広島県広島市が11年半ぶりに人事交流を再開したのに合わせ、湯崎英彦知事と松井一実市長は3日、県庁で会談した。連携強化に向け人事交流を拡大することで一致した。
 湯崎知事と松井市長は5月、1999年度末で途絶えていた人事交流の再開に合意。今月1日から2013年3月末まで、都市政策と観光の分野で2人ずつの相互派遣を決めた。3日の会談で、湯崎知事は「効率的な行政運営につながる」と強調。松井市長は「広島西飛行場の跡地利用など課題解決で連携を」と期待を示した。都市政策では二葉の里地区(東区)などJR広島駅周辺の再開発、観光では来年1月からのNHK大河ドラマ平清盛」の放送に合わせた振興策などの共通課題に取り組む。

本記事では,広島市広島県における人事交流の取組を紹介.市と県の各HPでは,同取組の詳細を現在のところ把握できず,残念.
自治体と国との間での人事交流に関しては,国からの「出向者数というデータを見るかぎり」「近時減少傾向」にあり,一方「自治体側」からは「中央省庁への派遣職員数を増加させてきている」*1とも観察される,自治体と国との間の人事交流の取組.方や,本記事でも紹介されている政令指定都市道府県間では,日経産業地域研究所が1992年から実施し『日経グローカル』にて公刊されている「都道府県・政令市の人事交流調査」*2がcf.となる.同調査結果をもとにカウントしてみると(目覚めの寝ぼけながらで,カウントしているため,誤りがあるかもしれませんが),道府県から政令指定都市への出向・派遣者の「総数」は91名,方や,政令置市都市から道府県への出向・派遣者の「総数」は113名,とあり,政令指定都市道府県間の人事交流の「総数」からは,やや政令指定都市側から道府県への出向・派遣超過の様相も観察できそう.
内訳を見てみると,北海道から札幌市へは3名,方や,札幌市から北海道は3名,宮城県から仙台市へは2名,方や,仙台市から宮城県へは20名,埼玉県からさいたま市へは4名,方や,さいたま市から埼玉県へは13名,神奈川県から相模原市へは17名,相模原市から神奈川県へ5名,新潟県から新潟市は14名,方や,新潟市から新潟県へは12名,静岡県から静岡市浜松市へのそれぞれへの実数は判然とせず,あわせて18名,方や静岡市から静岡県へは3名,浜松市から静岡県へは3名,愛知県から名古屋市には1名,方や,名古屋市から愛知県へは5名,京都府から京都市は5名,方や,京都市から京都府へは6名,大阪府から大阪市へは18名,方や,大阪市から大阪府へは18名,大阪府から堺市へは5名,方や堺市から大阪府へは5名,岡山県から岡山市へは9名,方や岡山市から岡山県へは10名とある.
仙台市宮城県さいたま市と埼玉県,名古屋市と愛知県のように市側からの出向・派遣数が多い場合,神奈川県と相模原市のように県側からの出向・派遣数が多い場合があるものの,人事交流が行われている政令都市都市と道府県の間では,概ね,1の職員数の範囲内での人事交流が図られている様子が分かる.また,市から県への出向・派遣が行われている政令指定都市は3都市あり,まずは,横浜市から神奈川県への4名,次いで,本記事でも紹介されている広島市から広島県への9名,そして,福岡市から福岡県への2名の状況にあり,これらもまた,上記の政令指定都市側から道府県への出向・派遣超過傾向の一つの要因となっているとも考えられそう.
自治体と国との間での人事交流では,「出向元」と「出向先」での「役職格差」*3の存在から,人事交流の職員間での,いわば,職位の非対称性,そして,業務の非対称性も観察されることもある.本記事及び上記の調査結果では,その職位までは把握できないため,役職格差の有無は判然とはしない.ただ,実際の職位,業務といった人事交流による質的な把握もまたに,興味深い観察課題.

*1:稲継裕昭『地方自治入門』(有斐閣,2011年)98頁

地方自治入門 (有斐閣コンパクト)

地方自治入門 (有斐閣コンパクト)

*2:都道府県・政令市の人事交流調査 「官民」「自治体間」ともに縮小傾向」『日経グローカル』No.117,2011.8.1,23〜25頁(表4及び表5)

*3:礒崎初仁・金井利之・伊藤正次『改訂版 ホーンブック地方自治』(北樹出版,2011年)75頁

ホーンブック 地方自治

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