東京都は15日、待機児童解消に向けた総額35億円の追加対策を発表した。施設の賃借料補助の上限額を引き上げ、賃料が高くて保育所が整備しにくい場所での開設を後押しする。都内では騒音を懸念する住民が保育所整備に反対する事例も生じており、防音壁の整備費も都独自で補助する。保育所整備の壁となる都市部特有の課題に対応する狙いだ。
 小池百合子知事が15日の知事会見で表明した。
 賃借料補助の引き上げは、保護者の要望が多い駅近くの整備などを促す。賃借料補助は、これまで地価に応じて金額に4段階の区分があった。この区分を廃止し、地価にかかわらず、年額4500万円に引き上げる。補助金の支給期間は従来は開設後5年間だったが、6年目以降も補助する。
 都市部では近年、子どもの声が生活環境を悪化させるなどの理由で、保育所の予定地周辺の住民が開設に反対する動きが続出。都内でも計画中止に追い込まれた事例もある。園庭の砂ぼこりが問題となるケースへの対応も必要として、防音壁や人工芝の設置費用を1カ所あたり最大644万円補助する。
 不足する保育士については、認可外だが、国から認可保育所並みの補助金を受けられる企業主導型保育所で働く人の処遇改善策を追加する。1施設あたり100万円程度を配分し、処遇改善に充ててもらう。
 自社の従業員の子どもだけでなく、地域の子どもも預かる施設が対象。都内には現在約50カ所の企業主導型保育所があり、今後も増加が見込まれる。企業主導型保育所で働く保育士の待遇改善を通じ、保育の受け皿を広げる。
 小池知事は昨秋、待機児童問題に対応するため、126億円の緊急対策をまとめた。17年度予算でも過去最大の1381億円を待機児童対策に投じている。それでも、子どもを預けて働きたい女性の増加に政策対応が追いつかず、17年4月時点の待機児童数は前年同期比120人増の8586人となった。
 都は現在、保育のニーズ調査を行っている。都は調査結果を踏まえて、19年度末までに7万人の定員を増やすとの目標の妥当性を検証する。

本記事では、東京都における待機児童対策の取組を紹介。
同都では、一つめに「保育所等の整備促進」として「都独自の賃借料補助を拡充」「企業主導型保育に取り組む企業を支援」「企業主導型保育における地域枠の確保・拡大」「区市町村の要望を踏まえた補助の充実」、二つめに「人材の確保・定着の支援」として「保育所等におけるICT化の促進」と「保育士修学資金貸付等事業の拡充」、三つめに「利用者支援の充実」として「保育所等における児童の安全対策を一層強化」*1をする方針を公表。
これらのうち、民間と行政とが「織り混ざった(interweaving)」*2取組として進められてる「企業主導型保育」に関しては「国の補助制度の対象外となる開設時の備品購入に要する経費」を「当初予算の規模を拡大して対応」するとともに「保育士等キャリアアップ補助金の補助対象」として「企業主導型保育事業の地域枠分を追加」することで「区市町村を通じ」た「企業主導型保育事業で働く保育従事者の処遇改善を支援」*3を実施。今後の設置状況は、要観察。

*1:東京都HP(都政情報報道発表これまでの報道発表 報道発表/平成29(2017)年 9月)「待機児童解消に向けた追加対策について」( 2017年9月15日、福祉保健局、産業労働局)

*2:Kettl,Donald F. 2016.Escaping Jurassic Government: How to Recover America's Lost Commitment to Competence ,Brookings Institution Press,p.22

Escaping Jurassic Government: How to Recover America’s Lost Commitment to Competence

Escaping Jurassic Government: How to Recover America’s Lost Commitment to Competence

*3:東京都HP(都政情報報道発表これまでの報道発表 報道発表/平成29(2017)年 9月待機児童解消に向けた追加対策について)「別紙 待機児童解消に向けた追加対策」(2017年9月15日)5、6頁