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2017-11-15

鏡遊『セックス・ファンタジー』

セックス・ファンタジー (Novel 0)

セックス・ファンタジー (Novel 0)

大人の男向けエンタメノベルレーベルことノベルゼロの新刊『セックス・ファンタジー』を読みました。

大人の男向けエンタメノベルレーベルことノベルゼロがかような作品を出すことについては物議を醸しましたが、とにかく読んでみないことには話が分からないだろう、ということで買いました。

kindleで同日配信なので「表紙が恥ずかしい」という人も大丈夫ですよ。

それで、読んだ結果なんですが、

単純につまらなかったです。

こういうことはあんまり書きたくなかったんですけど、本当につまらなくてハァ……。

目に見えるクソポイントとかはあんまりなくて、とにかく虚無なんですよ。

話の筋としては、女が大好きな主人公がいろいろな女とHするというもので、話の背景には強大な力を持つ女性や、彼女らを筆頭にする勢力の争いなどというものがあるのですが、物語の大半がHに投入されていてそういう面がおざなりにされているのです。

『セックス・ファンタジー』というタイトルの通り、Hシーンはいっぱいありますがあまりにも多すぎて逆にげんなりしてきます。

しかもシチュエーションが単調で、とにかく挿れて汁を出すの繰り返しで食傷気味。

Hなラブコメディというより、単に延々と何百ページの続く卑猥な文章の集合体みたいでした。

なんだろう、大人の男向けというより多感な男子中学生向けなんだと思いました。

もうちょっと大人向けを掲げるのなら、Hとそれ以外で緩急をつけたりあまり下品になりすぎないようにしたりとかそういうのがいいんじゃないんでしょうか。

で、ノベルゼロがこういう作品を出したことについてですが、個人的にはありだと思います。

そもそもこれ以前にノベルゼロは濡れ場のある作品をガンガン出してるんですよ。だから「エロがある!」といって騒ぎ立てるのはちょっと筋違いかな〜と。

でもノベルゼロに期待しているのは何百ページもあるHな文章ではないんです。

とにかく小説として面白ければ何だっていいんです。

ノベルゼロが当初の一般文芸志向からライトノベル路線に舵を切っているのは挿絵が導入されたことからも明らかですが、それであっても「大人の男向け」にもたれてしまった作品はちょっと……。

現在はガガガ・スニーカーなどで『おにぎりスタッバー』『スーパーカブ』などのマニアックな作品を多く輩出してきた具志堅氏がノベルゼロに異動しているようなので、尖った作品を期待したいですね。

2017-10-31

ノベルゼロの『セックス・ファンタジー』に困惑する人々

セックス・ファンタジー (Novel 0)

セックス・ファンタジー (Novel 0)

大人の男向けエンタメノベルレーベルことノベルゼロから、『セックス・ファンタジー』というタイトルの本が出ます。

セックスでファンタジーというこのあまりにもド直球すぎるタイトルと表紙と内容から、「ノベルゼロはそういうレーベルじゃない!」という嘆きの声が多数寄せられています。


しかし、ちょっと待っていただきたい。

……別にノベルゼロは「硬派なラノベレーベル」とは謳っていないのだ。

それだから当然ダンジョンものは出るし、

濡れ場ありの作品だってもうすでにある。

ジャバウォック II ~真田冥忍帖~ (Novel 0)

ジャバウォック II ~真田冥忍帖~ (Novel 0)

『ジャバウォック』は極めて山田風太郎な作品なので、山風とかFGOの剣豪とか好きな人は読んでみてください。

この、なんというか無地の表紙に騙されがちだが、最近のノベルゼロ作品には口絵と挿絵がふんだんにある。

もうラノベなのである。

これは路線変更かもしれない。

しかし、ちょっと待っていただきたい。

ノベルゼロの創刊コンセプトは以下の通りである。


「NOVEL 0」のコンセプト、それは「大人の生き様」。たとえば、強大な敵に対し強く在りたい、逆境を打開したい、社会に抗い、誰にも恥じない生き様を見せたい。大人の男であれば誰もが求める「逆転感」を持つ痛快な物語を描き、提供する。

大人になった、男達へ――新たなエンタテインメント小説レーベル「NOVEL 0(ノベルゼロ)」創刊 | ダ・ヴィンチニュースより

ここにはエロ禁止とか萌え禁止とか書いてない。

そう、可愛いおんなのことエッチしたい!も「大人の生きざま」として肯定されての、『セックス・ファンタジー』なのだ。

だから『セックス・ファンタジー』はノベルゼロの当初コンセプトに沿っており、ノベルゼロは何ら路線変更をしていないことがわかる。

でも詳しいことは『セックス・ファンタジー』が出てからではないとなんともいえない。

現時点我々に出来ることは、『セックス・ファンタジー』を心待ちにすることだけだろう。

2017-10-27

十字静『図書迷宮』

図書迷宮 (MF文庫J)

図書迷宮 (MF文庫J)

【未読者向け感想】

あのMF文庫Jが規格外の問題作と言い切った作品。

520ページ。780円。

MF文庫として、ライトノベルとして、明らかに異形な風貌のそれはともすれば「最近のラノベとは違って〜」「ありきたりな軟派な作品とは違って〜」と言われそうな内容だが、愛と勇気といちゃいちゃが詰まった最近のラノベなので読んでください。

ゴシックファンタジーとしても、SFとしても、ミステリとしても、一読の価値はあります。

特に『幻想再帰のアリュージョニスト』『姑獲鳥の夏』『戦う司書』が好きな人は絶対チェックしてください。

とりあえず350ページまで頑張って読んでください。

話はそれからです。























【既読者向け感想】

これはすごい。日本のファンタジーとSFミステリに、瞠目すべき新人が現れた。

わざわざ「問題作」と言い張るとはどんなものか、と思って読んだらガツンと頭を殴られたような感覚。

雑に言ってしまうけど、350ページまではちょっと変わった普通のファンタジー。

世界観を把握するのが大変なので、読み進めるのに苦労するかもしれない。

でもそれはすべて、後半への布石だった。

350ページ以降のニトロブーストしまくった展開が物凄くて、一気に読んでしまった。

何重にも折り重なったメタフィクション

明かされる二人称の真の意味。

登場人物に過酷な試練が与えられる、壮絶熾烈なストーリー。

520ページのラブストーリー、あっという間に読み届けました。

何故これが『幻想再帰のアリュージョニスト』っぽいと思ったかというと、物語の構造概念そのものに迫ったギミックの数々がアリュージョニストと共通しているからです。

まず基本的な設定として、「魔道書に持ち主の定義を記載すると『ページを消費する』コストと引き換えにその定義が付与される」というものがあります。

例えばいくらバカでも、「学校で習うべき知識は全部知っている」と書けば、その通りになります。

図書迷宮』の戦闘はこの「こちらが有利になるような主人公の定義を書き込んでいき、状況を切り抜ける」という独特なものになっています。

さらに物語が進むと、突然あとがきやらジャンル言及やらこの小説を書いた筆者までも登場してきます。

こういう物語の概念そのものに話が及ぶ内容が最近作品っぽいと思いました。

さらに、「この物語を描いた筆者は誰か」という犯人当てのような要素もあります。

二転三転していき、叙述トリックも交えながら真相に辿り着いていく様は推理小説としての側面も併せ持っている。

容赦なくネタばれしますが、現実と空想がすり替わる展開や主人公の視点にトリックが仕組まれているのは京極夏彦のデビュー作たる『姑獲鳥の夏』を彷彿とさせます。

どちらも主人公が心的外傷持ちであることが重要な鍵になっているのも共通しています。

3年前の新人賞に送られてきた作品とのことですが、今年になって同時多発的に「本として出る」ことがギミックになっている新人作品が出現したのは偶然でしょうか。

……そう、『NO推理、NO探偵?』です。

あれとはアプローチが違いますが、ここまで確信に満ち満ちた作品が新人賞に送り込まれてくることは、単純にうれしい。

それであっても本質は、筆者が言う通りラブストーリーです。

500ページを越えるボリュームに詰め込まれた、異形の愛と勇気のおとぎばなし。

物語としてのフレームはおろか、書物としての形にすら意味を持たせたその発想は、衝撃そのもの。

間違いなく、今年最強の新人の一人でしょう。

2017-10-17

昭和のキャラノベ 獅子文六『箱根山』

箱根山 (ちくま文庫)

箱根山 (ちくま文庫)

先日私の手元に一冊の本が舞い込んできました。

表題に『箱根山』とだけ書いてあるその本は、表紙こそキャラノベチックではあるものの分厚く、帯文には「冒頭が退屈」とまで書かれていました。

この世の中において「冒頭が退屈」と言い切ってしまうとはよほどの本に違いあるまい。

そんなよく分からない怪しげな古い小説を読んでみたのであります。

「退屈だ」と断言された冒頭は、箱根の交通を巡る抗争の模様が描かれています。

抗争とはいっても会議を舞台に、軽妙な文体でちゃきちゃきとした論戦が繰り広げられるのです。

シン・ゴジラ』に近いものでしょう。

ちなみにここでは大量の会社の重役と官僚が矢継ぎ早に出てきますが、その大半は話に絡まないので忘れて結構です。

……あれそんなに退屈ではない。

お堅い小説かと思いきや、意外や意外、キャラノベとして出しても通用するような面白さがあることに気付いてしまいました。

会議シーンが過ぎると物語の舞台はいよいよ箱根山に移り、第三勢力として野心を抱く氏田観光の北条、互いに火花を散らす老舗旅館玉屋と若松屋の面々が登場してきます。

箱根山に構える2つの旅館の栄衰と、旅館の対立関係に挟まれてしまった乙夫と明日子のラブコメが語られていきます。

旅館の栄衰、というとやっぱりこうドロドロして重厚な感じ……と思ってしまいますが、実際はテンポ良い丁々発止の掛け合いや旅館よりも先住民族の研究に没頭する明日子の父、女主人として辣腕を振るう玉屋のお里など強烈なキャラクター達もあいまってホームドラマ的面白さがあります。

生真面目なハーフの乙夫と自由奔放な明日子のロミオとジュリエットのような恋愛模様は、甘酸っぱくキュンとくる。

明日子が乙夫のことを「使用人」呼ばわりしているのも面白いですね。ファミ通文庫ネクストから出ていてもおかしくない感じです。

わかりますか皆さん。1960年代の小説で主人公がヒロインに下僕扱いされるんですよ。これはちょっとした衝撃でした。

ここで少し著者の獅子文六について紹介しておきましょう。

獅子文六は昭和戦前から活躍していた作家で、『金色青春譜』で小説家デビュー。岸田國士久保田万太郎と共に文学座を創立し、『海軍』で朝日文化賞を受賞。

太平洋戦争をモチーフとした作品を多く描いていたためか戦後は「戦争協力作家」として迫害されるも、精力的に作品を執筆しました。

2017年には代表作の『悦ちゃん』がテレビドラマ化されています。

本作は1961年に新聞掲載され、乙夫の出自や箱根の文化描写など戦後まもなくの時代を感じさせるところもありますが、それでもなお新鮮さを失っていない隠れた名作といえます。

分厚さにおののかず、キャラノベとして手に取ってみてください。

2017-09-26

柾木政宗『NO推理、NO探偵?』

NO推理、NO探偵? (講談社ノベルス)

NO推理、NO探偵? (講談社ノベルス)

メフィスト賞とは何か。その答えは未だ定まっていない。

作中でたびたび言及されるよう、メフィスト賞=変わった作品という認識も強い。

本作はそういう点でいえばメフィスト賞の王道を往くミステリである。

物語は短編連作形式で、推理する力を失ってしまった女子高生探偵アイと、彼女に何とか探偵してもらいたい女子高生助手ユウが各地で織りなす「日常の謎」「アクションミステリ」「旅情ミステリ」「エロミス」「安楽椅子探偵」事件を描いている。

この作品の特に好みが分かれるであろう部分はラノベっぽいメタギャグだろう。

登場人物が読者に話しかける・地の文を捏造るなどは当たり前で、そこに面喰う感想も多かった。

その癖展開はハチャメチャで、ヤンキーものや官能小説の文脈が突然ぶち込まれるためにミステリなのかどうかすら怪しくなってくる。

しかし、本作はやはりミステリである。愚直なまでにミステリである。

それは最終話まで読めば分かるので諦めないで読んでほしい。

これまでのエピソードで覚える違和感を昇華させ、作家人生一度しか出来ないトリックを繰り出す衝撃の展開。

一見奇をてらっているようにも見えるが、結構誠実な作りにはなっていると思う。ライトミステリ新本格をおちょくったような荒唐無稽な事件の展開に反して、最終的には論理的な解答が示されるし、最終話のトリックにしても伏線はきっちり撒いてある。

作中のセリフで挿絵が指定されるとちゃんと挿絵が入るのもストーリー的に誠実だろう。

ふざけているようで、案外愚直なまでにきちんと書かれたラノベミステリだと思った。

だから、ラノベミステリが好きな人はかなり好みの小説なのでおすすめします。

女子高生探偵萌えものとしても結構いけるし、過剰なまでのジャンル言及とおちょくりもライトノベルのようである。挿絵があるからラノベでいいんじゃないかこれ。

もう一つのメフィスト賞受賞作は講談社タイガから出るのだが、何故これはタイガから出なかったんだ。

講談社の闇は深い。