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2012-11-19

2012年ラノベ周辺総括

簡単なまとめ

メディアワークス文庫は本当にイラスト推しなのか

星海社は人気作家の梁山泊

講談社BOX、銀箱脱却 文庫落ち本格始動でどうなる!?

・実は軟派な角川文庫新潮文庫

・大暴走を続けるPHP

ノベライズ維新

・復刊ブーム

・再デビュー作家、活躍なるか!?


キャラ立ち小説

 ライトノベルと一般文芸の交流といえば、「ライトノベルから一般文芸へ」という一方通行の関係が基本でした。

 ところが、その「名付け難い」領域が拡大してくるにつれ、従来のライトノベルから一般文芸に移行した越境作家(今年の最注目は『トッカン!』がドラマ化された高殿円、満を持しての創元デビューを果たした友桐夏か)に加え、ライトノベルと一般文芸のあわいからデビューしたハイブリッドな作風の作家(綾崎隼野崎まど、森晶麿、青柳碧人黒史郎など)やライトノベル的文法を組み込んだ・ライトノベルから影響を受けた一般文芸作家(似鳥鶏辻村深月仁木英之坂木司相沢沙呼、青崎有吾、櫛木理宇など)が出現してくるようになりました。

 そういった作家群の出現を受けてか、魅力的なキャラクター現実にファンタジー要素を混ぜた内容イラスト表紙などのヴィジュアル的要素時代小説の文庫書き下ろしなどを売りにした一般小説に対し「ミドルノベル」「ラノベ文芸」「キャラ立ち小説」「キャラノベ」という名前が与えられました。

 今年出た中で「キャラ立ち小説」に該当するような主な小説は美奈川護の『ドラフィル』シリーズ、ゆずはらとしゆきの『雲形の三角定規』、岡崎琢磨の『珈琲店タレーランの事件簿』などがあります。

ドラフィル!―竜ヶ坂商店街オーケストラの英雄 (メディアワークス文庫)雲形の三角定規珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

 「キャラ立ち小説」の傾向としては、たいてい文庫書き下ろしソフトカバー装丁で発売され、ライトノベルではあまり見かけられない「大学生以上の主人公」「日常の謎ミステリ」が使われていることが多いのが興味深いです。

ラノベ化する一般文庫

 この流れに呼応するかのように、このミス文庫や角川文庫などがラノベチックなイラストをあしらった作品を多く刊行するようになりました。

 角川文庫哲学書の表紙に竹岡美穂や越島はぐら人気イラストレーターを起用した「萌え哲学書」のほかにも、ライトノベル少女小説からの移籍作品やライトノベルの周辺に位置する作品を多く刊行。飴村行を輩出したホラー文庫大賞の今年の受賞作『ホーンテッド・キャンパス』は、「謎サークルに入った大学生が美少女とともに幽霊絡みの事件を解決するコメディタッチのライトミステリ」というホラー小説の文学賞なのに公式でラノベとして認定されている内容。まあ、同レーベル黒史郎幽霊詐欺師ミチヲ』は「ニート青年がグロ女幽霊に一途な求愛をされ続けるラブコメ」というさらに笑撃的な内容でありましたが。

幽霊詐欺師ミチヲ (角川ホラー文庫)ホーンテッド・キャンパス (角川ホラー文庫)

 このミス文庫は「隠し玉」がかなり顕著で、イラストレーターによる表紙を前面に押し出した装丁の作品を大量に展開しています。中でもビブリアフォロワーと目される『珈琲店タレーランの事件簿』は発売早々売り切れが続出して書店から姿を消したというこれまたビブリア1巻発売当初を想起させられる事態に。

問題解決室(ソリューション・ルーム)のミステリーな業務 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

 この他にもビブリアフォロワーとしては須賀しのぶ高殿円友桐夏らのように少女小説からの越境を果たした谷瑞恵『思い出のとき修理します』があるか。これは時計店店主が探偵を務めるミステリ連作集ですが、店主がイケメン・ワトソン役が美容師の女性とより女性向けに特化したかたち。

 早川書房は「表紙統一シリーズ」というライトノベルSFのミニレーベルを設立していましたが、今年は「新しい早川文庫」というコピーで有名イラストレーターを起用した非SF作品を刊行。一方、芝村裕吏・藤間千歳・青柳碧人といったラノベ系作家の書き下ろしも精力的に出しています。さらに、『スワロウテイル序章』や海外FTの一部には挿絵がつくようになりました。

生者の行進 (ハヤカワ文庫JA)ヘンたて 幹館大学ヘンな建物研究会 (ハヤカワ文庫JA)スワロウテイル序章/人工処女受胎 (ハヤカワ文庫JA) 

 一方、イラスト推し路線のパイオニアであるメディアワークス文庫は、扉絵の廃止・キャラ絵が描かれた新作が減ったなどイラスト推し路線を若干弱めました。剛力彩芽主演でドラマ化が決定したビブリア古書堂の掛け替え特大帯も、「表紙が恥ずかしい」という要望に応えた落ち着いたものになっています。今年の注目作である『ドラフィル!』『』もライトノベル系とはかけ離れた装丁になっており、年齢層の拡大を実感します。

 来年は大賞受賞作が初めてメディアワークス文庫で刊行されることが決定し、メディアワークス文庫電撃文庫と並ぶ2本柱となりました。

2 (メディアワークス文庫)

ソフトカバーライトノベルの興隆

 ここまでは文庫レーベルでのキャラ立ち小説を紹介してまいりましたが、もう一つ注目したいのがソフトカバーの形式で発売されるライトノベルおよび一般文芸とのあわいにあるキャラ立ち小説です。

 12年後半からは、ネット小説への本格参入もあってか角川書店が漫画的イラストをあしらったソフトカバーラノベを大量に刊行しています。

 文芸書に弱いエンターブレインも、今年は精力的にソフトカバーハードカバーライトノベルを刊行。『まおゆう』『ニンジャスレイヤー』などネット小説のみならず、せきしろ学校の音を聞くと懐かしくなって死にたくなる』、山下卓僕らが旅に出た理由』などライトノベル内外問わず作品を出しています。

学校の音を聞くと懐かしくて死にたくなるニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上 (1)

 角川書店は秋口からネット小説に本格参入したほか、『恋のエニグマ』、『妄想女刑事』、『セーラー服黙示録』などソフトカバー形式のライトミステリの単行本を大量にリリースし始めました。この他にもハードカバーでは、『天地明察』以後初となる冲方丁の長編新作時代小説光圀伝』、『あなたのための物語』でSF界隈で評価されるようになった長谷敏司によるハードSF『BEATLESS』、桜庭一樹ひさびさの『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』路線の青春小説無花果とムーン』など、ラノベ出身作家の新作も多く登場しました。

 PHPはボカロノベルに加え、森晶麿の新作『東京・オブ・ザ・キャット』をひっそりと刊行したのがとても記憶に残っています。

東京・オブ・ザ・キャット

 双葉社は「キャラ立ち小説」界の人気イラストレーターであるワカマツカオリを表紙に起用した『死神は恋を連れてやってきた』やエブリスタ発の単行本『くくりひめ』などを刊行。

死神は恋を連れてやってきた

 東京創元社は表紙がまるで電撃文庫芦辺拓スチームオペラ』やライトノベルミステリを多く輩出している鮎川哲也賞受賞作で探偵役がアニヲタ高校生の青崎有吾『体育館の殺人』などライトノベルと乗り入れる作品を精力的に刊行しだしました。

 文藝春秋東川篤哉のファンタジー×ミステリの新作『魔法使いは完全犯罪の夢を見るか?』がソフトカバーで登場。カバーをめくるとイラスト付きのキャラ紹介が見られる装丁。

 このように、イラストの入った登場人物紹介や扉絵が一般文芸書に組み込まれつつあるというのは注目すべき傾向でしょう。

スチームオペラ (蒸気都市探偵譚)

静かに盛り上がるネット小説

 『ソードアート・オンライン』『魔法科高校の劣等生』『ゲート』を筆頭に熱い注目を集めつつあるネット小説。8月に角川書店ネット小説の単行本化を開始。注目すべきは、異世界転生ものや最強系ファンタジー、MMORPGといったネット小説では定番となったジャンルではなく、現代ミステリ系の「キャラ立ち小説」を刊行しているところ。ちなみに、角川の「定番」ネット小説エンターブレインのKCG文庫から多く刊行されています。

 さらに、エンターブレインは1か月に1冊ペースでネット小説ソフトカバー単行本を刊行。今年の注目株は海外ネット小説を翻訳した(らしい)『ニンジャスレイヤー』。ニューロマンサー山田風太郎を混ぜてアメリカ人のステレオタイプな日本感を振りかけたSF設定と奇抜な言い回しが魅力で、SFマニアや英米小説マニアにも楽しんでもらいたい作品。のっけからグッズ入りの限定版発売とかなり推されています。『ニンジャスレイヤー』はパルプ・フィクションを意識したデザインに、『オーバーロード』は巻末にTRPG風のキャラクターシートが付属、『ログ・ホライズン』は表紙にクラフト紙を使用と装丁にも力を入れているところも特徴です。

 主婦の友社ネット小説レーベル「ヒーロー文庫」と「RayBooks」を創刊。ヒーロー文庫は小説投稿サイト上位作品の書籍化ということか、のっけから有名イラストレーターを起用しています。一方、RayBooksは女性向けのソフトカバーライトノベルレーベルケータイ小説に比べて作風は若干大人向けで、イラストはなし。

 プロ作家のネット小説書籍化(というか先行配信)は向山貴彦の『ほたるの群れ』や有川浩の『空飛ぶ広報室』(どちらもエブリスタ掲載)などがあります。

新人発掘より大物作家のネームバリューで売れ!星海社

 さて、今年の星海社はネームバリューのある作家の大量起用が話題を呼びました。奈須きのこ至道流星佐藤友哉らノベルス時代〜BOX創刊当初の人気作家に加え、成田良悟筒井康隆紅玉いづき支倉凍砂唐辺葉介講談社ノベルス・BOX未登場の人気作家も大量に登場。

 その代わり選考過程が物議を醸した(メフィスト賞からの伝統ではあるものの)新人デビューは控えめ。

 人気作家が自分の作風を押し出して書く・過去の人気作を発掘して再刊行するレーベル、いわばラノベ作家梁山泊としての意味合いが強まってきています。

 同じ大人向けライトノベルを掲げているメディアワークス文庫が創刊当初から新人作品刊行・拾い上げを積極的に行い、綾崎隼野崎まどなど屋台骨を支える新人を輩出したのとは対称的な光景です。

 また、日本SFの巨人筒井康隆によるライトノベルビアンカ・オーバースタディ』が話題を呼んだように、徳間書店が撤退した今、ハヤカワJAに並ぶライトノベルSFの発信源にもなりつつあります。注目は紅玉いづき初のサイバーパンクSF『サエズリ図書館のワルツさん』。SF小説とは思えないタイトル・表紙ながら、「ブレードランナー」のように退廃的で、『ハーモニー』のように社会全体の電子化が進行した未来が舞台で、紙の本の持つ意義はあるのかという重厚なテーマに迫っています。

来年は『パニッシュメント』の江波光則の新シリーズが始まる予定です。

サエズリ図書館のワルツさん 1 (星海社FICTIONS)ビアンカ・オーバースタディ (星海社FICTIONS)RPF レッドドラゴン 1 第一夜 還り人の島 (星海社FICTIONS)

銀箱をやめた講談社BOX

 今年最も大きな変化を遂げたレーベル講談社BOXでした。講談社BOXは創刊当初からの大きな特徴であった銀の箱をやめていく方向にあります。新人中心のPowersBOXは色つきの箱に穴が空いているという装丁であり、『夜宵』から始まった、イラストを前面に押し出したタイプの箱も存在します。

 このイラスト前面タイプの装丁の登場に伴い、刊行される作品の作風にも変化が現れてきました。Powersの当初の作風は従来の講談社BOXの系譜に連なるメタミステリものが多めでしたが、今では電撃文庫のようなものから一般文芸で出したほうが違和感のないようなものまで多様化してきました。

 特にイラスト前面タイプは文芸色が強く、柴村仁彩坂美月など「本読み女子」層を狙った読者が多く起用されています。表紙もぱっと見では普通の単行本と見分けがつかないようなものも出現してきました。

 講談社ラノベ文庫が若いラノベ読者向けを担当し、星海社ラノベマニア向けを担当していることを考えると、ターゲットが被らないようにする路線変更はかなり意図的なものだと思われます。

 また、今年からはBOX作品の文庫落ちが始まりましたが、『ひぐらしのなく頃に』『エレGY』などラノベ色の強いものは星海社文庫へ、『SPEEDBOY!』『丸太町ルヴォワール』などの文芸色の強いものは講談社文庫へと移動しており、現時点では講談社ラノベ文庫への移動は見られません。

 2013年からはボカロノベルへの参入も決定しています。

参考:イラスト全面タイプBOX

夜宵 (講談社BOX)そよかぜキャットナップ (講談社BOX)文化祭の夢に、おちる (講談社BOX)ティーンズライフ (講談社BOX)

今、もっとも注目すべきPHP研究所

 魑魅魍魎ラノベ界で独自路線を突っ走っているのがPHP研究所です。お堅い社風とは裏腹に、PHP初のラノベレーベルスマッシュ文庫はあまりにもマニアックすぎる作品(スーパー戦隊シュタイナー人智学を混ぜたり、奥の細道ゾンビ悪魔合体させたり、現役自衛官による右翼思想のご開陳(のちにトラブル発生でPHPと決別)だったり、舞城王太郎清涼院流水パロディだったり、妹推ししてる一方で表紙に「妹反対!」の文字を躍らせたり、芸人にラノベを書かせたり)ばかり出すことで有名な反面、『悪ノ娘』『桜の雨』などボカロノベルも大量に刊行、時には『東京・オブ・ザ・キャット』『消しゴムをくれた女子を好きになった』など挿絵と口絵がふんだんに盛り込まれたソフトカバーラノベも出すという、ラノベ界の異端を爆走し続ける存在です。

 今後は黒史郎クトゥルフものが控えており。ラノベの主流からことごとく外れまくっているのかラノベ読みからの注目はいまいち薄いのですが、その強すぎる個性から今後も目が離せない会社です。

東京・オブ・ザ・キャットかまいたちの娘は毒舌がキレキレです (スマッシュ文庫)

最近調子の良いこのラノ文庫

 スマッシュ文庫と並んでマニア向けのライトノベルを多くだしているレーベル宝島社このライトノベルがすごい!文庫です。ここは創刊当初から『ランジーン×コード』『ファンダ・メンダ・マウス』といった尖った作品を多く刊行していましたが、今年は魔法少女同士の生々しい殺し合いを描いたダークファンタジー「魔法少女育成計画」シリーズ、日本でアニソンバンドを組むことを夢見る留学生少女が主役の青春小説アニソンの神様』などまたもや大手レーベルでは珍しい作品が登場し、注目を集めました。

 一方、第一回の大泉貴・大間九郎、第二回の深沢仁・遠藤浅蜊と毎回玄人好みの作家を輩出しているこのラノ大賞ですが、第三回組は普通のライトノベルに迎合しているような感じでちょっと残念。

魔法少女育成計画 (このライトノベルがすごい! 文庫)アニソンの神様 (このライトノベルがすごい! 文庫)

リバイバルブーム 

 昔のライトノベルの新装版・続編が刊行される動きが多く見られました。「GOSICK」(富士ミス角川文庫→ビーンズ)、「オーフェン」(富士見ファンタジア→TO)、「ゴーストハント」(講談社TH→メディアファクトリー)を筆頭に、「ふわふわの泉」(ファミ通文庫ハヤカワ文庫)「かめくん」(徳間デュアル文庫河出文庫)「カーリー」(ファミ通文庫講談社文庫)「十二国記」(講談社WH→講談社文庫新潮文庫)「ナイトウォッチ」(徳間デュアル文庫星海社文庫)「プシュケ」(スクエニ星海社文庫)「ロードス島戦記」などメジャー・マイナー問わずさまざまなリバイバルラノベが登場・登場予定です。読者層の高年齢化もリバイバルブームを支えているとは思いますが、「過去の名作」がフィーチャリングされにくいライトノベルの環境をどうにかしよう・過去の名作を若い読者にも――という考えもあるのではないでしょうか。

 また、ちょっと別の形としては伊藤計劃の『屍者の帝国』が円城塔によって、栗本薫の『グイン・サーガ』が五代ゆう久美沙織らによって書き継ぎがなされた動きも見られました。

 さらに電子書籍にまで目を転じれば、「Jコミ」「yomeru」など復刊ラノベを配信するサイトがありますし、廃刊した徳間デュアル文庫富士ミスの一部作品は電子書籍ストアで復刊販売されています。

 ちなみにリバイバルブームはラノベだけでなく、『るろうに剣心』『シャーマンキング』『聖闘士星矢』『セーラームーン』の新作が発表されるなど漫画・アニメの世界でもかなり盛り上がっています。

かめくん (河出文庫)月の影 影の海〈上〉―十二国記 (新潮文庫)屍者の帝国

ノベライズ維新

 ノベライズといえば、無名作家が文庫で書き下ろす形式が一般的でしたが、近年では「VSJOJO」を筆頭に有名作家とのコラボレーションという新しい形が強く打ち出されています。

 「VSJOJO」は「ジョジョの奇妙な冒険」を上遠野浩平西尾維新舞城王太郎が小説化するという企画で、本の作りもハードカバーと、従来のノベライズ作品とは一線を画す豪華さ。最新作『JORGE JOESTER』は、ジョジョと舞城作品のクロスオーバージョジョを歴史改変SFとして捉え直すというなんとも舞城らしい怪作に。

 また、「BLEACH」を『バッカーノ!』の成田良悟が小説化した『BLEACH Spirits are forever with you』も本編未回収の伏線を回収しているとして話題を呼びました。

 この他にも古橋秀之久々の新作及びノベライズとなる『ZETMAN』・『バスタード』・「K」、原作者直々のノベライズである西尾維新の『小説版めだかボックス』なども登場しました。

 さらに『ダンガンロンパ/ゼロ』の星海社からイースノベライズが登場、「メタルギアソリッド3」は『BEATLESS』の長谷敏司によるノベライズが決定とゲームノベライズも活況です。

JORGE JOESTARBLEACH Spirits Are Forever With You ? (JUMP J  BOOKS) (JUMP j BOOKS)

生まれ変わり越境

 『プラ・バロック』の結城充考を契機に、ライトノベル作家が一般文芸の新人賞を受賞して再デビューする、という新たな越境のかたちがみられるようになりました。ほかにも『カンパニュラの銀翼』でアガサ・クリスティ賞を受賞した中里友香などがこの「生まれ変わり越境」を果たした作家といえます。また、新潮社日本ファンタジーノベル大賞の最終候補に『楽園まで』の張間ミカが挙がりましたが、審査委員からの評価は厳しく、落選。

 「生まれ変わり」以前の作品はなかったことにされそうですが、結城充考の場合は文芸誌ライトノベル時代の『奇蹟の表現』の書き下ろし外伝が掲載されたり、中里友香はアガサ賞受賞インタビューで徳間書店のSF撤退から講談社BOXに流れ着くまでの詳しい経歴を語ったりと、意外とそうでもないようです。

カンパニュラの銀翼

2013年を予想する

 リバイバル対象の最有力は『トッカン!』で注目を集めた高殿円の『銃姫』と結城充考のデビュー作『奇蹟の表現』、三上延の初期作品のどれか友桐夏リリカルミステリ、ハリウッド映画化に併せての『AllYouNeedIsKill』。

 『ビブリア古書堂』シリーズの三上延と『丸太町ルヴォワール』の円居挽、『ミミズクと夜の王』の紅玉いづきが本格的に一般文芸進出する可能性が高い。(紅玉いづきはほぼ確定)

 これまで以上にこのミス文庫がイラスト推し路線になる。口絵と挿絵までつける。

 星海社はある程度人気の出ているラノベ作家が好き放題書く場所になる。そして成田良悟支倉凍砂が新シリーズ開始。

 キャラ立ち小説はWEB文芸誌から多く出るようになる、かも。

 注目作家は『ストレンジボイス』『パニッシュメント』『ペイルライダー』が鈴木謙介海猫沢めろんから絶賛された江波光則、今や「ブラスレイター」「魔法少女まどか☆マギカ」「サイコパス」などSFアニメ脚本家としての名前が大きく早川書房神林長平トリビュートに参加した虚淵玄、『2』でSF界隈とミステリ界隈から注目を集めつつある野崎まど、『スパイラル 〜推理の絆〜』『絶園のテンペスト』の漫画原作で知られ『虚構推理』で本格ミステリ大賞を受賞した城平京、『ノーブルチルドレンの愛情』でデビュー作から続いていた新潟の舞原家サーガに一区切りつけた綾崎隼、「少女革命ウテナ」「NOIR」の脚本家で『機龍警察』シリーズが注目されている月村了衛など。

参考資料(もっと深く知りたい人向け)

このライトノベルがすごい!2013」

ジャーロ 2012 AUTUMN-WINTER」謎のリアリティ 藤田直哉

本格ミステリ・ディケイド」

ラノベとも違う! 今人気の“キャラ立ち小説”とは? | ダ・ヴィンチニュース

マンガのような主人公が活躍、「キャラノベ」が人気のワケ |エンタメ!|NIKKEI STYLE

 

 

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