医師不足に悩む一戸町は、将来町の医師になってもらおうと、ベトナムから女子学生(18)を招き、医師免許取得を支援する独自の医師養成策に乗り出した。厚生労働省によると、自治体が海外の学生を医師に養成する例は初めてとみられる。
 町は人口約1万4千人だが、開業医は4軒だけで、病院はあるが、産科の医師がいないなど医療過疎が深刻。「10年スパンの取り組み」=稲葉暉町長(66)=で優秀な医師を確保する狙いだ。学生はホーチミン市に住むリュー・ホン・ゴックさん。母親も医者で、海外で医学を学びたいとの希望を持っていた。日本語通訳として活躍する祖母が町の国際交流協会と知り合いだったのが縁で、ゴックさんの希望が町に伝わり、昨年、稲葉町長がベトナムを訪問。将来、ゴックさんが一戸町で働く意思を確認した。
 ゴックさんはホーチミン市の国家大学付属英才高校を卒業した後、早ければ秋ごろに来日。県内の日本語学校で2年ほど学んだ後、大学医学部や医大への進学を目指す。医師免許取得までの生活費や学費などは町が大半を補助する予定。同町健康福祉課の柴田一美課長は「国内でも医師確保に向けて活動を続けているが、厳しいのが現状だ。将来の町の医療体制を考えた上での施策であり、来日する留学生を全力でサポートしていきたい」と語る。
 一方、留学生の学費や生活費に税金を投入することや、医師確保対策としての効果については「批判的な意見もあるのは承知している。しかし、町として留学生の学力や意識の高さを十分に確認した上で養成を決めた」と強調。「今後も施策の内容や意義について、町民に丁寧に説明していきたい」と話している。一戸町には県立病院があるが、数年前に医師不足のため眼科や産科が診察休止に。町や近隣の自治体でつくる2次医療圏の人口10万人対医師数(2010年)は141・3人で、全国の230・4人を大きく下回る。

本記事では,一戸町における医師養成の取組を紹介.
「1980年代半ば以降」,「医療費の増加」の抑制目的からの「医師の養成数」の制限が効きすぎたのだろうか,結果的には,逆機能であるかのように,「医師数の地域間格差」,そして「医師不足の弊害」が顕在化.これに対して,2006年以降からは医療供給政策の「転換」*1が図られつつあるとは解される医師供給政策.
同町が位置する同県が整理されている2008年度の基礎的なデータを拝見させて頂くと,同政策の転換後の同県では,「人口10万人対医師数」では191.9人と経年的な人数では「徐々に増加」傾向にはあるものの,「都道府県別では第37位」,「都道府県別1km2あたり医師数」では,同県の広大な面積もあり0.71人*2との現状にある.同県では「[いわて]医学生奨学金制度」*3を設け,「貸与を受けた」方は,「卒業後,医師として県内の公的病院(県立病院や市町村立の医療機関など)に,一定期間勤務」が求められることになる.
本記事を拝読させて頂くと,同町では,海外からの学生に対して医師免許取得の支援を実施される模様.上記の「[いわて]医学生奨学金制度」との併用の可否や,受給後の就労要件等は,現在のところ同町HPでは確認できないため把握はできない.残念.公表後,要確認.

*1:飯間敏弘「医療政策 ―医療費抑制策の推進とその変容―」森田朗・金井利之編著『政策変容と制度設計―政界・省庁再編前後の行政―』(ミネルヴァ書房,2012年)332頁

*2:岩手県HP(岩手県医師支援推進室岩手県の現状と取組)「医師不足の現状

*3:岩手県HP(保健福祉部医療推進課【医療】医師の養成・確保)「[いわて]医学生奨学金制度について