諸君、私は研究が好きだ

諸君、私は研究が好きだ

諸君、私は研究が好きだ


諸君、私は、研究が大好きだ!!


実験が好きだ 調査が好きだ 分析が好きだ 計算が好きだ

理論が好きだ 考察が好きだ 応用が好きだ 経験が好きだ


研究室で 実験室で 食堂で 書店で 

図書館で 学会で 自室で 電脳空間で 

この地上で行う、ありとあらゆる研究行為が大好きだ


電極ではさんだ細胞溶液への一斉放電で、
轟音と共にプラスミドをエレクトロポレーションするのが好きだ
半日かけて作ったプレートが、
コンタミでカビだらけになった時など心がおどる


日立ハイテク遠心機の14000rpmが、
DNAを沈殿させるのが好きだ
悲鳴を上げて RNAiバッファーから飛び出してきた線虫を、
注射針でなぎ倒した時など胸のすくような気持ちだった


切っ先をそろえた竹串の束が、
大腸菌のコロニーをレプリカするのが好きだ
レーニング中の新人が、既に溶け始めた冷凍保存菌を
何度も何度も刺突している様など感動すら覚える


予想外の実験結果に週末の予定を滅茶苦茶にされるのが好きだ
必死で作ったストーリーがrejectされ、
解決法の見えない注文を付けられる様は
とてもとても悲しいものだ


英米の物量に押し潰されて日陰にまわるのが好きだ
生活資金確保に追いまわされ
害虫の様にバイト先を這い回るのは屈辱の極みだ


諸君 私は研究を 地獄の様な研究を望んでいる


諸君 私に付き従う院生学生諸君
君達は一体 何を望んでいる?


更なる研究を望むか?


情け容赦のない 糞の様な研究を望むか?

科学的手法の限りを尽くし 三千世界の虚実を潰す
嵐の様な真理探求を望むか?


「 研究!! 研究!! 研究!! 」


よろしい ならば研究だ


我々は満身の力をこめて
今まさに振り下ろさんとする握り拳だ


だがこの狭い日本の底辺で
四半世紀もの間堪え続けてきた我々に
ただの研究ではもはや足りない!!


大研究を!! 一心不乱の大研究を!!


我らはわずかに1研究室
10人に満たぬ学生連にすぎない


だが諸君は一騎当千の科学者だと
私は信仰している
ならば我らは諸君と私で
総兵力1万と1人の頭脳集団となる


我々を忘却の彼方へと追いやり
眠りこけている連中を叩き起こそう
髪の毛をつかんで引きずり降ろし
眼を開けさせ思い出させよう


連中に科学的真実の味を思い出させてやる
連中に我々の研究の意義を思い出させてやる


天と地のはざまには
奴らの哲学では思いもよらない事があることを
思い出させてやる


科学に裏打ちされた客観的真実で
世界を照らし尽くしてやる


“最長老のオーバードクターより
研究室全学生へ
2007年度 研究報告を開始せよ

行くぞ 諸君!!”


(漫画「ヘルシング」より 少佐の演説 “諸君、私は戦争が好きだ” を改変)