米民泊大手のAirbnb(エアビーアンドビー)は20日岩手県釜石市と観光促進に関する覚書を締結した。Airbnbが日本の自治体と手を結ぶのは初めてのことだ。釜石市は2019年に開催予定のラグビーワールドカップの会場の1つ。観光客の増加を見込み、いち早く協力を決めた格好だ。もっとも、旅館業法の絡みから規制緩和の実験区である国家戦略特区でないと手掛けられない民泊ビジネス。特区でもない釜石市が手を挙げられた裏には、一つの秘策があった。
Airbnb使った訪日客は6倍に
 民泊とは自宅の空き部屋や使っていない別荘などに有料で旅行者を泊めること。訪日外国人客(インバウンド)の増加とホテル不足を背景に、利用者は急増している。2015年にAirbnbのサービスを使った訪日客は約138万人で、前年比6倍の水準に伸びた。
 国内で宿泊施設として営業するには旅館業法で定める許可が必要だ。ただ足元でのホテル不足は深刻。現状では政府の国家戦略特区に限って民泊を旅館業法の適用除外として認めることになった。東京都大田区大阪市が民泊を進める国家戦略特区となったが、Airbnbで提供される部屋の多くはいまだ「ヤミ民泊」であるのが実情だ。
■「三陸地域の観光を促進」
 国家戦略特区でない釜石市Airbnbといち早く連携できたのは、すでにある枠組みを活用したためだ。その制度とは農林水産省が「グリーン・ツーリズム」の一環として推進する「農家民泊」。釜石市はこの制度を活用し、合法的に訪問客を泊められる農家をAirbnbに登録する。現在は20軒ほどの農家が同制度を活用しており、2019年までにサービスを始めたい考え。また、政府が民泊関連の法改正に踏み切れば、「紹介する部屋の幅も広げていきたい」(釜石市)としている。
 釜石市の野田武則市長は「訪問客をお迎えできることを今から楽しみにしている。Airbnbと覚書を締結したことで三陸地域の観光を促進し、東日本大震災からの復興を加速したい」とコメントした。リオデジャネイロ五輪では8万5000人以上がAirbnb経由で民泊しており、ホテル業界の「黒船」の勢いはもう無視できない。(岸本まりみ)

本記事では,釜石市における観光促進の取組を紹介.
本記事によると,同市は同社との間で2016年10月20日に「観光促進に関する覚書を締結」したことを紹介.2016年10月20日付の時事通信の配信記事によると,同「覚書」の内容は5項目あり,具体的には次の通り.
まずは,「民泊の推進をはじめ,釜石市の更なる観光振興を図るため,潜在旅行者を釜石市に誘致するために協働する」こと,次いで,「両当事者に適した時期及び方法で,釜石市の特色を打ち出すマーケティング・キャンペーンを実施する」こと,三つめに,「2019年のラグビーワールドカップを始めとする大規模なイベント開催時における釜石市への旅行者の来訪に対応するために,地域内外の観光関係者等とのパートナーシップを通じて,既存の及び潜在的なホームステイの提供者に対してAirbnbを含む新たなインターネット・プラットフォームへの適応を促進するための基本的なトレーニング及び関連資料を提供する」こと,四つめに,「必要に応じて,非常用宿泊施設の提供にAirbnbのホストコミュニティを活用する地域災害対応プログラムを策定し,釜石市の地域防災計画を支援する」こと,最後に「両当事者のソーシャルメディアその他のコミュニケーション手段を通じて,本覚書の認知度を向上させる」*1こととされている.
本記事では,「民泊の推進」において同市が実施している「農家民泊体験」*2をもとに実施する方針を紹介.両者間で「合意に至る」*3結果となる同覚書に基づく事業の実施状況は,要観察.

*1:時事通信(2016年10月20日付)「釜石市とAirbnb、観光促進に関する国内初の覚書を締結

*2:釜石市HP(楽しむ観光グリーン・ツーリズム)「農業体験

*3:伊藤正次,出雲明子,手塚洋輔『はじめての行政学』(有斐閣,2016年)198頁

はじめての行政学 (有斐閣ストゥディア)

はじめての行政学 (有斐閣ストゥディア)