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日日鵺的

2018-02-19

二度目のトライアル 03:16

マキタカズオミには『昆虫系』からうちの芝居を観てもらっている。いつも感想のメールをくれて、たいがいホンは褒めてくれるのだが、こちらの演出にはダメが厳しい。俺に演出やらせろとも言う。じゃあやってくれと言ったのがそもそもの始まりである。基本自分作家であり、人に演出をお任せするのはたのしい。願ってもないことだった。

・当初は合同公演というかたちを考えたが、「なぜいまやるのか」「鵺的にとってどういう意味がある公演なのか」、そこらへんをもっと考えるべきだと周囲の人びとから疑義を呈され、なかなか実現できずにいた。三人のストーカーが共謀して三人の女性を狙うというストーリーの素案はすでにあり、タイトルも『天はすべて許し給う』と決めていた。

・『フォトジェニック』が好評で、座組の結束も固く、今後のトライアルはこの女優陣を劇団のような扱いにしてつづけたらどうかと提案したら皆乗ってくれたので、マキタカズオミを演出に迎えて『天は』をやろう、第二弾はそれだと決めた。さすがに今回は誰からも疑義は出なかった。『フォトジェニック』の四人に加えて、elePHANTMoonから江原さん、お久しぶり小西君に酒巻君、以前からご一緒したかった井神さん、湯舟さん、小平さんという布陣になり、少なからぬ人たちから「キャストが熱い」とご期待いただくことになった。気づけば皆三十代、すっかり小劇場の中堅なのである。

・酒巻君を希望したのはマキタ君で、最初それを聞いたときは驚き、おそるおそるご本人にメールしたのだったが、結果は快諾だった。最近、風琴工房に笹野鈴々音さんが、花組芝居佐藤誓さんが出演しているのを観て、かつて在籍していた場所で存分に力を発揮する姿は素敵だと感じていた。古巣でこそないものの、マキタ君と酒巻君、そして江原さんにとってそんな現場になれば良いなと思っていたが、どうだろう、そうなったのではないだろうか。

台本を書いている最中に小劇場界でもセクハラストーキング問題となり、おのずとそれは作品に反映された。こうしたことパブリック議論されるべきものであるが、パブリックにされることによって被害者被害者周辺の人びとを傷つける繊細な問題であり、そうしたことを踏まえずに加害者サイドに性急な対応をもとめたり、小劇場界が「ダンマリを決め込んでいる」と批判する向きに違和感を覚えていた。本作はその意味において自分なりのひとつの回答である。

マキタカズオミの演出は徹底して具体的で、寺十さんとはまったく異なるアプローチが新鮮で勉強になった。台本に書かれてあることを倍増するような演出キャストは相当苦労したと思うが、特に女優陣には感謝したい。全身全霊をあげて演じるとはあのことである。

稽古の段階で中田顕史郎氏は「すごいものが生まれようとしている」と仰っていたのだが、自分は毎度のことながら観客の反応が読めずにいた。蓋を開けてみれば顕史郎さんの言ったとおりで、全日程満席の好評だった。作品そのものから客席の反応までもが議論の対象になった。またすこし人を信じてみようと思った。

・次回は九月、tsumazuki no ishiとの合同公演で、ついにスズナリに参ずる。寺十さんに拙作をただ演出していただくのとはちがい、今回は劇団劇団の血が交じることを意識しなければならない。スエヒロさんは紛う方なき天才で、その作品の器は巨大、裡に宇宙を秘めていた。スエヒロさんとおなじことはできないが、自分も「宇宙」を書こうと思っている。かつて書いたことのないほど大きな器を志そうと思っている。それ以前に二十人近いキャストをどう捌くかで戦々恐々なのであるが。

タイトルは『死旗(しにはた)』、これは『苦界浄土』の一節で知った言葉だったが、公演中に石牟礼道子の死が報じられる偶然に出くわし、不思議気持ちになった。すでに宇宙である。遠く近く、われわれは全ての人びととつながっている。

・ご来場いただいた皆様、あらためてありがとうございました。次回もどうかご期待ください。

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(撮影・石澤知絵子)

2017-12-31 年の瀬

・なんだかんだで良い年だったんじゃないですか。今年は。

・『フォトジェニック』は遊び倒したし、『奇想の前提』はやり倒したし。『黒子』の劇場版はお客さん入ったし、『宵伽』の第三話は評判になったし、『将国のアルタイル』は好評だったし。終わりよければすべてよし。

・来年、芝居は二月と九月です。二月はすでに告知したとおりの鵺的トライアルvol.2。九月はまだ言えません。二月の公演である程度告知できたらいいのだが……とにかく来年は本公演がない。そういう一年になります。『銀河英雄伝説』と『ゴールデンカムイ』はともに四月から。どうかご期待ください。

・『天はすべて許し給う』は年末から稽古がはじまりました。書く前はひさびさに「なんでこんな芝居金払って観なけりゃならないんだ」てなものにするつもりだったのですが、書いても書いてもなかなか陰惨になりませんでね。ひどい話は話なんですが、可笑しいの。最終的にどうなるかわかりませんけど。作品を通じて、モラルを超えた倫理提供できたら良いなと思っています。

・そんなわけで良いお年を。来年もよろしくお願いいたします。

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2017-08-06 『奇想の前提』終演

・いろいろな方から「この発想はどこから思いついたのですか?」と聞かれるのだが記憶にない。もともとは乱歩正史の書いた事件がすべて現実だった世界の話を想定していたのだが、そのふたりを結ぶものは歴史的事実は別としてきわめて個人的な思い入れによるものなので、考え直して乱歩だけにした。本当なら乱歩正史だけでなく「探偵小説」に登場するすべての人々、事件現実であった世界を描いてみたいところだ。『リーグ・オブ・エクストラオーディナリージェントルメン』の探偵小説版。あの名探偵犯罪者たちもすべて存在する世界……とまあ、発想の源は言うなればアメコミである。自分脳内では改心した人間豹、あるいは彼の血族が闇の世界でヒーローをやっていることになっていた。あの怪人のバックボーンアメコミ想像力で考えるのはさぞやたのしい作業であろうと思う。

・『パノラマ島綺談』に描かれた世界現実に起きたとしたら、事件世界的に有名になっているだろうし、その場も注目されているだろうし、あんなことが起きた後なら「呪われた場所」になっているだろうし、関わった一族もまた呪われた人々になっているだろう……と考えていけばあのようになる。多くの方に乱歩だけでなく正史の影響を指摘された。母親世代三姉妹正史世界も構想に入れていたときの名残であるが(どこかの島で殺され損なった三姉妹)、『パノラマ島綺談』で描かれた事件因縁になっていたり(『八つ墓村』における三十二人殺しのように)、親族会議で呼び戻され「なんで帰ってきたのだ」と指さされたり(『八つ墓村』における(ry)と、言われてみればたしかに影響大で、これは後で気づいた。それくらい横溝正史自分の「血」になっている。

意図的にちりばめたのは映像作品からの影響である。二十面相が団一朗を名乗っているのは日テレ版『少年探偵団』(75)で団次郎(当時)が二十面相を演じていたからである。気球が出てくるのはCX版『怪人二十面相』(77)で内田勝正演じる二十面相が必ず気球で去るからだ。けれどラストが「お父さーん!」になるのははじめから意図していたことではなかった。本作の展開上、必然的にそこに行き着くのに途中で気づいたのだった。だから寺十さんはじめ、皆さんには特に『恐怖奇形人間』(69)のことは伝えなかった。伝えずともああなったのは、地に足が着いたオマージュになっていたからだと思う。『恐怖奇形人間』は異常で奇妙でおかしな映画だが、ただ笑い飛ばして済むだけの作品ではない。あのポテンシャルにこそ敬意を捧げたい。

パノラマ島の位置関係は変えた。原作では絶海の孤島のように表現されているため、本土からは見えないか、見えてもひどく小さくなり、子どもだけで上陸するのはおそらく困難な場所にある。現実には見せることの出来ないパノラマ島の存在感舞台上に現出させるためには、登場人物に「見る」という行為をさせる必要があった。「思う」では表現できない、「見る」でなければダメなのだ。また子どもたちにも過去においてあの島に上陸している因縁が必要だった。郷愁と恐怖と憧憬が入り交じった複雑な場所。パノラマ島を現実に着地させるための配慮だが、劇作の都合と誹られようと、これはこれで良かったと思っている。台本にはそこらへんを説明した箇所を足していたが、稽古の最終段階で「不要」と判断し、作品からは削った。それは販売台本ではお読みいただくことが出来る。この世界において松本清張の『ミステリー系譜』はもう一章多いのだった。

・書きながら、筆の先で現実虚構が闘っているような感じだった。パノラマ島は経済論理に組み込まれ、『孤島の鬼』で起きた出来事人権教育の一環とされている。一方で『猟奇の果』の人体改造術は生き延び、二十面相は暗躍している。災害という現実の最たるものに襲われたパノラマ島には百年ぶりの大虚構たる人間花火が上がる。この対決は書いていてたのしかった。作品テーマは相対するふたつの価値観、その狭間で生きる人々だったが、書いている自分もまさにそのような状況だった。作品メタフィクショナルな構造になるのは必然と言えた。

・かくも荒唐無稽な話に真摯に取り組んでくれたスタッフキャストの皆さんには感謝しかない。そしてこの奇妙な作品を支持してくださったお客様にも心から感謝いたします。ありがとうございました。

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2017-07-19 『奇想の前提』明後日初日

・どうもブログを忘れる。ツイッターやってると、そういう生理になっちまうんだろう。「鵺が〜vol.2」のことも書かずに、気づいたら写真展以来の更新だ。

・というわけで新作である。『パノラマ島綺談』も『大暗室』も『孤島の鬼』も『猟奇の果』も『黒蜥蜴』も、かつて現実にあった世界現代(いま)を描く。芝居を初めて以来、もっとも大風呂敷を広げた。大きな劇場にかかってもおかしくない、大きな芝居が書きたい気分だったのである。横に寺十さんがいるからだ。演出家としての自分の手には余るが、寺十さんならお任せできる。

乱歩作品著作権が切れ、乱歩にまつわる芝居が増えた。だがこんなアプローチで書かれたものは他にない。どうかおたのしみに。用語解説的なものを配ったりはしませんが(なぜなら自分自身ああいうものを参照にしたことはないので)、『パノラマ島綺談』と『大暗室』は押さえておくと良いかもしれません。


鵺的第十一回公演『奇想の前提』

作 高木登(鵺的)

演出 寺十吾(tsumazuki no ishi)

2017年7月21日(金)〜30日(日)

テアトルBONBON

東京都中野区中野3‐22‐8 

t.03-3381-8422


キャスト

青山祥子

江藤修平

奥野亮子(鵺的)

金子鈴幸(コンプソンズ)

木下祐子

佐藤誓(アクトレインクラブ

中村暢明(JACROW)

中山朋文(theater 045 syndicate)

福永マリカ

安元遊香(Saliva)

夕沈(少年王者舘


スタッフ

舞台監督田中翼・中野

演出助手=中山朋文

演出助手補佐=大島寛史(チリアクターズ)

ドラマターグ=中田顕史郎

照明=千田実(CHIDA OFFICE)

音楽坂本弘道

音響=岩野直人(STAGE OFFICE)

舞台美術=袴田長武+鴉屋

衣装・ヘアメイクディレクション=るう(ROCCA WORKS)

宣伝美術=詩森ろば(風琴工房

宣伝美術写真撮影橋本恵一郎

舞台写真撮影=石澤知絵子

制作=鵺的制作部・J-Stage Navi

制作協力=contrail

協力=コンプソンズ/少年王者舘/千賀ゆう子企画/チリアクターズ/JACROW/Saliva/theater 045 syndicate/tsumazuki no ishi/アクトレインクラブ/(株)キャストパワー/ザズウ/(株)トランスパレンチ/(有)レト

企画・製作=鵺的


タイムテーブル

7/21(金) 19:30

7/22(土) 14:30/19:30

7/23(日) 14:30

7/24(月) 14:30#/19:30

7/25(火) 19:30

7/26(水) 14:30/19:30

7/27(木) 14:30#/19:30

7/28(金) 19:30

7/29(土) 14:30#/19:30

7/30(日) 14:30

#の回終了後、ポストパフォーマンストーク開催予定。

7/24(月)14:30の回終了後 ヴィヴィアン佐藤さん(美術家アーティストドラァグクイーン)

7/27(木)14:30の回終了後 芦辺拓さん(推理作家・探偵小説家)

7/29(土)14:30の回終了後 高橋栄樹さん(映画監督Music Videoディレクター)


[注意事項]

※受付開始は開演60分前、開場は開演の30分前です。

※未就学児童のご入場はご遠慮ください。

※開演時間を過ぎてからのご来場はご指定のお席にご案内出来ない場合がございます。予めご了承下さい。


チケット

全席指定

前売   4000円

当日   4500円

U25割引  3500円(当日共・要身分証提示


[発売]

ローソンチケット 0570-084-003【Lコード:32639】

         0570-000-407(10:00〜20:00)

         http://l-tike.com/

チケ探      http://ticketan.net/ カード決済またはコンビニ決済(セブンイレブン

J-Stage Navi  http://j-stage-i.jp/PC

        03-5912-0840 (平日11:00〜18:00)


[問い合わせ]

J-Stage Navi 03-5912-0840 (平日11:00〜18:00)


[公演当日問い合わせ]

鵺的 080-9656-3318(公演期間中のみ)

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2017-02-06 写真展開催中

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トライアルキャスティング相談奥野としているときに、男優は橋Kを呼ぼう、橋K呼ぶなら写真がらみの芝居にして連動企画写真展やろうと、一気にそこまで話を進めたような覚えがあります。そんなわけで現在写真展が開催中なわけですが、演劇的にも馴染みが深く、橋Kが勤める「あるぱか」があるゴールデン街にも近い新宿眼科画廊という場所を選んだのは正解でした。親しみのある場所はそれだけで「力」です。大津さんの展示プランは素晴らしく、つい長居をしたくなるような空間になっており、何度も足を運んでくださる方が多いのも納得できます。よろしければ遊びに来てください。品切れ中のフォトブックもそろそろ入荷する予定です。

・ほかならぬ橋Kも出演していた『カップルズ』の終演から今日で五年だそうです。いろいろなことがありましたが、まあ順調に来てるのかなと思います。再来年で十周年、この先もスタッフキャストお客様と、よろこびやたのしみを分かち合えるような機会を作りつづけていけたら本望です。福永マリカが「シーズンごとにやればいいのに」と言ってましたが、そういうわけにもいかないので今回の機会にぜひ。お待ちしております。