想定されている.

横浜市が目指す特別市型の大都市制度は補完性の原理や近接性の原理からも,国や市民にメリットが大きいことをどのように提示すべきか.
特別自治市広域自治体から独立したとしても,広域自治体の広域行政に影響を及ぼさないことをどのように提示すべきか.特別自治市の設置は,大都市による税収の独占につながるという指摘に対する処方箋をどのように提示すべきか.
○ 人口が 200 万を超える大都市に対して,一人の首長と一つの議会では不十分という指摘に対して,解決の処方箋をどのように提示すべきか.特別自治市に設置される区の具体的機能をどのように考えるべきか.

基本的には,2011年7月29日付の本備忘録でも記録した「第31回指定都市市長会議」にて,より具体的な提案としてまとめられている「特別自治市*5のアイディアが,他の大都市制度の選択肢に比べて,「焦点」*6となっている模様.
上記「基本的考え方」のなかでは「他の指定都市や市町村,府県さらには国などとも率直に議論し,連携を図りながら.在るべき地方自治制度の全体像を共に模索」*7とも述べている.そのためか,2011年7月29日付の本備忘録にて記録したように同市と川崎市による共同研究を開始され,更には,同市では,2010年10月17日付及び2011年6月29日付の両本備忘録にて記録したように,予てより「新たな大都市制度における広域連携・財政調整に関する研究会」を設置し,2011年3月には「論点整理」*8も行われている.この度,新しく同研究会を設置されることにより,いわば「多極分散型」*9の大都市制度論議の様相にあるとも整理できなくはないものの,異なる場での審議を通じて,大都市制度論議の「希釈化」*10ならずに確りと「濃縮化」に至るか,同研究会の審議もまた,要経過観察.
なお,蛇足.上記の「主な検討の視点」の一つめにも記載されている「特別市型」という言葉.しばし,大都市制度論議のなかでは,慎重に用いられてきた(用いられてこなかった)言葉ではあるものの,「特別市型」であることを明示するとなれば,嘗て,特別地方公共団体としての特別市制度に関する規定が設けられていた時期での地方自治法において,同法271条にいう区長公選制に対しては,どのような見解を示されるのであろうか.これまた,要確認(勿論,あくまで「型」であり「特別市」ではないとも言えますが).

*1:横浜市HP(記者発表資料新たな大都市制度の具体像を検討する「横浜市大都市自治研究会」を設置します! (政策局 大都市制度推進課))「新たな大都市制度の具体像を検討する「横浜市大都市自治研究会」を設置します!」(政策局大都市制度推進課,平成23年8月9日)

*2:横浜市HP(記者発表資料記者発表資料 (2010年5月)横浜市の基本方針を策定しました!「新たな大都市制度創設の基本的考え方」 《基本的方向性》)「新たな大都市制度創設の基本的考え方 《基本的方向性》」(横浜市,平成22年5月)

*3:前掲注1・横浜市(新たな大都市制度の具体像を検討する「横浜市大都市自治研究会」を設置します!)1頁

*4:前掲注1・横浜市(新たな大都市制度の具体像を検討する「横浜市大都市自治研究会」を設置します!)1頁

*5:指定都市市長会HP(指定都市市長会議「第31回指定都市市長会議」の開催)「資料2-2 新たな大都市制度の創設に関する指定都市の提案(詳細版)

*6:秋吉貴雄,伊藤修一郎,北山俊哉『公共政策学の基礎』(有斐閣,2010年),189頁

公共政策学の基礎 (有斐閣ブックス)

公共政策学の基礎 (有斐閣ブックス)

*7:前掲注1・横浜市(新たな大都市制度の具体像を検討する「横浜市大都市自治研究会」を設置します!)8頁

*8:横浜市HP(政策局大都市制度推進室大都市制度推進課広域連携・財政調整に関する研究会)「新たな大都市制度における広域連携・財政調整のあり方論点整理」(横浜市 新たな大都市制度における広域連携・財政調整に関する研究会,平成23年3月)7〜8頁

*9:西尾勝地方分権改革』(東京大学出版会,2007年)206頁

地方分権改革 (行政学叢書)

地方分権改革 (行政学叢書)

*10:金井利之『自治制度』(東京大学出版会、2007年)178頁

自治制度 (行政学叢書)

自治制度 (行政学叢書)