小説☆ワンダーランド このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2017-03-18

ライト文芸雑語りへのリファレンス

最近、ライト文芸/キャラクター文芸/キャラノベへの間違った理解が目立ちます。

ライトノベルへの偏見を批判する者であっても、ライト文芸に関しては「あやかしカフェのほっこり事件簿しかない」「多様性がない」と認識してしまっていることも多く、大変つらいです。

ということで、そういった偏見をなくそうと思って、よく見るライト文芸への偏見とその反例としての作品を挙げました。

先回りしておきますが、ハヤカワ文庫JAとノベルゼロはキャラノベです。

ライト文芸には性描写がない

君の膵臓をたべたいジャバウォック 真田邪忍帖 (Novel 0)咎人の星

ライト文芸には村ものミステリがない

ぐるりよざ殺人事件  セーラー服と黙示録 (角川文庫)露壜村事件    生き神少女とザンサツの夜 (角川文庫)臨床真実士ユイカの論理 文渡家の一族 (講談社タイガ)

ライト文芸には百合がない

ノノノ・ワールドエンド (ハヤカワ文庫JA)裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル (ハヤカワ文庫JA)少女妄想中。 (メディアワークス文庫)

ライト文芸には女騎士がいない

皿の上の聖騎士〈パラディン〉1 ― A Tale of Armour ―<皿の上の聖騎士〈パラディン〉> (NOVEL 0)

ライト文芸にはバラバラ殺人がない

魔獣調教師ツカイ・J・マクラウドの事件録 獣の王はかく語りき (Novel 0)きみの分解パラドックス (富士見L文庫)

ライト文芸には中世ファンタジーがない

魔導の系譜 (創元推理文庫)砂上の剣―イーハの少年剣士 (メディアワークス文庫)

ライト文芸には時代小説がない

桜花忍法帖 バジリスク新章 (上) (講談社タイガ)鬼狩りの梓馬 (角川ホラー文庫)

ライト文芸にはロボットものがない

ティターンズの旗のもとに〈上〉 ADVANCE OF Z (角川文庫)

ライト文芸にはSFがない

螺旋時空のラビリンス (集英社オレンジ文庫)バビロン 2 ―死― (講談社タイガ)

ライト文芸アニメのような表紙ばかりだ

ヒーローズ(株)!!! (メディアワークス文庫)書店男子と猫店主の平穏なる余暇 (集英社オレンジ文庫)

ライト文芸には挿絵がない

魔界探偵冥王星O―ペインのP (メディアワークス文庫)裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル (ハヤカワ文庫JA)天久鷹央の推理カルテ(新潮文庫)

以上です。

ライト文芸は決して女性向けの妖怪日常の謎学園恋愛ミステリしかないわけではありません。

これをきっかけに、ライト文芸の奥深さを味わっていただければ幸いです。

2017-03-02

宮澤伊織『裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル』

『ウは宇宙ヤバいのウ』でSFマニアからの注目を集めた宮澤伊織の最新ラノベ百合SFです。早川は定期的に百合ラノベを出さなければならない呪いにかかっているのか。

こういうことを言うと必ずといっていいほど「これはラノベではない」と反論されそうですが、なんとこの本には挿絵があるので、これを見せれば「ラノベだ」と思ってもらえることでしょう。

内容ですが、くねくねや八尺様、きさらぎ駅などの都市伝説をモチーフに、怪異が跋扈する「裏世界」に足を踏み入れた2人の女子大生百合!が描かれます。

一応SFということで、怪異にSF的解釈が加わっているのが特徴。しかしホラー要素も結構強く、グロテスクな描写も若干あります。ハヤカワ文庫よりも角川ホラー文庫から出そう。

とはいってもそこまで緊迫した内容ではなく、闇の百合でもなく、日常から一歩足を踏み外した二人の少女の友情と青春を描くある種のほほんとした作風ですのでガチガチのホラーがダメでも安心してください。

解説にもある通り、ここで登場する怪異には元ネタがあるので、それらを知っているとニヤリとできる部分があります。そこまでネタバレになっていないと思うので、先に解説に挙がっている怪談を読んでおくとより楽しいでしょう。

サブタイトルでなんとなく勘づくかもしれませんが、本作における怪異の解釈や異世界の設定などは「コワすぎ!」「カルト」などの白石作品に近いものがあります。特に怪異の解釈および百合要素から「貞子vs伽椰子」を彷彿とさせます。

なので、この百合ラノベが気に入ったらさだかやを観ると(二つの意味で)オススメです。

2017-02-07

古野まほろ『おんみょう紅茶屋らぷさん 〜式神のいるお店で、おかわりをどうぞ〜』

メディアワークス文庫より刊行されている、キャラノベ作家古野まほろのキャラノベシリーズ第二巻。

古野まほろのもう一つのキャラノベシリーズであるユイカシリーズもこれと同月に2巻が出ており、内容もユイカシリーズとのクロスオーバーが密接にあるものとなっております。

そういえば1巻も「講談社との和解」という歴史的ファクターとなったユイカ1と同月刊行でしたが、これは偶然ではなく、らぷさんとユイカで表と裏を成す作品となっている仕掛けの一つでしょう。

「人の嘘を判別できる」という特殊能力はあれど、「犯人当て」「殺人事件」「読者への挑戦状」など探偵小説の王道をいくユイカとは対照的に、らぷさんは殺人事件や犯人当てはなく、店に来る客の悩みを解決して能力バトルを繰り広げる「あやかしカフェのほっこり事件簿」という色が強いです。

しかし、その中においても悩みの解決は十分にミステリ的な手法をとっており、天帝シリーズでも見せた紅茶雑学やオタネタもあいまって非常に楽しめる作品となっています。

1巻はだいぶキャラノベ的で古野まほろ初心者に向けたようなつくりでしたが、2巻では物語で暗躍する悪の陰陽師との対決やユイカ・正朝姉弟の陰惨な過去などが語られ、だいぶきな臭くなってきました。特にシリアス回である3話はユイカシリーズの根幹を成す設定が語られています。

そのため、初心者よりは古野まほろ作品を読んでいるファン向けの内容といえなくもありません。

同じく陰陽道が登場する天帝バースとはまた別のバースの話ですが、ユイカシリーズが刊行されている講談社の中断シリーズである探偵小説シリーズと「陰陽師」が共通していること、また本作の陰陽師は「次元を移動する力を有する」ことを踏まえれば、天帝バースとのクロスオーバーも、ありえなくは……ないかも。

「あの古野まほろがあやかしカフェのほっこり事件簿を!?」と驚いたものですが、実際は講談社と和解した古野まほろの新境地ともいうべき試みが堪能できる作品となりました。

2017-01-01

昨年読んで面白かった本

シャーロック・ノート2

シャーロック・ノートII: 試験と古典と探偵殺し (新潮文庫nex)

円居挽の学園裁判ミステリ

探偵養成学校で起こる事件と、それを解き明かす探偵候補生の対決を描いた作品。

短編連作のかたちを取りながら学校で教鞭をとるレジェンド級探偵の登場と活躍を描き、最終的にそのすべてが大事件のカギを握るという構成と、過去に傷を負った少年少女の苦悩と再起を描く青春小説としての完成度が高い。

とはいえ、これをベストにしたのは別の理由があって、それは作中でさらっと明かされるとんでもない事実にある。それは「キューバ危機を回避できず第三次世界大戦が勃発したパラレルワールドである」ということで、これはもしかしたら学園裁判ものではなく歴史改変SFなのではないか!?と、劇舞台に突然ダンプが突っ込んできたような衝撃があった。

今のところあまりメインストーリーには絡まないものの、もしこれが存分に活かされることがあればラノベミステリ史とSF史に名を残すとてつもない作品になるという予感がある。

ストライクフォール

ストライクフォール (ガガガ文庫)

本年度の実質ガルパンその1。ロボットはいいぞ。

双子の片割れがロボットバトルの天才で、その兄は弟が天才であることに鬱屈としていたのだが、急死した弟に代わって急遽ロボットバトルに出ることになって……という要するにロボット版「タッチ」なんですが、やってることは「タッチ」というよりもガルパンに近い。

変態が出てきたり安保闘争が出てきたり超高度AIが出てきたりしてドロドロになる長谷作品にしては、恐れるほど爽やか。が、そこかしこで不穏すぎる設定が顔を出しているので、終盤はいつもの長谷作品っぽくなりそう。

青の数学

青の数学 (新潮文庫nex)

本年度の実質ガルパンその2。数学はいいぞ。

数学の天才高校生同士がひたすらに数学バトルするというデビュー作『天盆』路線のお話です。

いちいち出てくるキャラが天才と実力者のオンパレードで、自分の使える手を駆使して難問を乗り越えていく様がやっぱりこれもガルパンに近い。

数学というどうやっても地味な個人的戦いにならざるを得ない題材を、濃いキャラと緻密な文章演出でうまく料理して超ド級エンターテイメントに変えた逸作。

個人と国家

個人と国家 人魔調停局 捜査File.02<人魔調停局 捜査File> (NOVEL 0)

MF文庫Jから「萌え0%」とかいうどっかで聞いたことのあるようなコピーをひっさげ現れたファンタジーラノベの続編。

モンスターのいる世界で、テロリストと戦う警察官の話なのだが、警察要素が抜かれてその代わりにどう見てもアメリカソ連がモデルの2大国冷戦移民問題がテーマのポリティカルサスペンスになり、「異世界ファンタジーでメタルギアソリッドをやる」という様相と化した。

さすがにこれをMFでやるのはきついと判断されたのか、大人向けキャラノベレーベルのノベルゼロに移籍しましたが、移籍した途端話の内容が過激になるわメインヒロインがおっさんになるわで凄まじい内容だった。

図書館ドラゴンは火を吹かない

図書館ドラゴンは火を吹かない

アリュージョニスト界隈で人気のなろう小説。

少年とドラゴンの冒険と交流を描くおねショタ異種族のラブストーリーで、童話的な語り口と世界観にのせて繰り広げられるのがなんとも魅力的。

よくイメージされるなろうファンタジーのようなゲーム的要素や転生はなく、初期紅玉いづき作品に近い心温まる感動のいちゃラブ童話ファンタジーなので、一般文芸として、こう、膵臓とかに滑り込ましてアリュージョニスト界隈以外にめちゃくちゃに布教していきたいというのが抱負です。

魔獣調教師ツカイ・J・マクラウドの事件録

魔獣調教師ツカイ・J・マクラウドの事件録 獣の王はかく語りき (Novel 0)

本年度キャラノベの思わぬ拾い物。

天才イケメン魔獣調教師が魔獣絡みの事件を解決したり人を殺したりするゴシックファンタジーミステリ

ちょっとビターなファンタジーかと思いきや、いろいろと趣向を凝らしたミステリ

話は結構暗い(大人向けキャラノベレーベルなので濡れ場もある)のですが、こちらの予想を上回る展開が全てのエピソードにおいて用意されており、読んでいて非常に楽しかった。

ステージ・オブ・ザ・グラウンド

ステージ・オブ・ザ・グラウンド (電撃文庫)

ロウきゅーぶ!』の作者によるイケメン野球ラノベ。今年の電撃に多かった「何故メディアワークス文庫で出なかった」案件ですね。

どこかで壁をバリバリ破って幼女キャラが出るかと思ったら、まったくそんなことはなく圧倒的イケメンバディ素子を大量吸引して終わってしまった。

挫折経験のある男と天才肌で誰にもない能力を持つ男のバディと、それが結実する野球シーンの駆け引きが面白くてたまらない。

魔導の系譜

魔導の系譜 (創元推理文庫)

創元ファンタジー新人賞。あらすじとイラストのラノベっぽさが創元のファンタジーなのに何事だ!と一部を怒らせましたが本当に90年代のラノベだった。

魔法が使えない少年が国を揺るがす戦乱に巻き込まれていくというプレステRPGまんまな展開が逆に結構新鮮で面白かった。具体的にはサガフロンティア2と幻想水滸伝です。

月とライカと吸血姫

月とライカと吸血姫 (ガガガ文庫)

HiGH&LOW2期8話の脚本家による社会主義+宇宙+ファンタジーラノベ。宇宙を目指す落ちこぼれ候補生と、実験のためロケットに乗せられることになった吸血鬼の恋愛を描く。

発売前の宣伝では「ポスト飛空士狙ってるっス!」みたいな文言があって、「今更飛空士フォロワー!?」と思った。が、実際は濃密に社会主義要素(言論統制や暗殺が平然とある)があり、『耳刈ネルリ』『約束の国』などロシアラノベ系譜に連なる作品だった。

それを抜きにしても、扱いや生まれで周囲から蔑まされる人々が、明日死ぬかもしれないと分かっていても宇宙を目指す姿にはそれでもグッときた。特に終盤の熱さはすごい。

2016-12-25

2016ラノベ周辺まとめ

最近のキャラノベ

 今年のキャラノベで流行したのは、なんといっても「時間もの」でしょう。

 ラノベでは時間ものは前々より人気の高いテーマでしたが、アニメ映画君の名は。』の社会現象化によってますます加速。『君の名は。』はノベライズベストセラーとなり、ノベライズとしては初めてダ・ヴィンチBOOKOFTHEYEARを受賞する快挙を成し遂げました。

 実写映画に「HiGH&LOW」で注目を浴びた山田裕貴が出演する『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』や『二度目の君、二度目の夏』、綾崎隼の初の講談社作品「君と時計」シリーズ、『僕が愛したすべての君へ』を筆頭に「きみぼく系タイトル」が大流行。

 『昨日の君は、僕だけの君だった』『僕はまた、君にさよならの数を見る』などそれっぽいタイトルも続出し、特に後者はタイトルとイラストを『ぼく明日』にめちゃくちゃ寄せているために「買い間違いを誘発しているのではないか」と一部で物議を醸しました。

ぼくは明日、昨日のきみとデートする (宝島社文庫)僕はまた、君にさよならの数を見る (富士見L文庫)昨日の君は、僕だけの君だった (幻冬舎文庫)

 今年の注目作は、相沢沙呼マスターピースともいわれる小説家もの『小説の神様』、数学に打ち込む少年少女を描いた王城夕紀の数学ガルパンこと『青の数学』、あやかしカフェのほっこり事件簿の形式をとりながらミステリマニアを唸らせた『スイーツレシピで謎解きを』。

 このうち『小説の神様』はダヴィンチBOOKOFTHEYEARにランクイン、『青の数学』はおすすめ文庫王国のベスト1に選出されています。

 昨年に比べると大規模なレーベル参入はなかったものの、『天使は奇跡を希う』『あしたはひとりにしてくれ』など文春文庫が毎月人気作家のキャラノベを出すようになり、キャラノベ参入を匂わせています。

 カクヨム(角川)・ツギクル(幻冬舎)に代表される出版社がバックについた小説投稿サイトのサービスインも今年のエピックでしょう。

 『君の膵臓を食べたい』のヒットからか、SKYHIGH文庫・ファン文庫などネット小説専門のキャラノベレーベルも複数創設されました。既存のラノベ寄りネット小説ソフトカバーでの出版が多いのに対し、MWやnex、タイガなど文庫レーベルを中心にキャラノベが展開されているためにキャラノベネット小説は文庫での出版が多いのが特徴です。

 一方、その傍らでひっそりとレーベルを畳むところも。終了レーベルエアロ文庫。朝日文庫へと作品統合され、吸収合併というかたちで幕をおろしました。

 講談社BOXも終了説がささやかれていますが、依然として不定期ではあれど刊行中。しかし、講談社タイガの編集者インタビューでBOXの話題に対して露骨に言葉を濁すなど不穏な動きが見えています。

栗城:「ホワイトハート」は女性向けのライトノベルです。主にファンタジー、BL、ライトミステリーを刊行しています。「十二国記」シリーズとか「欧州妖異譚」シリーズなどが代表作でしょうか。「講談社ノベルス」は先ほども少しお話ししましたが、書下ろしミステリを中心とした新書サイズのジャンル小説です。「メフィスト」は年三回発行している小説誌で、今年から電子書籍のみの刊行になりました。「講談社タイガ」は昨年創刊した「講談社ノベルス」の兄弟レーベルです。「講談社BOX」は──。

廣田:オタクカルチャーと文学が融合した文芸誌といった形でしょうか?

「講談社タイガ」が切り拓くフィクションの未来。小説の強度とは?【前編】 | cotasより


キャラノベ融和が進むラノベミステリ

 講談社タイガ新潮文庫nex・ノベルゼロなどのマニア向けキャラノベレーベルの出現や円居挽古野まほろ、青崎有吾など多くのミステリ作家がそうしたキャラノベレーベルに参入するなどミステリ界隈とキャラノベの融和が進んだ一年でした。

 講談社タイガからは三途川シリーズの最新作『トランプソルジャーズ』、年末賞レースにも顔を出した『アンデッドガール・マーダーファルス2』、古野まほろ講談社復帰作『臨床真実士ユイカの論理 文渡家の一族』などが登場。

 新潮文庫nexからは作者お得意の学園裁判ミステリに加えて歴史改変SFとしての要素も出現した『シャーロック・ノート2』など新規作も出ましたが、文庫落ちや新装版が多くいまいちパッとしない一年でした。

 今年のキャラノベ融和の象徴は、講談社ノベルスの『その可能性はすでに考えた』シリーズのミステリ論壇での絶賛でしょう。1作目が論壇で話題を呼び、続く2作目となる『聖女の毒杯』は年末賞レースを制する絶賛を浴びました。かつての『スノーホワイト』『らいちシリーズ』を彷彿とさせる破竹の勢いで、今後注目すべきタイトルになりました。

聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた (講談社ノベルス)

 また、山崎賢人主演で実写化される古典部シリーズ久々の新刊となった『いまさら翼といわれても』は文芸書としては異例の速度でベストセラーとなり、書店を動かすビッグシリーズの仲間入りを果たしました。

 この他、キャラノベでは短編連作ファンタジーミステリの『ツカイ・J・マクラウドの事件簿』、最終話の超絶技巧からミステリ界隈から高い評価を得た『スイーツレシピで謎解きを』、上遠野浩平の久々の祥伝社作品『パンゲアの零兆遊戯』、ついに本文にカラーイラストがついた『珈琲店タレーランの事件簿』久々の新刊、徳間書店から文庫判書籍として出たのに徳間文庫ではない『広島の探偵』、ネット小説発の女性ホームズもの『シャーベット・ゲーム』が登場しました。

 ミステリとキャラノベの融和が進む一方、大論争を巻き起こしたのは海外ラノベの『女子高生探偵シャーロット・ホームズの冒険』の表紙でした。原書とは違って翻訳版表紙が美少女イラストであることが「内容に合っていない」「性的」と激しい賛否を呼び、美少女系イラストも多いキャラノベ表紙に一石を投じました。

女子高生探偵シャーロット・ホームズの冒険 上 (竹書房文庫)

 ミステリ誌のラノベ書評ではキャラノベを中心にしなければならないほど純粋なライトノベルレーベルにおいてはミステリは依然少ない傾向にあるものの、デビュー作が話題を呼んだ『遊者戦記 #君とリアルを取り戻すRPG』、『代償のギルタオン』コンビの新作ファンタジーミステリ『殺人探偵・天刀狼真』、「何故メディアワークス文庫から出なかったのか」と言われた現実的作風の電撃対象受賞作『ただ、それだけでよかったんです。』『おはよう、愚か者。おやすみ、ボクの世界』、京大ミス研出身者によるラノミス『うさぎ強盗には死んでもらう』、イラストがない電撃文庫にキャラノベっぽいイラストが付いた新装版『僕らはどこにも開かない -There are no facts, only interpretations.-』などが刊行されました。


時間ものが席巻したラノベSF

 「きみぼく系」といわれるキャラノベ界隈における時間ものの流行は「君の名は。」の社会現象化で加速し、日本SF最後の砦となったハヤカワにも流入

 『僕が愛したすべての君へ』『君を愛したひとりの僕へ』は正統的時間SFのギミックを使いながら、キャラノベ的な恋愛要素も絡めて、近年のハヤカワJAの中ではかなりのベストセラーとなりました。

 純粋なラノベレーベルにおいても時間もの(+青春恋愛)の流行が到来してきており、複数人ループ+恋愛ものの『いま、n回目のカノジョ』、時間ものを多く出すガガガ文庫の『ヒイラギエイク』など話題作がぽつぽつ出ています。

今年のハヤカワJAはライトノベル作家を精力的に起用しており、毎月のように意欲的なラノベSFを刊行しています。百合SFとして注目された『ノノノ・ワールドエンド』、人情おじショタSFファンタジーの『血と霧』、「コードギアス」のような世界設定の青春クライムSF『子どもたちは狼のように吠える』、表紙と内容の乖離が物議を醸した『ヒュレーの海』、池上永一を彷彿とさせる沖縄ものの『黒豚姫の神隠し』など新顔が多数登場。ラブライブ二次創作ながらSF新人賞を受賞し話題になるも完成度の面で賛否両論を呼んだ『最後にして最初のアイドル』、冲方丁復帰後のSF作品『マルドゥック・アノニマス』も刊行され、賑わいを見せました。

ハヤカワ以外に視点を移すと、あの清野静の久々の新作にして「ポストサクラダリセット」の呼び声も高い『さよならサイキック』、ニンジャスレイヤーほんやくチームの(マジの)翻訳小説『ハーン・ザ・ラストハンター』『ストームダンサー』、角川ホラー・JBOOKSの連動作『この世で最後のデートをきみと』『きみといたい、朽ち果てるまで』、長谷敏司ホモソーシャルスポーツSF『ストライクフォール』、「HiGH&LOW」の神回として知られる2期8話の脚本家による航空宇宙SF『月とライカと吸血姫』、直木賞候補選出の直後に出た『テスタメントシュピーゲル3』が登場。

 そして、日本全土が横浜駅になるという壮大すぎる設定でSF界を騒然とさせた『横浜駅SF』も刊行。装丁ラノベ的ではないものの、実際の横浜駅プロモーションが展開され、書籍版刊行前からコミカライズが決定するなどカドカワBOOKS側も鳴り物入り作品としてアピールしています。

カクヨムにおける二次創作の解禁やマルドゥック二次創作小説集『マルドゥック・ストーリーズ』の刊行など、作家とそれ以外の距離が大幅に縮まった年となりましたが、来年は『最初にして最後のアイドル』『横浜駅SF』などファンメイドネット小説がSFをけん引していくのかもしれません。

横浜駅SF (カドカワBOOKS)


キャラノベラノベで拡がるオリジナルファンタジー

 ライトノベルファンタジーといえば、レベルやスキルを導入したなろう系の異世界転生ものが主流となっていますが、そうした流れとは別にラノベファンタジーが芽吹いています。

 そうしたラノベファンタジーを多く生み出す源として注目したいのが、今年から動き出した創元ファンタジイ新人賞です。

 日本において一度根絶したファンタジー系新人賞のあらたな受け皿として注目されたこの賞ですが、サガフロンティア2を彷彿とさせる戦記ものの『魔導の系譜』やローファンタジーの『玉妖綺譚』などライトノベル的作品が多数輩出されており、ラノベ読みもその動きを押さえておきたい賞の一つになっています。

魔導の系譜 (創元推理文庫)

 ライトノベルレーベルにおいては『剣と炎のディアスフェルド』、『この大陸で、フィジカは悪い薬師だった』、『血翼王亡命譚』、『セブンサーガ』など電撃文庫が数多くファンタジー新作を出しています。

 この他ラノベ単行本なのになぜかカドカワBOOKSから出なかった『ノラ猫マリイ』、ガガガ文庫ライアーソフトシナリオライターラノベデビュー作『妖姫のおとむらい』、犬村小六の新作『やがて恋するヴィヴィ・レイン』、異世界ファンタジー+医療関係の時事ネタ山田風太郎という独特すぎる作風でカルト的人気を誇る『魔法医師の診療記録』など注目作が揃っています。

 このほか「ファンタジーに弱い」といわれるキャラノベにおいては『ミュース 翡翠の竜使い』、『血と霧』、『翠玉姫演義 ―宝珠の海の花嫁―』、『紅霞後宮物語』、『皿の上の聖騎士』などハイファンタジーが刊行されています。厳密にいえばキャラノベの主流になっている「妖怪もの」もファンタジーであり、「キャラノベファンタジーは少ない」は正しくないといえます。



増大するラノベ実写化

 今年〜来年にかけてはライトノベルライト文芸の実写化作品が多数公開されます。

 「図書館戦争」「ビブリア古書堂の事件手帖」「掟上今日子の備忘録」「戦力外捜査官」など10年代に入ってからラノベ実写化は目立つようになってきましたが、ライト文芸勢力拡大に伴ってメディアミックスがより積極的に行われるようになりました。

 特にライト文芸の場合、ライトノベルメディアミックス黄金パターンである「漫画→ドラマCD→アニメ」を経由せず実写ドラマや映画に持ち込めることもあって、盛んになっています。 

 また、「真田丸」「HiGH&LOW」「逃げるは恥だが役に立つ」などのテレビドラマや「シン・ゴジラ」「アイアムアヒーロー」などの特撮映画のヒットでアニメファンやゲームファンも実写作品に目を向けることが急増していることも追い風となって、今後ラノベ/キャラノベ実写化はますます多くなるでしょう。

 本年度は「植物図鑑」「ホーンテッド・キャンパス」「僕は明日、昨日のきみとデートする」が公開、来年はSPドラマの連続化「視覚探偵・日暮旅人」、なろう発では初めての実写化となる「君の膵臓を食べたい」、河野裕のデビュー作「サクラダリセット」、ガガガ文庫の時間もの恋愛枠「二度めの夏、二度と会えない君」、MW文庫では3度目の実写化となる「ちょっと今から仕事やめてくる」などが公開予定となっております。

 中でも最大の物議を醸したのは「ハルチカ」と「氷菓」でしょう。

ハルチカ」は原作とは違って異性愛を前面に押し出したような予告が原作ファンから批判されました。

氷菓」は奉太郎役(山崎賢人)の配役が物議を醸しています。

 こうしたラノベ実写化の傾向としては、ジャニーズEXILE一族よりも松坂桃李福士蒼汰山田裕貴などの若手特撮俳優が起用されるというものがあります。こうした実写化にはつきものといわれているジャニーズEXILEキャストは意外と少なく、特撮出身俳優が複数作を掛け持ちしているのが目立っています。

 たまたま被っただけなのかもしれないのですが、EXILEを起用した「ビブリア古書堂」やジャニーズを起用した「ハルチカ」が反発を招いていることの反省として、年間撮影で鍛えられオタク層にも受け入れられやすい特撮俳優を起用している……のかもしれません。