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2016-12-25

2016ラノベ周辺まとめ

最近のキャラノベ

 今年のキャラノベで流行したのは、なんといっても「時間もの」でしょう。

 ラノベでは時間ものは前々より人気の高いテーマでしたが、アニメ映画君の名は。』の社会現象化によってますます加速。『君の名は。』はノベライズベストセラーとなり、ノベライズとしては初めてダ・ヴィンチBOOKOFTHEYEARを受賞する快挙を成し遂げました。

 実写映画に「HiGH&LOW」で注目を浴びた山田裕貴が出演する『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』や『二度目の君、二度目の夏』、綾崎隼の初の講談社作品「君と時計」シリーズ、『僕が愛したすべての君へ』を筆頭に「きみぼく系タイトル」が大流行。

 『昨日の君は、僕だけの君だった』『僕はまた、君にさよならの数を見る』などそれっぽいタイトルも続出し、特に後者はタイトルとイラストを『ぼく明日』にめちゃくちゃ寄せているために「買い間違いを誘発しているのではないか」と一部で物議を醸しました。

ぼくは明日、昨日のきみとデートする (宝島社文庫)僕はまた、君にさよならの数を見る (富士見L文庫)昨日の君は、僕だけの君だった (幻冬舎文庫)

 今年の注目作は、相沢沙呼マスターピースともいわれる小説家もの『小説の神様』、数学に打ち込む少年少女を描いた王城夕紀の数学ガルパンこと『青の数学』、あやかしカフェのほっこり事件簿の形式をとりながらミステリマニアを唸らせた『スイーツレシピで謎解きを』。

 このうち『小説の神様』はダヴィンチBOOKOFTHEYEARにランクイン、『青の数学』はおすすめ文庫王国のベスト1に選出されています。

 昨年に比べると大規模なレーベル参入はなかったものの、『天使は奇跡を希う』『あしたはひとりにしてくれ』など文春文庫が毎月人気作家のキャラノベを出すようになり、キャラノベ参入を匂わせています。

 カクヨム(角川)・ツギクル(幻冬舎)に代表される出版社がバックについた小説投稿サイトのサービスインも今年のエピックでしょう。

 『君の膵臓を食べたい』のヒットからか、SKYHIGH文庫・ファン文庫などネット小説専門のキャラノベレーベルも複数創設されました。既存のラノベ寄りネット小説ソフトカバーでの出版が多いのに対し、MWやnex、タイガなど文庫レーベルを中心にキャラノベが展開されているためにキャラノベネット小説は文庫での出版が多いのが特徴です。

 一方、その傍らでひっそりとレーベルを畳むところも。終了レーベルエアロ文庫。朝日文庫へと作品統合され、吸収合併というかたちで幕をおろしました。

 講談社BOXも終了説がささやかれていますが、依然として不定期ではあれど刊行中。しかし、講談社タイガの編集者インタビューでBOXの話題に対して露骨に言葉を濁すなど不穏な動きが見えています。

栗城:「ホワイトハート」は女性向けのライトノベルです。主にファンタジー、BL、ライトミステリーを刊行しています。「十二国記」シリーズとか「欧州妖異譚」シリーズなどが代表作でしょうか。「講談社ノベルス」は先ほども少しお話ししましたが、書下ろしミステリを中心とした新書サイズのジャンル小説です。「メフィスト」は年三回発行している小説誌で、今年から電子書籍のみの刊行になりました。「講談社タイガ」は昨年創刊した「講談社ノベルス」の兄弟レーベルです。「講談社BOX」は──。

廣田:オタクカルチャーと文学が融合した文芸誌といった形でしょうか?

「講談社タイガ」が切り拓くフィクションの未来。小説の強度とは?【前編】 | cotasより


キャラノベ融和が進むラノベミステリ

 講談社タイガ新潮文庫nex・ノベルゼロなどのマニア向けキャラノベレーベルの出現や円居挽古野まほろ、青崎有吾など多くのミステリ作家がそうしたキャラノベレーベルに参入するなどミステリ界隈とキャラノベの融和が進んだ一年でした。

 講談社タイガからは三途川シリーズの最新作『トランプソルジャーズ』、年末賞レースにも顔を出した『アンデッドガール・マーダーファルス2』、古野まほろ講談社復帰作『臨床真実士ユイカの論理 文渡家の一族』などが登場。

 新潮文庫nexからは作者お得意の学園裁判ミステリに加えて歴史改変SFとしての要素も出現した『シャーロック・ノート2』など新規作も出ましたが、文庫落ちや新装版が多くいまいちパッとしない一年でした。

 今年のキャラノベ融和の象徴は、講談社ノベルスの『その可能性はすでに考えた』シリーズのミステリ論壇での絶賛でしょう。1作目が論壇で話題を呼び、続く2作目となる『聖女の毒杯』は年末賞レースを制する絶賛を浴びました。かつての『スノーホワイト』『らいちシリーズ』を彷彿とさせる破竹の勢いで、今後注目すべきタイトルになりました。

聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた (講談社ノベルス)

 また、山崎賢人主演で実写化される古典部シリーズ久々の新刊となった『いまさら翼といわれても』は文芸書としては異例の速度でベストセラーとなり、書店を動かすビッグシリーズの仲間入りを果たしました。

 この他、キャラノベでは短編連作ファンタジーミステリの『ツカイ・J・マクラウドの事件簿』、最終話の超絶技巧からミステリ界隈から高い評価を得た『スイーツレシピで謎解きを』、上遠野浩平の久々の祥伝社作品『パンゲアの零兆遊戯』、ついに本文にカラーイラストがついた『珈琲店タレーランの事件簿』久々の新刊、徳間書店から文庫判書籍として出たのに徳間文庫ではない『広島の探偵』、ネット小説発の女性ホームズもの『シャーベット・ゲーム』が登場しました。

 ミステリとキャラノベの融和が進む一方、大論争を巻き起こしたのは海外ラノベの『女子高生探偵シャーロット・ホームズの冒険』の表紙でした。原書とは違って翻訳版表紙が美少女イラストであることが「内容に合っていない」「性的」と激しい賛否を呼び、美少女系イラストも多いキャラノベ表紙に一石を投じました。

女子高生探偵シャーロット・ホームズの冒険 上 (竹書房文庫)

 ミステリ誌のラノベ書評ではキャラノベを中心にしなければならないほど純粋なライトノベルレーベルにおいてはミステリは依然少ない傾向にあるものの、デビュー作が話題を呼んだ『遊者戦記 #君とリアルを取り戻すRPG』、『代償のギルタオン』コンビの新作ファンタジーミステリ『殺人探偵・天刀狼真』、「何故メディアワークス文庫から出なかったのか」と言われた現実的作風の電撃対象受賞作『ただ、それだけでよかったんです。』『おはよう、愚か者。おやすみ、ボクの世界』、京大ミス研出身者によるラノミス『うさぎ強盗には死んでもらう』、イラストがない電撃文庫にキャラノベっぽいイラストが付いた新装版『僕らはどこにも開かない -There are no facts, only interpretations.-』などが刊行されました。


時間ものが席巻したラノベSF

 「きみぼく系」といわれるキャラノベ界隈における時間ものの流行は「君の名は。」の社会現象化で加速し、日本SF最後の砦となったハヤカワにも流入

 『僕が愛したすべての君へ』『君を愛したひとりの僕へ』は正統的時間SFのギミックを使いながら、キャラノベ的な恋愛要素も絡めて、近年のハヤカワJAの中ではかなりのベストセラーとなりました。

 純粋なラノベレーベルにおいても時間もの(+青春恋愛)の流行が到来してきており、複数人ループ+恋愛ものの『いま、n回目のカノジョ』、時間ものを多く出すガガガ文庫の『ヒイラギエイク』など話題作がぽつぽつ出ています。

今年のハヤカワJAはライトノベル作家を精力的に起用しており、毎月のように意欲的なラノベSFを刊行しています。百合SFとして注目された『ノノノ・ワールドエンド』、人情おじショタSFファンタジーの『血と霧』、「コードギアス」のような世界設定の青春クライムSF『子どもたちは狼のように吠える』、表紙と内容の乖離が物議を醸した『ヒュレーの海』、池上永一を彷彿とさせる沖縄ものの『黒豚姫の神隠し』など新顔が多数登場。ラブライブ二次創作ながらSF新人賞を受賞し話題になるも完成度の面で賛否両論を呼んだ『最後にして最初のアイドル』、冲方丁復帰後のSF作品『マルドゥック・アノニマス』も刊行され、賑わいを見せました。

ハヤカワ以外に視点を移すと、あの清野静の久々の新作にして「ポストサクラダリセット」の呼び声も高い『さよならサイキック』、ニンジャスレイヤーほんやくチームの(マジの)翻訳小説『ハーン・ザ・ラストハンター』『ストームダンサー』、角川ホラー・JBOOKSの連動作『この世で最後のデートをきみと』『きみといたい、朽ち果てるまで』、長谷敏司ホモソーシャルスポーツSF『ストライクフォール』、「HiGH&LOW」の神回として知られる2期8話の脚本家による航空宇宙SF『月とライカと吸血姫』、直木賞候補選出の直後に出た『テスタメントシュピーゲル3』が登場。

 そして、日本全土が横浜駅になるという壮大すぎる設定でSF界を騒然とさせた『横浜駅SF』も刊行。装丁ラノベ的ではないものの、実際の横浜駅プロモーションが展開され、書籍版刊行前からコミカライズが決定するなどカドカワBOOKS側も鳴り物入り作品としてアピールしています。

カクヨムにおける二次創作の解禁やマルドゥック二次創作小説集『マルドゥック・ストーリーズ』の刊行など、作家とそれ以外の距離が大幅に縮まった年となりましたが、来年は『最初にして最後のアイドル』『横浜駅SF』などファンメイドネット小説がSFをけん引していくのかもしれません。

横浜駅SF (カドカワBOOKS)


キャラノベラノベで拡がるオリジナルファンタジー

 ライトノベルファンタジーといえば、レベルやスキルを導入したなろう系の異世界転生ものが主流となっていますが、そうした流れとは別にラノベファンタジーが芽吹いています。

 そうしたラノベファンタジーを多く生み出す源として注目したいのが、今年から動き出した創元ファンタジイ新人賞です。

 日本において一度根絶したファンタジー系新人賞のあらたな受け皿として注目されたこの賞ですが、サガフロンティア2を彷彿とさせる戦記ものの『魔導の系譜』やローファンタジーの『玉妖綺譚』などライトノベル的作品が多数輩出されており、ラノベ読みもその動きを押さえておきたい賞の一つになっています。

魔導の系譜 (創元推理文庫)

 ライトノベルレーベルにおいては『剣と炎のディアスフェルド』、『この大陸で、フィジカは悪い薬師だった』、『血翼王亡命譚』、『セブンサーガ』など電撃文庫が数多くファンタジー新作を出しています。

 この他ラノベ単行本なのになぜかカドカワBOOKSから出なかった『ノラ猫マリイ』、ガガガ文庫ライアーソフトシナリオライターラノベデビュー作『妖姫のおとむらい』、犬村小六の新作『やがて恋するヴィヴィ・レイン』、異世界ファンタジー+医療関係の時事ネタ山田風太郎という独特すぎる作風でカルト的人気を誇る『魔法医師の診療記録』など注目作が揃っています。

 このほか「ファンタジーに弱い」といわれるキャラノベにおいては『ミュース 翡翠の竜使い』、『血と霧』、『翠玉姫演義 ―宝珠の海の花嫁―』、『紅霞後宮物語』、『皿の上の聖騎士』などハイファンタジーが刊行されています。厳密にいえばキャラノベの主流になっている「妖怪もの」もファンタジーであり、「キャラノベファンタジーは少ない」は正しくないといえます。



増大するラノベ実写化

 今年〜来年にかけてはライトノベルライト文芸の実写化作品が多数公開されます。

 「図書館戦争」「ビブリア古書堂の事件手帖」「掟上今日子の備忘録」「戦力外捜査官」など10年代に入ってからラノベ実写化は目立つようになってきましたが、ライト文芸勢力拡大に伴ってメディアミックスがより積極的に行われるようになりました。

 特にライト文芸の場合、ライトノベルメディアミックス黄金パターンである「漫画→ドラマCD→アニメ」を経由せず実写ドラマや映画に持ち込めることもあって、盛んになっています。 

 また、「真田丸」「HiGH&LOW」「逃げるは恥だが役に立つ」などのテレビドラマや「シン・ゴジラ」「アイアムアヒーロー」などの特撮映画のヒットでアニメファンやゲームファンも実写作品に目を向けることが急増していることも追い風となって、今後ラノベ/キャラノベ実写化はますます多くなるでしょう。

 本年度は「植物図鑑」「ホーンテッド・キャンパス」「僕は明日、昨日のきみとデートする」が公開、来年はSPドラマの連続化「視覚探偵・日暮旅人」、なろう発では初めての実写化となる「君の膵臓を食べたい」、河野裕のデビュー作「サクラダリセット」、ガガガ文庫の時間もの恋愛枠「二度めの夏、二度と会えない君」、MW文庫では3度目の実写化となる「ちょっと今から仕事やめてくる」などが公開予定となっております。

 中でも最大の物議を醸したのは「ハルチカ」と「氷菓」でしょう。

ハルチカ」は原作とは違って異性愛を前面に押し出したような予告が原作ファンから批判されました。

氷菓」は奉太郎役(山崎賢人)の配役が物議を醸しています。

 こうしたラノベ実写化の傾向としては、ジャニーズEXILE一族よりも松坂桃李福士蒼汰山田裕貴などの若手特撮俳優が起用されるというものがあります。こうした実写化にはつきものといわれているジャニーズEXILEキャストは意外と少なく、特撮出身俳優が複数作を掛け持ちしているのが目立っています。

 たまたま被っただけなのかもしれないのですが、EXILEを起用した「ビブリア古書堂」やジャニーズを起用した「ハルチカ」が反発を招いていることの反省として、年間撮影で鍛えられオタク層にも受け入れられやすい特撮俳優を起用している……のかもしれません。

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