悪人(2010)

全ての役者の演技が上手いからか、登場人物の作り込みが凄く感じられる。ただ、その分、逃亡劇に私が期待するスピード感はまるで0。前半などは、誰が主人公なのかも、主人公が何をしたいのかもさっぱりわからないまま話が進む。展開を伏せるのは良いが、結局最後の方では各登場人物が自らの口でネタばらしをするので、前半の凝った作りが生きていない。それとも、前半を凝った作りにした上で、最後ではセリフでわかりやすく説明するのが、全ての観客に目を向けた配慮だとでもいうのだろうか。よくわからない映画だった。久石譲の音楽は、宮崎駿作品でない割にかなり良い。

借りぐらしのアリエッティ(2010)

ジブリファンとしては宮崎駿の後を継ぐジブリ後継者の出現に喜ぶしかない。人物描写の細かさなどは宮崎作品の上をいっていると思う。物語前半の細かな描写が後半の展開で生きてきたのには感動した。

インセプション(2010)

ノーラン監督に期待したものが100パーセント帰ってきた感じ。それ以上でもそれ以下でもない。148分あっという間に楽しめるが、少しでも目を離すと置いてけぼりになるので要注意。エンターテイメント性を重視する作品の中では最大限に難解だと思った。

告白(2010)

告白 オリジナル・サウンドトラック

どこを見ても誰に聞いても絶賛ばかりなので自分としてはかなり感想を書きづらい。もっともっと破壊力のある作品を期待していただけに、綺麗にまとめ過ぎちゃったこの映画はちょっと残念。踊り出したらザリガニ魔人が出てくるまで踊り狂えばいいし、鈍器で美少女の顔を殴るならもっと顔がぐちゃぐちゃになるまで殴ればいいのに。ほとんどの表現が予定調和過ぎて単純に面白くなかった。人物描写だって意外性もなければ深みもない。ただ、「ほとんど」というのがミソ。ラストの爆破シーンはかなり良かった。あのシーンだけでも大スクリーンで見る価値はある。あと橋本愛。映画の役者として見るのはこれが初めてだが、きちんと演技もできるようで嬉しい限り。
結局のところ、映画の出来が悪いというのではなく、ただ単純に自分の趣味に合わず、期待はずれだったという、一番胸くそ悪いケースだ。

見た映画 in 東京学生映画祭


トマトの食べ方(監督:依田真由美/出演:小山駿助 ほか)。いきなり葬式の後のシーンから始まってただの恋愛映画に終始しなかったのが良かった。ラストの演出も予想外。

ひと・となり(監督・脚本:原廣利/出演:半田紗代 ほか)。猛烈な映像と音響と役者のクオリティ。学生映画もこれぐらいわかりやすくたって良い。

エコーズ(監督:宮岡太郎、唐澤弦志/脚本:唐澤弦志/出演:沼田哲郎 ほか)。2回目なのに心の底で爆笑。ラストの盛り上がりが名作の域に達しようとしている。

鉄男 THE BULLET MAN(2009)

鉄男 THE BULLET MAN 完全オリジナル・サウンドトラック盤

塚本晋也。かなり過激なものを期待していたが、ズバリ王道のエンタテイメントだと思った。確かに音響や映像は過激だが、それらによって語られる本作品のテーマは多くの人々に共通するものである。映画館で観る価値のある映画。というか、音がアレなので映画館じゃないと楽しめない映画。