日日鵺的(新)

演劇ユニット鵺的と動物自殺倶楽部主宰、脚本家の高木登が年に二、三回綴る日々

横浜へ行ってきた

studio salt「あの日僕だけが見られなかった夜光虫について」@相鉄本多劇場。これまた傑作。
・三十八歳、中学時代の同級生たちとその関係者が海辺の小さなホテルに集められる。集めたのはオーナーである彼らの同級生、だがかつての彼の印象は彼らにはひどく希薄で……。
・実際に何度か試みられようとしてはことごとく未遂に終わっている「ある種の犯罪」がモチーフなのだが、作劇上の「ある仕掛け」が見事で、主人公の屈折と成長もまた見事に表現されている。「三十八歳」の容赦ない描き方も特筆すべきで、ただひたすら痛く、それでも生きている彼らの姿が物悲しい。たとえば山本文緒角田光代あたりが好きな方にはぜひお薦めしたい。これは同種という意味ではない。同じレベルで闘っているという意味である。三日まで。この芝居を観に行くためなら横浜は遠くないだろう。
・帰りに主演の山ノ井君に挨拶。思えば平山が風琴工房にはじめて客演させていただいたときに入団したのが彼と宮嶋さんだった。ふたりのその後の活躍は衆知のとおりである。山ノ井君はstudio salt入団一発目が本作とのこと。素晴らしい成果でした。いっそうのご活躍をお祈りします。