クルーグマン教授によるアベノミクス本

御存知ノーベル経済学賞受賞者クルーグマン教授による、アベノミクス本。アベノミクスの淵源はクルーグマンによるものと言っても過言ではないので、当然のことながら絶賛されている。まあ彼の主張は予想されたもので、特に意外感はないが、アベノミクスに対するインチキな反論を、簡潔に粉砕している点、本書は多くの人が手に取るといいようなものだ。クルーグマンの主張はシンプルで、とにかく物価をマイルドなインフレにするよう、あらゆる手段を断固として取り続けるべきというものだ。この「断固として」というのが重要で、とにかく国民の「期待」を変えねばならない。日銀のインフレ目標は二%だが、クルーグマンはできれば四%くらいがいいとは言っている。とにかくデフレが論外だというのは、日本でも少しづつ浸透してきたのではないか。
 そうすると気になるのは消費増税だが、クルーグマンはそれは論外だという立場だ。しかしこれは、増税が決ってしまった現在では、もう遅い。彼がイギリスの例を挙げて簡潔に示しているように、日本は国債残高を減らすには、穏やかなインフレと経済成長を両立させながら、ゆるやかにやっていくべきだと言う。イギリスの「借金」はかつて今の日本よりも深刻だったが、増税せずに見事に減らしてみせたのだった。税収を増やすのも、増税ではダメで(不況になって却って税収が減ることは、かつての消費増税で日本が示してみせたところである)、好景気による自然増がいちばんなのである。その点、消費増税後の日本は、先行きが暗い。
 それから、これは今のところ日本は無策なのだが、クルーグマンによれば、日本の少子高齢化は、将来の日本経済に深刻な影響を与えるということで、これは何度も強調されている。これは長期的な問題だが、これを放置することで、日本の経済はかなりの勢いで縮小することだろう。それくらい、日本の少子高齢化のペースは早い。この問題に関しては、自分はかなり悲観的なのだが、まあ自分の意見などはどうでもいい。これは、もっと論じられるべき問題なのではないか。