学校視察の日々

今回のハワイ滞在は、私がどうしても訪ねたかったワイキキ小学校とハワイ大学に、自分1人(+りさ)で行くのではなく、子供たちも一緒に連れて行きたい!という想いからスタートしています。



1月4日にホノルルに到着し、気が付けば2月。オアフ島での暮らしも今日までとなりました(3月にも戻りますが)。毎日濃密なので、既に2ヶ月くらいいる気がしますが、約2週間、出入りを許して頂いていたワイキキ小学校では得難い体験をさせて頂きました。


ちょっと補足をしますと、1学期間だけでも息子たちを入学させるつもりで来たものの、ただでさえ英語を話せない生徒さんが多い学校なので、短期間の受け入れは担任の先生にも、事務の方にも大きな負担をかけることになりそうだったことに加え、公立の小学校なので、納税証明や賃貸契約書などの提出が必要で、今回は正式に生徒として入学するのではなく、「ゲスト」としていくつもの教室や学校菜園への出入りを許して頂いていたのでした。校長先生は、いつか日本との短期交換留学も実現したいという夢を持たれているので、1学期程度の短期であれば、もう少し簡単に入学できるような状況が作れたらいいね、という合意をしてきました。



英語が分からない息子たちをいきなり教室に入れても楽しくないだろう、という校長先生の配慮から、まずは学校菜園に出入りして慣らし運転からスタート。畑なら彼らも居心地がいいはずですから。サンタに至っては「ウチでやってる事と変わらないじゃん」とブツブツ言っていましたが、周りでは子供たちがみんな英語を話してるのだから、キミは草だけ抜いてりゃいいの。と励ましながら過ごしました(笑)慣れてくると、得意の畑仕事をみんなに交じってやっていました。

びっくりしたのは、菜園担当の先生たちが常勤でいるということ。これはハワイの中でも例外的だそうですが、その先生たちの教え方がまたユニークでした。全てのクラスが、週に1度、菜園に来る事になっているので、生徒さんたちはまず、畑の様子を見て回る事から始めます。「自分たちの菜園なんだから、それぞれ様子を観察して、5分経ったら集まってね。どこかのお家みたいに『時間だから来なさい!』なんて叫んで呼んだりしないから、自主的に集まってね」と。みんな好き好きに虫を見つけたり、ナスの熟れ具合を見たりしていましたが、しばらくすると集まり始めるではないですか。子供たちは、こちらが信じて任せれば応えてくれるものです。


その日やる事は、その日に決める、という公立の学校とは思えない体制。ナスがいい感じだから、今日はクッキングをしよう、とか。菜園に常時触れているはずのワイキキ小学校の生徒さんでさえ、「オリーブオイルは何からできてるの?」の問いに「スーパーで作ってる!」と答える子もいましたが、これは先進国に共通する事なので驚きません。むしろ、畑の様子を冷静に見られる子たちの数が多い事の方に驚きました。やはり継続は力なんですね。菜園での子供たちの様子も大変参考になりました。


「持続可能な社会をつくるためには、次世代が自分の頭で考えるようにならないと」という思いで、この学校の菜園担当として数ヶ月前に就任したメアリー先生(写真右)。アメリカ本土にもいた彼女は、ハワイの自然学校(ネイチャーセンター)にいた後、ワイキキ小学校の先生になったのだそう。26歳だというのに、しっかりしてるなぁ。最近、26〜30歳の頼もしい若者たちに良く出会う。嬉しい事だなぁと思います。すっかり仲良くなった学校菜園の先生方と名残惜しい別れをしました。我が家のリトルファーマーズは、ハワイでも多少は役に立てたようで良かったです。


息子たちは、菜園の仕事に飽きると、脇にある机で自習。それにも飽きると、葉っぱに落書き(笑)


情熱と愛情に溢れた校長先生の下、先生方も本当に子供たちの将来を考えているのがひしひしと伝わってきました。でも、ワイキキ小学校の取組みは、ハワイの中でも、アメリカ全体の中でも、例外的だそうです。まぁ、だからこそこの学校を敢えて見に来たわけですが。フィンランドやオランダの教育は世界から注目されていますが、あそこは国の方針としてやっているので、あまり参考にできないのです。国全体としては、経済優先だったり、詰め込み教育だったりするのがアメリカと日本の共通点で、その中でも子供たちの考える力を伸ばすことにチャレンジしているモデル校だからこそ、学びに来たのです。


そしていよいよ本命の哲学対話の授業。1年生の教室を見学させてもらっていた時、 「先生は答えを教える人じゃないの。みんなが『考えられる人』や『学べる人』になれるお手伝いができたら、と思ってるの」という言葉が印象的でした。1年生たちがしっかり人の話に耳を傾け、自分なりに何か発言しようとしている姿を見るだけでジーンとしました。


答えを見つけるのが目的ではなく、考えを深めていくことを目指した、コミュニケーションの練習として各教室で最低週1回は「p4c」と呼ばれる哲学対話の授業が行われます。p4cは、philosopy for childrenを略した者。この手法を紹介してくれた新潟大学の豊田先生と私の母校である国立お茶の水女子大附属小学校でも哲学の授業を取り入れているそうですが、このp4cは先生が教えるのではなく、先生も子供も一緒に輪になって対話をする手法です。日本では宮城県が積極的に取り組んでいるとのことですが、熊本でも公立の学校に取り入れられたらなぁ、と切に願っています。





「頭を柔らかく」と書かれたベンチで自由に遊ぶ1歳児たち。彼女たちが小学校にあがる頃には、日本の学校でも「子供の哲学」がスタンダードになっているといいな。まずは自分たちのできる範囲として、NPO田舎のヒロインズが主催するサマーキャンプにて実践してみたいと思います。ワイキキ小学校の皆さま、ありがとうございました!って日本語で書いても伝わらないか(^_^;)


ワイキキ小学校に加え、衝撃的な学校もみてしまいました。金槌で後頭部をガーンとやられた感じです。


通称SEEQS。
正式名称は、
the School for Exmaining Essential Questions of Sustainability

直訳すると、「持続可能性に対する本質的な問いを検討するための学校」となりますが、要は持続可能な社会を築くために必要な人材育成のための学校、という意味合いで、とにかく全てが革新的です。


SEEQSは公立の中高一貫校で、「チャータースクール」と呼ばれる、アメリカで90年代から増えつつある新しい学校のスタイルだそう。よく分からないので、ウィキペディアさんに聞いてみると、

「チャータースクールは新しいタイプの公立校という説明の仕方がされることもあるが、正しくは公募型研究開発校という方が分かりやすい。保護者、地域住民、教師、市民活動家などが、その地域で新しいタイプの学校の設立を希望し、その運営のための教員やスタッフを集め、その学校の特徴や設立数年後の到達目標を定めて設立の申請を行う。認可された場合、公的な資金の援助を受けて学校が設立される。運営は設立申請を行った民間のグループが担当する。その意味では、公設民間運営校である。」

とのこと。子供たちの考える力、観察する力、創造する力はこうすれば育めるはず、と思えるようなスタイルでした。


校長のバフィーは、わたしたちと同世代で、
今の学校教育では環境問題は解決できないと感じて、ハーバード大の教育カリキュラムづくりの大学院へ行き、その時の論文をもとに学校を作ってしまったのだそうです。うーむ。

これまでの滞在で分かってきたことは、ハワイは華やかなイメージと裏腹に、社会の歪み具合が半端なく、だからこそ先進的な取り組みがあるんだな、と感じました。ワイキキ小学校もSEEQSも素敵すぎでした。




さて余談ではありますが、双子が11歳の誕生日を迎えました。「顔より大きなアメリカンサイズのステーキを食べたい!」という息子たちのリクエストに応えてみました。スーパーで買ったお肉でしたが、美味しい美味しいと言って食べてくれました。さすがに食べ切れませんでした。それもいい思い出になるでしょう。お世話になった多くの皆さまに感謝の気持ちでいっぱいです。



明日から人口7千人のモロカイ島に移ります。