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2016-01-17

2015年ラノベ周辺まとめ

キャラクター文芸の独立

今年を語る上で何より欠かせないのは、ライト文芸というジャンルの確立でしょう。

先発のメディアワークス文庫富士見L文庫、角川キャラ文庫に加え、新潮文庫nex、オレンジ文庫、講談社タイガなどの新レーベルが続々新設され華やかな年となりました。

メディアワークス文庫は『神様の御用人』を看板としてライトミステリ&女性向け路線を強化。新作では『ちょっと今から仕事やめてくる』が高い評価を得ました。

新潮文庫nex文庫落ち・新装版の連発、実質的に単なる売り上げランキングとなってしまったnex大賞への不満から失速気味。

角川キャラ文庫は、櫻子さん・ハルチカと怒涛のメディアミックスを続けていますが、後半は平井骸惚シリーズのリバイバル打ち切りや不祥事の発覚で減速気味。2016年古野まほろ『背徳のぐるりよざ』や『ビアンカ・オーバースタディ』が文庫落ちします。

オレンジ文庫は、須賀しのぶ赤城毅ら大物作家の起用のほか、辻村七子・長谷川夕・杉元晶子らかなり尖った作風の新人を発掘し、ジャンル小説マニアからの注目を集めました。

富士見L文庫は『王女コクランと願いの悪魔』『紅霞後宮物語』といったファンタジー系が強く、他のキャラノベレーベルとは一線を画しています。また、L文庫の隠れた特徴として、唐突なマニア向けミステリ作家の起用が挙げられます。富士見書房での執筆経験がないにも関わらず突然登場することで知られ、現在の実績は唐辺葉介北國浩二、三沢陽一、森晶麿、桜井光です。

nexが書き下ろし作品の少なさから批判される最中、全作品書き下ろしを掲げて「対nex」を意識した講談社タイガは、ティザーサイトの時点で参加作家が割れるなどあったものの、野まど『バビロン』などマニア層をも唸る作品を用意し、スタートダッシュには成功した模様。

今年こっそり創刊されたコズミック文庫αは、主に女性向け?ライトミステリ刊行。『デパ地下グルメ探偵 ナイアガラチョコレートスペシャル』という見ているだけで太りそうなタイトルの作品も登場しました。

『猫入りチョコレート事件』が話題を呼んだポプラ文庫ピュアフルは、シリーズ第二弾『老子収集狂事件』を刊行。この他にも壁井ユカコ村山早紀・深沢仁など女性作家を中心に作品をリリースしています。

こうした流れを受けて、ライトノベル/キャラノベ新人賞である電撃大賞でも地殻変動が起こりつつあります。

野崎まど綾崎隼成田名璃子、浅葉なつなどMW初期〜中期を支えていた作家が他社でも活動するようになり、第22回では一般文芸色の強い『ただ、それだけでよかったんです。』が電撃大賞に、少女小説色の強い『恋するSP』がメディアワークス文庫に回される結果になりました。これは、「電撃=(ユニセックスな)ライトノベル」「MW=(ユニセックスな)一般文芸」という当初のイメージから「電撃=男性向けライトノベル一般文芸」「MW=女性向けライトノベル一般文芸」へと変動していく予兆なのかもしれません。

いずれにせよ、野まど・成田名璃子らの輩出や有川浩三上延ら出身作家の大成、一般文芸新人賞の減少から電撃大賞が「一般文芸の登竜門としての新人文芸賞」としての役割を担いつつあるのは確かで、今後は文芸シーンにおいても存在感を示すのではないでしょうか。

ラノベSF

「マッドマックス 怒りのデス・ロード」「キングスマン」のカルト映画化、「スター・ウォーズ フォースの覚醒」の公開、ライトノベル作家が脚本に起用された「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」「蒼穹のファフナーEXODUS」のシリーズものロボットアニメの高評価など他メディアのSF作品が勢いを見せた年でしたが、日本SF小説においては冲方丁逮捕・関係者が実名で罵声を浴びせあうことが日常茶飯事になったSF作家クラブの対立の激化など荒廃の色が強い年となりました。

追い打ちをかけるかのように原作読者を絶望と激怒に叩き落としたアニメ版『屍者の帝国』『ハーモニー』が公開され、今年のこれといった代表作がシリーズ作の『天冥の標』くらいしかないという事態になりました。

ハヤカワからは、長谷敏司・王城夕紀らライトノベル作家も起用された「伊藤計劃トリビュート」、代表作「刀剣乱舞」での発言が大炎上した芝村裕吏の『セルフ・クラフト・ワールド』、江波光則の越境作『我もまたアルカディアにあり』、『筐底のエルピス』の作者によるソフトカバーラノベ波の手紙が響くとき』などが登場。

伊藤計劃トリビュート (ハヤカワ文庫JA)セルフ・クラフト・ワールド 1 (ハヤカワ文庫JA)我もまたアルカディアにあり (ハヤカワ文庫JA)波の手紙が響くとき (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

電撃文庫SF枠からは『フェイクゲーム 未来強奪』、『くもりのちナイン 破壊少女は、貴方のためだけに涙する』が新たに仲間入り。

フェイクゲーム 未来強奪 (電撃文庫)くもりのちナイン 破壊少女は、貴方のためだけに涙する (電撃文庫)

年末の話題をさらったのは、時代劇×サイバーパンク×特撮ヒーローもので、「原稿を改ざんして別物にしていた」という編集部の不祥事が発覚し封印指定された『からくり同心 景』でした。

からくり同心 景 (角川文庫)

硬派ファンタジー論争

2015年はハイ・ファンタジーが花開いた年でした。

六花の勇者』・『アルデラミン』・『グリムガル』などのカルト的人気を誇るファンタジーラノベアニメ化され、また新作も登場しました。

相沢沙呼ラノベ逆越境作『緑陽のクエスタ・リリカ』は、『六花の勇者』同様西洋ファンタジーとミステリを組み合わせた作品で、作者の発言がラノベ天狗界隈から批判され「硬派ファンタジーとは何か」という論争が巻き起こりました。

暁の女王と塵の勇者』は、殊能将之オマージュ作としてミステリマニアからも注目を集めました。

結局、ニンジャとドラゴンはどっちが強いの?』は、そのふざけたタイトルとは裏腹にドラゴンと人間が生存をかけて争い合う意外とシビアな内容。

魔法医師の診療記録』は『王子降臨』の作者による新作。今度こそまともになったかと思いきや、やっぱり山田風太郎忍術バトルに。

緑陽のクエスタ・リリカ 魂の彫塑 (MF文庫J)暁の女王と塵の勇者 (講談社ラノベ文庫)結局、ニンジャとドラゴンはどっちが強いの? (MF文庫J)魔法医師(メディサン・ドゥ・マージ)の診療記録 (ガガガ文庫)

なろう系からは、グロ満載のダーク無双ファンタジー『呼び出された殺戮者』、冲方作品でおなじみの獅子猿によるイラストの『ティタン』などが書籍化されました。

呼び出された殺戮者 (HJ NOVELS)ティタン アッズワースの戦士隊 1 (アース・スターノベル)

また、今年の流れとして、ネット小説とは別に高い年齢層をターゲットとしたレーベルの創刊があります。ミューノベルスは朝日新聞出版の編集者が独立して作ったレーベルといわれており、実際作家ラインナップが朝日ノベルスに近いものとなっています。ゆうきまさみ士郎正宗高橋留美子などイラストレーターに大物漫画家を多数起用しているのが特徴で、また冴木忍の久々の新作『砂の眠り 水の夢』が登場しました。

砂の眠り 水の夢 (ミューノベル)

メディアファクトリーのNOVEL0は文庫でのレーベルですが、キャラノベとは違いSF・ファンタジーが中心。十文字青、吉上亮、宮澤伊織などカルト的人気を誇るジャンル作家が多数参加予定となっています。

マニア向け作品であるアルデラミンのアニメ化、『クエスタ・リリカ』のような懐古的作品の登場、ノベルスを中心としたなろう系ハイファンタジーの刊行、ミューノベル・ノベルゼロの創刊など、今後は高年齢向けのファンタジー作品が花開くかもしれません。

ラノベミステリ

今年のラノベミステリは凄まじい勢いを見せました。下馬評を覆してオタク層から絶賛された『掟上今日子の備忘録』実写ドラマ、『号泣』『月読島に星は流れる』『その可能性はすでに考えた』『黒野葉月は鳥籠で眠らない』などのラノベミステリ新作の高評価ミステリ系キャラノベレーベルの大流行、賞を総なめにした米澤穂信のビッグネーム化など破竹の勢いで進撃をつづけています。

その可能性はすでに考えた』はデビュー作が越島はぐのイラストだった井上真偽の2作目で、多重解決ものとしてマニアから高い評価を得ました。久住四季満を持しての復活・越境作『月読島に星は流れる』は、期待を裏切らない出来栄え。好評からか、『トリックスターズ』がメディアワークス文庫から全巻リバイバル決定しました。講談社BOXからの再デビュー組である織守きょうやは、『黒野葉月は鳥籠で眠らない』『記憶屋』と話題作を連発。

その可能性はすでに考えた (講談社ノベルス)星読島に星は流れた (ミステリ・フロンティア)黒野葉月は鳥籠で眠らない記憶屋<記憶屋> (角川ホラー文庫)

新設レーベル講談社タイガからは、「物語シリーズ」の西尾維新×「刀剣乱舞」「ガッチャマンクラウズ」のキナコによる新作学園ミステリ美少年探偵団』、ミス研出身作家としてミス研界隈から支持を集める青崎有吾とミス研界隈からなぜかB級映画的人気を誇る大暮維人のコラボ作『アンデッドガール・マーダーファルス』など人気イラストレーターとのコラボ作品が登場。

美少年探偵団 きみだけに光かがやく暗黒星 (講談社タイガ)アンデッドガール・マーダーファルス 1 (講談社タイガ)

富士見L文庫・講談社ラノベ文庫講談社ホワイトハート文庫は京極夏彦トリビュート企画『薔薇十字叢書』を始動。レーベルレーベルだけに女性向けの色が強いが、講ラノの『ヴァルプルギスの火祭』は京極堂が美少女化するというとんでもない内容に。刊行は『ようかい菓子舗京極堂』でひと段落かと思いきや、「Fate/GrandOrder」の桜井光が手掛ける『赤天幕の胎』が登場する様子。

薔薇十字叢書  ヴァルプルギスの火祭 (講談社ラノベ文庫)薔薇十字叢書 ようかい菓子舗京極堂 (講談社X文庫ホワイトハート)

この他、奇抜な内容から一瞬でカルトラノベ化した『宇宙人の村へようこそ 四之村農業高校探偵部は見た!』、デビュー作がSFプロパーから注目を集めた辻村七子の『宝石商リチャード氏の謎鑑定』、コバルト新人賞受賞作で男性主人公の青春暗黒ミステリという異例の内容の『僕は君を殺せない』、耳目口司久々の新作『愚者のジャンクション』、1巻の難産ぶりに比べてあっさり出たオカルト群像劇ミステリOccultic;Nine (2)』、ルルル文庫出身作家コンビによる暗黒ミステリ女王はかえらない』などが登場しました。

宇宙人の村へようこそ 四之村農業高校探偵部は見た! (電撃文庫)宝石商リチャード氏の謎鑑定 (集英社オレンジ文庫)僕は君を殺せない (集英社オレンジ文庫)愚者のジャンクション-side friendship- (角川スニーカー文庫)Occultic;Nine1 -オカルティック・ナイン- (オーバーラップ文庫)女王はかえらない (「このミス」大賞シリーズ)

ここのところお店ミステリが多かったラノベミステリですが、東京創元社ラノベ作家引き抜き強化やBOX再デビュー組の活躍、講談社タイガ・オレンジ文庫の躍進によってそれ以外のジャンルが充実してきています。


キャラノベドラマ化の波

今年はキャラノベメディアミックスが盛んに行われました。

アニメでは百合クラスタからも注目された京アニのキャラノベアニメ第二弾『響け!ユーフォニアム』、推理面でのガバガバさが指摘された『櫻子さんの足元には死体が埋まっている』、ニトロプラス原画家によるキャラクターデザインが物議を醸した『ハルチカ』が放送されました。

【TVアニメ化】響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のヒミツの話 (宝島社文庫)櫻子さんの足下には死体が埋まっている (角川文庫)[asin:B01914HJU4:image]

実写ドラマでは、物語シリーズを意識した演出特撮俳優の出演でオタク層から高い評価を得た『掟上今日子の備忘録』、メディアワークス文庫実写化第二弾の『日暮旅人』、神永学ミステリ怪盗山猫』が放送・放送予定となっています。

掟上今日子の退職願探偵・日暮旅人の遺し物 (メディアワークス文庫)怪盗探偵山猫 (角川文庫)

来年は『ホーンテッド・キャンパス』『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』の実写映画が公開されるなど、キャラノベ実写化は今後ますます増えていきそうです。

ホーンテッド・キャンパス  この子のななつのお祝いに (角川ホラー文庫)ぼくは明日、昨日のきみとデートする (宝島社文庫)

実写化の注目株はMW文庫の看板タイトル化した『神様の御用人』、ベストセラーになった『君の膵臓をたべたい』、大学読書人大賞を受賞した『階段島シリーズ』あたりか。

神様の御用人 (5) (メディアワークス文庫)君の膵臓をたべたい汚れた赤を恋と呼ぶんだ (新潮文庫nex)


オープンソース化する新文芸

ネット小説には「新文芸」という新たな名称が与えられました。

主要新文芸レーベルには角川新文芸・ヒーロー文庫・モンスター文庫・オーバーラップノベルスアルファポリスエンターブレイン・アーススター・GCノベルス・HJノベルス・TOなどがあり、文庫/ソフトカバーラノベでの刊行が中心になっています。

オーバーラップやHJのように文庫とソフトカバーの2ラインを同時に走らせるところもあり、そういったレーベルでは中高生向けの作品を文庫に、大人向けの作品をノベルスに割り振ることが多くなっています。

年末には中国で凄まじい人気を誇るネット小説マスターオブスキル』が翻訳。MMORPGものではありますが、現実のEスポーツとしての側面を描いた『ソリッド・ファイター』『スラムオンライン』に近い作風。これがどれくらい人気かというと、何もメディアミックスされていないのに大量の同人誌フィギュアが出るほど。

マスターオブスキル 全職高手 (1) 放たれた闘神 (LBブックス)

今年の新文芸の大きなトピックは、「公式二次創作の解禁」があります。

原作者が脱税で逮捕された『ログ・ホライズン』の二次創作の書籍化(もちろん公認で出版社も同じエンターブレイン)、妻を殴って留置所に入れられた冲方丁作品の二次創作解禁、そしてKADOKAWA×はてなの小説サイト「カクヨム」での自社ライトノベル二次創作公認など、ライトノベル界隈のコンテンツが原作者/企業独占でなくなる動きが見られました。これまでは二次創作作品が表立って商業ラインに乗ることは極めて稀だったため、この角川系列の解禁ラッシュは「小説のオープンソース化」というべき大きな地殻変動を起こす可能性を秘めています。

ログ・ホライズン 外伝 櫛八玉、がんばる!


2016年は……

紅玉いづきの創元行き

乙一ペンネームアンソロジー越前魔太郎もいるよ)

トリックスターズのリバイバルなど久住四季一般文芸本格化

・ノベル0創刊。ついでにモンスターデイズがリバイバルされ、モンスターデイズ2先輩卒業の予感。

城平京完全新作

・文豪ストレイドッグ外伝 綾辻VS京極

・グランドオーダーセプテム編・ロンドン編の桜井光京極堂トリビュート『赤天幕の胎』

カルトネット小説図書館ドラゴンは火を吹かない』の書籍化

・ホーンテッドキャンパス実写化

・火村シリーズ実写化

物語シリーズ映画の特典商法が西尾作品のクロスオーバー小説だった

・三途川シリーズのタイガ移籍。講談社BOX廃刊か。

・秋に出すと帯で告知されていたのに全然出なかったアリスインカレイドスピア2先輩

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