〈起業〉という幻想 ─ アメリカン・ドリームの現実

〈起業〉という幻想 ─ アメリカン・ドリームの現実

厚生労働省は24日、市町村が運営する国民健康保険国保)の基盤強化をめぐり、地方団体代表との協議の初会合を開き、低所得者向け保険料軽減策の具体化などを進めていくことで一致した。保険料軽減策に関しては、政府がまとめた社会保障と税の一体改革案で、約2200億円の公費投入が明記されている。 会合には、全国知事会などの地方団体を代表して、福田富一栃木県知事と岡崎誠也高知市長、斎藤正寧秋田県井川町長が出席。福田知事は「国保の構造的な問題の解決に向け、国は財政責任を明確にすべきだ」と述べた。。

本記事では,厚生労働省において「国民健康保険制度の基盤強化に関する国と地方の協議」が開催されたことを紹介.同協議に関しては,同省HPを参照*1.配付資料等は,現在のところ,公表されておらず,残念.
当日の「議題」を拝読させて頂くと,「市町村国保の構造的問題への対応」として,「低所得者対策等のあり方」「事業運営・財政運営の広域化」「財政支援のあり方など」が審議された模様.「社会保障・税一体改革成案について」にも明記された「市町村国保の財政運営の都道府県単位化・財政基盤の強化」*2を踏まえた審議が行わた模様.「市町村国保の財政運営の都道府県単位化」の具体的内容は判然とはせず,同文言を素直に読むと,保険者の「広域・統合化」*3はあるとしても,保険者としてに市町村が「ロックインから抜け出す」*4ことを明記したものではないとも考えられそう.ただ,2011年10月24日付の朝日新聞では,当日の審議の様子も紹介されており,「全国知事会は慎重意見を表明」,方や「再編に前向きな市町村」*5ともある.資料と議事概要の公表後,要確認.
なお,蛇足.同会合では「国」と「地方」との名称を用いられている.そこで実際の同会合への出席者を拝見させて頂くと,「地方」側に関しては,本記事からは執行三団体から出席された模様.方や,「国」側の出席者は,全国知事会のサイトを拝読させて頂くと,「厚生労働大臣」「厚生労働副大臣」「厚生労働大臣政務官*6とある.「国」と呼ぶにはやや狭義の感がなくはないものの,他府省からの出席は皆無であったのだろうか.
ただ,考えてみると「国」と「地方」と協議を経る場合,現在では「国と地方の協議の場」で審議するという選択肢も考えられなくもない.国と地方の協議の場に関する法律第3条では「協議の対象となる事項」は,「国と地方公共団体との役割分担に関する事項」「地方行政,地方財政地方税制その他の地方自治に関する事項」そして「経済財政政策,社会保障に関する政策,教育に関する政策,社会資本整備に関する政策その他の国の政策に関する事項のうち,地方自治に影響を及ぼすと考えられるもの」の「事項のうち重要なもの」*7と規定されている.国民健康保険制度に関しては,「重要なもの」ではないとは決して思わないものの,果たして,同場での協議が回避され,同省設置の協議の会合にて審議されることになるのは,何故だろう.これら重要性基準には合致しないと解されたのだろうか.
例えば,専門的な審議を要するために同省設置の国と地方の協議の会合を設けられた(る)こともその理由としても考えられなくもない.ただ,専門性という理由には,同法第5条にいう同協議の場への「分科会を開催し,特定の事項に関する調査及び検討」を図るためとして,2011年8月12日に開催された「国と地方の協議の場」にて,その設置が審議された「社会保障・税一体改革分科会」*8にて審議を行う術も考えられなくはない.又は,将来的には分科会での審議を見通して,まずは,その前捌き的な審議の場として,同省設置の国と地方の協議の会合が開催されているのだろうか.
国と地方の協議の場更には同場の分科会を選択せず,同省設置の国と地方の協議の会合での審議を選択されることは,前者の場における課題設定手続上の課題も考えさせられる.「国の側には重要性を軽く見るバイアスが確実に発生する」*9との分析はあるものの,実際に,今後の「国と地方の協議の場」と,各府省の分担管理により開催された場合の国と地方の協議の会合との間での「決定アジェンダ*10に至るまでの審議事案の相補性や連続性,又は独立性は興味深そうな観察課題.要経過観察.

*1:厚生労働省HP(政策について審議会・研究会等その他の検討会、委員会等)「国民健康保険制度の基盤強化に関する国と地方の協議

*2:内閣官房HP(政策課題各種本部・会議等の活動情報社会保障改革社会保障・税一体改革成案について」(平成23年7月1日,閣議報告)5頁

*3:山岡淳一郎『国民皆保険が危ない』(平凡社,2011年)107頁

国民皆保険が危ない (平凡社新書599)

国民皆保険が危ない (平凡社新書599)

*4:北山俊哉『福祉国家の制度発展と地方政府』(有斐閣,2011年)124頁

福祉国家の制度発展と地方政府 --国民健康保険の政治学 (関西学院大学研究叢書)

福祉国家の制度発展と地方政府 --国民健康保険の政治学 (関西学院大学研究叢書)

*5:朝日新聞(2011年10月24日付)「国保運営の広域化、知事会は慎重 市町村と温度差

*6:全国知事会HP(国等との意見交換)「国民健康保険制度の基盤強化に関する国と地方の協議について(平成23年10月24日)

*7:e-GovHP「国と地方の協議の場に関する法律」(平成二十三年五月二日法律第三十八号)

*8:内閣官房HP(政策課題国と地方の協議の場国と地方の協議の場 平成23年8月12日(金))「資料1−2 社会保障・税一体改革分科会運営規則(案)

*9:北村喜宣「「国と地方の協議の場に関する法律」の成立に寄せて」『都市とガバナンス』vol.16,2011年9月,7頁

都市とガバナンス 第16号

都市とガバナンス 第16号

*10:John W. Kingdon(2002)Agendas, Alternatives, and Public Policies,Longman Pub Group,4.